山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第125回
「キャプテンスピリット」から「ライフイズストレンジ2」への展開が見事過ぎて、DONTNODはやっぱりやばいと感じた話
2018年8月22日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
まさか、そんなアプローチでくるなんて思ってなかったんですよ。いやぁ、やっぱりDONTNOD Entertainmentはやばい。たまらない。
今週はドイツにてヨーロッパ最大のゲームイベント「Gamescom 2018」が開催中(期間は現地時間の8月21日から25日まで)でいろいろゲームファン注目の発表がされています。
25年ぶりに「フライングパワーディスク」の新作が出ることが発表されたり、
待ちに待った「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」の発売が2019年1月17日と発表されて、「え、1月17日って『キングダムハーツIII』と『バイオハザード RE:2』が出る直前の週じゃないの!? そんなに遊びきれないよ! どうしたらいいんだ!! 」ってなったり。
発表の連続でてんやわんやなわけですが、そうした中でも個人的にグッときたのが、ゲーム本編のトレーラーを初公開した
「ライフイズストレンジ 2」の仕掛けなんですよ。
「ライフイズストレンジ 2」は、開発をフランスのゲームスタジオDONTNOD Entertainmentが、販売をスクウェア・エニックスが受け持って展開しているアドベンチャーゲーム。
E3 2018では、「ライフイズストレンジ」と同じ世界観で描かれる新作「The Awesome Adventures of CAPTAIN SPIRIT」(以下、『キャプテンスピリット』)が発表されたわけですが、それを最初に見た時には、僕は正直に言うとちょっと肩すかしを喰らったような、ちょっと困惑した気持ちになったんですよ。
というのも、「キャプテンスピリット」の主人公であるクリス君は10歳の少年。自分で考えた架空のヒーロー「キャプテンスピリット」になりきって遊んでいるぐらいの子供です。
僕は「ライフイズストレンジ」の世界観を持つ魅力の中でも、子供から大人へと変わっていく途中にいる10代の少年少女特有な“苛立ち”や“やるせなさ”や“違う世界への憧れ”みたいな色が、すごく生々しく描かれているところがたまらなく好きだったのですが、
でも、さすがに「10歳の男の子じゃあ、そういう良さは出ないよなぁ……。」なんて思ったんですよ。
その後ほどなくしては、「ライフイズストレンジ 2」の正式なプロローグであり、入り口になる作品なんだと開発のDONTNOD Entertainmentから明かされるわけですが、そうなるといよいよ本格的に「うーん……」っていう気持ちになったりしたんです。
「2」では方向性を変えて、それこそピクサー作品のような誰もが納得するようなものを目指したりしているのかな、なんて思ったものです。
それから、6月26日に海外での無料配信が開始された「キャプテンスピリット」をプレイしてもみたのですが、ますます「『ライフイズストレンジ 2』はここからどういう色へ持っていくんだろう?」と。
そんな、不安混じりのふわっとした手応えのままに過ごしていたわけですが、
8月2日に事態は急変。
「Life is Strange 2 - Official Teaser」というムービーが公開されたんです。
そこに映し出されていたのは、パトカーの中と思われる車内の記録映像らしきもの。運転している警察官とおぼしき男は無線に乱闘騒ぎを止めにいくと伝えて、車外を歩いていったものの、何か強い衝撃に吹き飛ばされていきます。その衝撃はパトカーも横転させてしまうほど。
「キャプテンスピリット」とはうって変わって緊張感のある不穏なシーン。
そこには掴み取れる情報はほとんどないものの、ただひとつ、何か特殊な力の存在が事件を引き起こしたことを感じさせます。
そして8月20日。「Life is Strange 2 Official Reveal Trailer」が公開されました。
そこに映し出されたのは、「ライフイズストレンジ2」の主人公となる2人の少年。16歳の兄ショーンと、9歳の弟ダニエルの兄弟です。
2人は、ある事件をきっかけに警察に追われる身となり、逃亡の旅を続けています。
映像中で兄ショーンが語る言葉には、「ダニエルは何も知らない」、「ダニエルに真実を教えるわけにはいかない」というものが。ショーンが1人リュックから手に取ったのは、新聞記事の切り抜き。そこには、シアトルで起きた銃撃事件が伝えられています。
銃を構える警察官。そして発砲。
強い衝撃がほとばしって、吹き飛ばされていく警察官。
横転するパトカー。
息を呑むショーンが目にしたのは、ぐったりと横たわる警察官の姿。
「Life is Strange 2 Official Reveal Trailer」は、「これから僕たちはどうなるの?」と聞くダニエルに、「どうもならないさ。ずっと一緒だ」とショーンが答えて終わっていきます。
……実は、「キャプテンスピリット」をプレイした人にとっては、この展開はもう鳥肌ものなんですよ。
無料配信してまで見せた「キャプテンスピリット」は、この衝撃を生むためにあったのか……!
って。
DONTNOD Entertainmentは、「キャプテンスピリット」の無邪気な少年の姿で気を緩ませておいて、とんでもない仕掛けをしていたんです。
僕は、まんまとその策にハマったというわけで。
それに気がついたとき、もうゾクゾクっと身震いしました。
「キャプテンスピリット」をプレイした人は、ショーンとダニエルのことを知っているし、彼らが警察に追われることになるきっかけとなったシーンに心当たりがあり、嫌な予感がものすごくしてしまうんです。
……DONTNOD Entertainmentが「2」で描くのは、“良い意味で”ものすごく嫌なものな気がしてならない。
DONTNOD Entertainmentは、そのトレーラー公開から約半日後、約20分に渡る「ライフイズストレンジ2」のゲームプレイ映像を公開しました。
まるで、トレーラーを見て生まれた嫌な予感が当たっていたか「答え合わせをするといいよ」と言わんばかり。
順を追っていけば、誰もがひとつの想像に行き着くかと思います。
特殊な力が生んだ物語と罪。変わってしまった運命。罪を抱えて生きること。
「ライフイズストレンジ2」は、シリアスに、生々しく、10代のやるせない感情をたっぷり詰め込んだ作品になりそうです。僕の期待以上に。
いやぁ、やっぱりDONTNOD Entertainmentはやばい。
「キャプテンスピリット」は無料で配信されているとは言え、日本語版がまだ提供されていないので未プレイな人も多いのが非常に残念なのですが、30分ほどでプレイの終わる短編ですし、英語のやり取りもそれほど難しい言い回しはないので。Steam版などでぜひプレイしてみてもらいたいです。
そしてそれからまた、今回公開されたトレーラーなどを見返してみてもらいたいですね。「ライフイズストレンジ2」が楽しみな気持ちが、ぐーんと高まること間違いなしですよ。
『Life is Strange 2』が正式に発表されました。日本地域での展開は現状未定です。今後のアナウンスをお待ちください。https://t.co/dalKIB8zj4
— Life is Strange JP (@lis_jpn)2018年8月21日
「キャプテンスピリット」と共に、日本版の展開を期待したいですね。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。