山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第155回
前回のお詫びとともに、GDC 2019からのゲームの転換期を感じさせる話題をお伝えしていく話
2019年3月23日 00:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
GDC2019で驚きの展開が次々に出てきて、ゲームにターニングポイントが訪れつつあるのを予感させます。今回は通常の連載とは違う特別回です。
さて、本題に入る前にお詫びしないといけない話がありますので、まずはそちらからです。
前回のこの連載で、“Xbox Oneの「Xbox Game Pass」も月額制ストリーミングゲームプレイサービス”と書いてしまったのですが、これはもう明確な間違いです。「Xbox Game Pass」はサブスクリプションサービスであり、クラウドのストリーミングサービスとは違います。
お読み頂いて「なんだこれ」と困惑された人もたくさんいらっしゃると思うのですが、申し訳ないです。
個人的に、本来お伝えしたかったことを書きますと、今後登場するであろうProject xCloudはXboxコンソール以外にもスマートデバイスなどマルチプラットフォームに展開するゲームストリーミングサービスなわけですが、これはもうGoogle「Stadia」と直接的にぶつかってくるところです。
また、2018年の12月に開催された「Global Technology, Media and Telecommunications Conference」では、Xboxのヘッドであるフィル・スペンサー氏から「xCloudとサブスクリプションベースのXbox Game Passを組み合わせることを考えている」というものや、「Project xCloudによってXbox Game Passをすべてのデバイスで使えるようにしたい」という展望が語られたことも見逃せません。
なお、その2018年の12月にフィル・スペンサー氏から語られた展望については、「Xbox Game Pass Project xCloud クロスオーバー」といった語句で検索頂くと分かりやすい記事が出てきます。興味のある方はぜひそちらもご覧頂ければ。
XboxはXbox Game PassとProject xCloudの掛け合わせによって、より大きくマルチプラットフォームなクラウドゲームストリーミングサービスの完成を目指しているわけですが、Google「Stadia」はそれをもちろん承知の上でドーンと発表してきました。
今回の「Stadia」の登場に対して、Xbox側はどのような展開を見せるのか。正面からぶつかっていくのか、はたまた手を取るようなこともありうるのか。今後に注目したいところですね。
もうひとつ、前回の連載には「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はゲームストリーミングサービスのPlayStation Nowをやってるじゃないか」っというツッコミも頂きました。
前回では、SIEがゲームストリーミングサービスを何もやっていないかのような書き方になってしまっていたので、こちらもお詫びしたいと思います。
PS Nowは、プレイステーションタイトルをストリーミング方式でプレイできるサービスであり、ゲームストリーミングサービスとしてはかなり先んじた存在です。していないどころから先駆者ですね。
PS Nowは、最初のスタンスは“PS4上でプレイステーション 3タイトルをプレイする”ところからスタートしましたが、2017年の3月から専用アプリの「PlayStation Now for PC アプリ」を使ってのWindows PC対応がされ、さらに2018年9月からはPS4タイトルの提供も開始、ストリーミングだけでなくダウンロードしてのプレイにも対応するなど、着々とサービスの拡充を進めてきています。
ただ、マルチなデバイス対応やWeb連携を強くアピールし独自タイトルの提供も予定しているというGoogle「Stadia」など、ゲームストリーミングサービスにアグレッシブな姿勢を見せる強力なライバルたちが出てきました。
そうしたライバル達に負けないよう、PS Nowもこれまでにあったさらなる展開やアピールを期待したくなるところがあります。
Google「Stadia」の発表が刺激となって、より魅力的なサービスに発展してくれたら、ユーザーとしては嬉しいですよね。
ここからはまた別の話題となりますが、
GDC2019にて「これは今後どうなるんだろう?」と驚くような発表がされていますね。
まずひとつは「Cuphead」のNintendo Switch版が4月18日に発売されることです。
そして、「Xbox Liveの機能をNintendo Switch版『Cuphead』に実装する予定」であることが発表されました。
Xbox Liveの機能については「Cuphead」発売後にアップデートで提供するという事以外はどのようなものになるか詳細が明かされていないのですが、“Nintendo Switch上でXbox Liveの機能が……”というところは、やはりインパクトがありますよね。
これまでにもNintendo Switch版の「Minecraft」が統合版になった際に、Xbox LiveアカウントをNintendo Switch上で求めるということがありましたが、今回の「Cuphead」での提供はより歩み寄りの感じられるところがあります。
あくまで噂レベルのものですが、マイクロソフトは「Project xCloudによるストリーミングゲームサービスを様々なプラットフォームに提供したい」と伝えており、その様々なプラットフォームには“他のゲームコンソール”も含まれるのではという想像が囁かれています。
その噂に直結する……というのはさすがに飛躍しているとは思いますが、今回の「Xbox Liveの機能をNintendo Switchの『Cuphead』に実装する」という展開は、両社がこれまで以上に柔軟に動いているのを感じさせるところがあります。「もしかしたら、もしかするのかな?」なんて思わずにいられないところがありますよね。
いずれにせよ、これまであまり想像していなかったような新しい試みや展開も出てくるのかもしれません。特に、今年のE3でどんな発表がされるのか注目したいところです。
さらにもうひとつは、「Quantic Dreamが手がける『Heavy Rain』、『Beyond: Two Souls』、『Detroit: Become Human』がEpic Gamesストアで配信」という発表です。
フランスのゲームスタジオQuantic Dreamが手がけたこの3作は、PS4/PS3でのパブリッシングがSIEだったこともあり、プレイステーションハード独占のイメージが非常に強いタイトルです。実際、これまでは独占タイトルだったわけですが。
それだけに、今回のEpic GamesストアへのPC版提供には一瞬「えっ?」っと目がとまるようなインパクトがありますよね。
Quantic Dreamは今年中国大手NetEaseとの提携を発表したばかり。今後は複数のプラットフォームに向けて開発を行なっていくことを伝えていたので、開発スタジオとして次のステップへと踏み出しています。
Epic Gamesストアを覗いてみると、この3作をはじめ今回のGDCで発表したタイトルが近日登場として既に並んでいて、その権利表記にはSony Interactive Entertainment Europe.がもちろんあり、権利を保有しつつパブリッシャーとして提供しているのがわかります。
thatgamecompanyによる「Flowery」や「風ノ旅ビト」もEpic Gamesストアで配信中および配信予定ですし、PC版の提供による資金調達を主としたデベロッパーの希望に応える形で実現されたのではないかなと想像されるところがありますが、SIEとしてもPC版の提供という展開を柔軟に考え始めているのかなと感じさせるところがあります。
これも今後どう発展していくか、見逃せないところです。
というわけで、Google「Stadia」の発表だけでも、かなりのインパクトがあったわけですが、それだけでなく“ゲームメーカー各社、特にプラットフォーマーが動き始めている”のを感じさせるニュースが次々に出てきました。
GDC2019で起きたこの揺れ動きが、今年6月に開催されるE3 2019ではどう繋がっていくのか。何が起きるのか。
今年のE3は例年とは違うざわめきのあるものになるのかもしれません。
いずれにせよ楽しみですね。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。