山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第112回
海外での高評価のとおり素晴らしいゲームだった「Celeste」の話
2018年5月16日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
「我々が征服するのは、山ではなく自分自身である。」
1953年、エベレスト山頂到達に人類で初めて成功した登山家であるエドモンド・ヒラリーの言葉です。
高い山に登っていつか頂上へとたどり着くことと、難易度の高いゲームに挑み続けていつかエンドロールを迎えることは、同じ方向の意味を持っているような気がします。
「Celeste」という2Dアクションゲームが今年の1月に海外でPS4/Xbox One/Nintendo Switch/Steamにて発売されました。
インディのゲームスタジオ Matt Makes Gamesが制作したゲームで、価格は1,980円。
典型的なダウンロード専用のインディーズゲームなわけですが、
このゲーム「Celeste」は配信されるや瞬く間に海外で高く評価されました。
海外レビューの指針としてお馴染みメタスコアだと、Nintendo Switch版では92。「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の97や、「スーパーマリオ オデッセイ」の97に次ぐスコアに躍り出たのです。
そんな「Celeste」ですが、1月に発売されたとき既に日本語対応がされていたものの、Steam以外のプラットフォームだと海外のストアでのみ配信されていたので、Steam以外のハードでプレイしたいという場合、購入に手間がかかるものだったんですよね。
ですが、5月10日よりNintendo Switch版の「Celeste」が“日本国内のニンテンドーeショップ”で配信開始されたんです。
1月の海外配信の時には購入しないままになっていた僕も、今回の国内配信開始でようやくプレイしたというわけなんですよ。
いやぁ、後悔しました。
1月の配信のときにプレイしておけばよかった、と。
もっと早く知っておきたかった、と。
そう思ったんです。
でも、こうも思いましたよ。
この国内配信開始のタイミングですぐに手を出してよかったな、と。
ちょっと遅くなったかもしれないけど、プレイして良かったなって。
「Celeste」は、2Dドット画ライクな横スクロールアクション。物語としては、マデレンという少女が、セレステ・マウンテンと呼ばれる山の頂上を目指して登山をするというもので、ジャンプアクションに空中ダッシュ、壁掴まりとよじ登りを駆使して、険しい道のりを乗り越えていくというものです。
もちろん、ただのジャンプアクションじゃないんですよね。その理由のひとつは、その道のりの厳しさにあります。失敗しまくり、死にまくりです。
ちなみに僕がなんのヒントもなしにエンドロールまでプレイしたときには、全ステージ合計で1,519回死んだという記録になっていました。
難しいコントロールを求められる場面、パズル的な解き方が必要な場面、その両方が同時に必要な場面……まぁとにかく大変です。いっぱい失敗しまくります。
そんなきっつい場面をひたすらに乗り越え続ける、ハタから見れば苦行のようなプレイは、それ自体がどこか山登りという行為に似ています。
ゲームの主人公マデレンは山を登り、
それを操作するプレーヤーもまた難易度の高いアクションゲームという山に挑む。
難しさにぶち当たった苦みからの、それを乗り越えたときの嬉しさという甘み、
連続して押し寄せてくるビター&スイートなゲーム体験。
「うわなにこれ、きつい!」
「あー、なんとか行けた!」
「あ、今度もまたきつい!」
「あーしんどい、でもなんとか突破したぞ!?」
「ちょっとー、ここエグくなーい!?」
「……なんとかなるもんだね」
「これはどうなってるんだ?」
「でも、きっと、やればできるはずだ」
「諦めずにやればできる」
「きっとそうだ」
「今までも、これからも」
こんな境地にたどり着きます。それは成長していく自分への嬉しさであり、それを自然にうながす「Celeste」というゲームが良くできていることへの喜びであり、ゲームが好きで良かったこと、今またひとつ良いゲームを遊べていること、それを楽しんでまたひとつゲーム好きとして成長していく自分への嬉しさと自信。
「Celeste」のプレーヤーという存在でマデリンという名の少女は、山というゲームを通して自分と向き合って、いつか、その全てを楽しんでいきます。
そこに山があり、
そこにゲームがあり。
こんなシンプルなゲームなのに、そこから得られるものはゲームにとっての本質をちゃんと捉えているんですね。
もちろん「Celeste」は単純に難しいばかりではありません。
まずリトライがスピーディーでストレスが溜まらないんです。死んだ瞬間に復帰するのでプレイのリズムが途切れることなく挑み続けられます。だからたっぷり死にまくるし、いつか乗り越えるときも来ます。
また、操作性もものすごくいいです。シビアなコントロールを求めるゲーム内容ですが、そこにキチンと納得のできる操作の反応の良さがあって、キビキビとした動きは「操作しているだけで気持ちいい」の領域。
それはもう感心してしまうほどに、ジャンプアクションゲームの面白さを存分に理解できるプレイフィールになっています。
世界観やそれを彩るサウンドも魅力的。日本語ローカライズはちょっと翻訳っぽさがあるというか、ユニークなところや難解さが出ていますが、そのぶん自分なりの解釈をしていくとより理解が深まるという、怪我の功名的な副産物もあったり。
というわけで「Celeste」、プレイし終えて納得しました。
これは高く評価されるわけだと。
「自分は諦めずに登れるに決まってる!」と思える人には、ぜひプレイしてもらいたいです。
たどり着いた場所から見えるのは、きっと素敵な景色ですよ。
「我々が征服するのは、ゲームではなく自分自身である」
すっかり長々と「Celeste」を語ってしまいましたけども、今週は他にもここに書いておきたいこといっぱいあるんですよ。
というわけでいくつかポンポンと書いておきますよ。
まずは、Nintendo Laboのすごい作品の極めつけみたいな話。
世界の歌姫アリアナ・グランデが、アメリカNBCの番組「The Tonight Show」に出演し、「No Tears Left to Cry」を歌ったのですが、その演奏に使われていたのは全てNintendo Laboで作った楽器!。ジミー・ファロン氏とヒップホップグループ「The Roots」が思い思いのNintendo Labo製の楽器を手に、軽快に演奏し、アリアナ・グランデさんも笑顔で歌っています。
その様子がYoutubeにて楽しめますので、ぜひご覧ください。メイキングの様子もありますよ。
もうひとつ別の話題。今月は24日と25日に多くのゲームが発売されるのですが、そこにまたひとつ飛び込んできました。
IGA氏こと、「悪魔城ドラキュラ」シリーズで知られる五十嵐孝司氏の「Bloodstained: Curse of the Moon」の配信が5月24日と発表されました。「Bloodstained」の8bitスタイルタイトルで、ハードは、Nintendo Switch、ニンテンドー3DS、PlayStation 4、PlayStation Vita、Xbox One、Steam。
すでにNintendo Switchでは予約購入が可能で、あらかじめDL対応となっています。
……僕はもう、発売日と予約購入が可能というニュースを見た約2分後には、気がついたら購入が完了していましたから、もう安心です。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。