山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第124回

真夏の夜のローグライク2D探索型アクション「Dead Cells」が面白い、難しい、でも面白いの話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

お盆休みまっただ中ですが、いかがお過ごしでしょうか? この頃は夕暮れともなれば、真夏のピークが去ったのを風の匂いに微かに感じて、「夏が過ぎたら今年もあと3カ月余りで終わりか……」なんて思う事しばしば。なぜだか少し寂しいですよね。

さてさて、そんな真夏の折り返しな今週に僕が夜な夜なプレイしているのが、

「Dead Cells(デッドセル)」

です。

いぇーい、デッドセル! 面白い! 難しい! でも面白い!

「Dead Cells」は、フランスのインディーズ規模のゲームスタジオ、Motion Twinが開発した、2Dアクションゲーム。

最大の特徴は、ランダムに生成されるマップに繰り返し挑戦していく、いわゆる「ローグライク」であり、自由に2Dマップを探索していく「メトロイドヴァニア」と融合させて、「ローグヴァニア」というジャンルに仕上げたというタイトル。

ちなみに「ローグライク」とは、「ローグ」的なゲーム、「ローグ」っぽいゲーム、という言葉。最初期のコンピューターRPGの1つ『ローグ』に由来していて、主にプレイする度にマップやアイテムが変化する特徴を指します。

また、「メトロイドヴァニア」は2Dのマップを探索していく「メトロイド」と「キャッスルヴァニア(悪魔城ドラキュラの海外名)」を組み合わせた言葉です。

そして「Dead Cells」は、そんな特徴をさらに掛け合わせて持っているゲームなんだということから、「ローグヴァニア」という独自のジャンル名を掲げているゲームなんですね。

……「メトロイド」が入りきらなくてはじき飛ばされましたが!

そんな「Dead Cells」。Steamではアーリーアクセス版(いわゆる開発途中だけど遊べるよ版)が昨年から登場していましたが、先日の8月7日に正式リリースが開始され、同時にプレイステーション 4とNintendo Switchでも配信が開始されました。

僕はNintendo Switch版を購入してプレイしてみたのですが……

これが、手強いけど面白い。全力プレイして力尽きたら「はい無理ー。もう今日はしんどいから無理ー……」って放り出すんですけど、10分ぐらいすると無言でコントローラーを手に取ってもう1回プレイするという有り様です。

主人公は首をはねられた囚人に何か緑色のヌメヌメが取り憑いたもの

主人公は、おそらくなんだかドロドロした緑色の何か。

それが、城の地下深くの独房で朽ちていた囚人に乗り移って動き出し、城の奥を目指していきます。

主人公は、武器を2種類とスキル2種類を装備可能で、いずれもマップを探索して発見するのが基本になります。このへんが「メトロイドヴァニア」ですね。

武器は近接の剣や槍、ムチ、槌などのほかにも様々な種類があり、遠距離武器も弓が、その他にも特殊なタイプの武器も豊富にあります。敵の攻撃を防いだりパリィすることのできる盾もあります。

一方でスキルも、弾を発射するタレットを設置するもの、敵を一定時間移動できなくさせるトラバサミ的なトラップ、様々な属性のあるグレネードなど、こちらも種類が様々。さらに、特殊な効果を追加する「変異」というものもあり、敵を倒したときにHPが少し回復したり、1度だけ死んでもその場で復活したりなど様々。

そして、もちろんこれら装備やスキルは、マップ同様にプレイするたびにランダムで登場します。プレイするたびにマップが変化し、そして手に入る装備も異なるので戦い方も変わっていくというわけで、

「序盤でこれだけ良い装備が整ったら楽勝だ!」って勢いつけて進んでいったらあっさりやられたり、

逆に「いい武器が出ない……! きつい……!」と思いつつ慎重にプレイしていると、思いの外それが功を奏して順調に進めたり。

その辺りは「ローグライク」が生むゲーム性であり真骨頂ですね。

もちろん、やられてしまったら手に入れた装備は失われて、また初期装備でスタート地点からのプレイになります。

そういうスタイルのゲームなので、良い装備が揃ってきて結構先のステージまで進んでくると「死にたくないでござる……!」っていう気持ちがむくむく湧いてくるわけです。良い緊張感が出てきます。

ちなみに回復は使用回数の決まっている回復薬があり、ステージ間の休憩ポイントのようなところで補充できます。こういうところは、「ダークソウル」シリーズのエスト瓶を思い出すものがありますかね。

次のステージへの道を探してマップを探索しつつ、装備を拾い集めてより性能の高いものに交換しつつ戦っていく
だが、やられてしまうと……
装備など全てを失って再びスタート地点に。プレイの積み重ねで要素をアンロックするとお金などを多少引き継げるようにはなる

アクションとしての出来も良くて、2段ジャンプ、空中からの急降下、回避といったアクションが、スピード速めの気持ちいい手触りで繰り出せます。攻撃も装備している武器次第でモーションや特性は変わりますが、攻撃時の効果音と相まって、いずれも気持ちのいい動き。

2段ジャンプに急降下、回避のローリングなど、いずれのアクションもスピーディーで、いわゆる忍者アクション的な軽快さ。操作していて気持ちいい

やりこんで様々な要素をアンロックしていくこともポイントになります。敵を倒したりして手に入れた「セル」というものを支払って、スキルや装備を開放できます。回復薬の使用回数を増やしたり、所持金を次のプレイで多く引き継げるようにしたり。

自分のプレイスタイルにあったものを率先して開放していくことで、自分なりのプレイがより形になっていき、それの積み重ねで少しずつ奥へと進むのが楽になっていきます。繰り返しスタート地点からのプレイになる本作ですが、ランダムなマップにランダムな装備とスキルの豊富さ、そして、少しずつアンロックしていく積み重ねの要素があることで、妙にハマってしまうリプレイ性の高さを獲得してしまうというわけなんですねー。

実際のところ、「Dead Cells」の難易度は高めにして絶妙なバランス。やられてスタート地点に戻るたびに「これ本当にきついなぁ……」なんて思いますけど、それでもコントローラーを再び手に取る中毒性がありますし、それを繰り返すうちに気がつくと、苦戦していたところも難なく通過できるように。

グラフィックスの質もよく、キャラクターも豊富なアニメーションパターンでヌメヌメとよく動きます。曲も雰囲気と味のあるもので謎に満ちた世界観にマッチ。そして、2Dアクションならではな、レスポンスの軽めな速い動きが気持ち良い。そうしたプレイフィールと手触りの良さが、ギリギリな難易度の高さも乗り越えさせてくれます。

収集した装備の設計図などは、ステート地点のビンに入れられていく。レアアイテム掘り的な要素もあって、いろんな武器やスキルのそれぞれに異なるアクションを楽しみつつ、がっつりやりこんでいける
ボスとの戦いは最初は「これはきつくないか!?」と思うこと間違いなし。だが、やりこむうちにそれもいずれ乗り越えられる。ギリギリ高めの歯ごたえがあるいい難易度

そんな「Dead Cells」のプレイ動画を撮ったので、どんなゲームか気になる方はぜひご覧ください。序盤はガチのファーストプレイなので、ちょっとダラダラとしていますが、物語の導入や、基本要素の紹介になっています。

ちょっと気になったのは、僕がプレイしているNintendo Switch版ですと、たまに処理が重くなってプレイ状況がワープすることがあるんですよね(ゲーム中の時間が消し飛んだように、一瞬で1~2秒ほど先の画面へ切り替わったりする)。他機種版は触っていないので比較はできないのですが、パフォーマンスを改善するアップデートに期待したいところです。

そんなところもありますが、それを差し引いてもこの遊びこめる手触りのいいアクションはオススメ。まだまだ暑い夏の夜に、集中して熱くなれるゲームをお探しのアクションゲームファンの人は、ぜひ「Dead Cells」に挑んでみてもらいたいと思います。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。