山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第122回

平成最後の夏、ブラウン管に映るメガドライブの画面に夢中だったあの頃にたどり着いた話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

ブラウン管に映るゲーム画面にこれでもかと顔を近づけて、視界いっぱいのデジタルっていう未来に、なんだかとても興奮してた。ゲームに恋していたんでしょうね、あの頃。今も。

今回は、5月29日に北米・欧米で発売されたPlayStation 4/Xbox One用ソフト「SEGA Genesis Classics」のお話です。

これにPlayStation VRモードがあるのですが、それが実に良い感じなんですよ。

こちら残念ながら日本では発売されていないのですが、メガドライブのゲームが実に53タイトルも収録されているというパワフルな1本(ただし収録されているタイトルも当然ながら全て海外版)。

そして、この「SEGA Genesis Classics」はその収録タイトル数もさることながら、その作りのユニークさが魅力なんです。

「SEGA Genesis Classics」のメインメニューは1990年代のゲーム好き少年の部屋風

ゲームを起動するとメインメニュー代わりに現われるのは、「メガドライブが全盛だった1990年代のゲーム好き少年っぽさ全開の部屋」。

壁に貼られた「ゴールデンアックス」や「忍」などのメガドラ作品のポスターたち……、コンポらしきオーディオセットにスピーカー……、乱雑に置かれているビデオテープ……、そして、棚にギッシリのメガドライブソフトに、正面にはメガドライブとそれが繋がって砂嵐を表示しているテレビデオ。

まさに1990年代の子供部屋。

この画面で、棚からプレイしたいゲームを選んで、ブラウン管のテレビデオでプレイするという流れになっています。収録ゲームだけでなく、それらがリリースされた当時を感じさせる部屋も再現しているんです。

そして、この「SEGA Genesis Classics」はVRにも対応しているのがポイント。

VRでプレイすると、1990年代のゲーム好きの部屋に自分がいて、そこでブラウン管テレビを見つめてメガドラタイトルをプレイするという、まさに当時にトリップするような体験が楽しめるんです。

なお、PCのSteamでは5月頃からVRに対応していたのですが、PS4版も7月26日のアップデートでPS VRに対応しました。今回はそのアップデート告知を見てPS4+PS VRでのプレイを試してみたというわけなんです。

百聞は一見にしかず。

プレイの模様を動画に撮りましたので、ぜひこちらをご覧ください。

どうでしょうか。

パッと見て、「ここの子供はメガドラが好きなんだなー」っと感じる部屋に自分がいて、部屋のいろんなものを見回してみると、電源タップの感じや、ポスターがちょっとめくれているところ、さらにはメガドライブ本体にもカートリッジの抜き差しや電源スイッチを触ったときについたであろう指紋の跡があったりと、芸が細かい。

棚にぎっしり大量のソフトは、ゲーム好きにはたまらない光景ですよねー。

棚にギッシリのメガドライブソフト
メガドライブ本体には指紋の跡まで再現されています

そしてなんと言ってもブラウン管のテレビ。大きさの感じからすると19か21インチぐらいですかねー。当時に子供部屋に自分専用のテレビがあるという場合だと、だいたいそれぐらいの大きさだったんじゃないかなと思います。

ちなみにVRでプレイすると、自分がテレビに顔を近づければアップになるし、離れればちゃんと遠ざかるんです。

これが魅力のポイントで、普段はだらーっと楽な姿勢でプレイするんですけど、ここぞという場面になったらグッと近づいてよく見ようとしちゃうんですよ。

夢中になればなるほどに画面に顔が近づいていって、しまいにはテレビの真ん前かぶりつき。

当時なら、それを見たお母さんが「もっとテレビから離れなさい!!」なんて怒るかもしれませんね。

残念ながら「SEGA Genesis Classics」では叱ってくるお母さんまでは実装されていませんが。

VRモードでは、自分で顔をテレビに近づけて画面をドアップで見ることも可能! これがなんとも当時のことを思い出させるんです。夢中になればなるほどにテレビに近づいていきましたよね

その代わりと言ってはなんですけど、この部屋には時計があり昼夜の概念もあります。日中は窓から陽の光が入ってきますが、夜は暗くなってスタンドライトが点きます。

現実の時間とリンクさせることもできるので、夜通し遊んでいたら朝になってしまった……なんていう思い出も、VR内で体験できちゃいます。

(ちなみに上のプレイ動画内だと、ゲーム起動後にはフルサイズ表示になっていてそこから手動でテレビ画面表示に切り替えていますが、これはデフォルト設定がこうなだけで、設定を変えると切り替わりなしにテレビにゲーム画面が映るようにできます)

昼夜の概念もあって陽が落ち夜にはライトが点いて、また朝日が昇ります。夜通し遊んで朝になってしまったことまで思い出せます

よくよく考えると、“ゲームの中に作られたゲーム部屋でゲームをする”という、二度手間的なものなわけで、ドライに考えると「結局ゲームを遊ぶのだから直接ゲームを起動して遊べばいいじゃないか」という話にもなりかねないわけですが、そこはもう説明せずともおわかり頂けると思いますけど、部屋を再現するその方法だからこそ体験できる味がありますよね。

よもや平成最後の夏に1990年代のゲーム部屋を体験するとは思いも寄らなかったわけですが、これぞVRならではのゲーム体験のひとつと言えるかもしれません。

VRの話でよく挙がるアイデアとしては「仮想ゲームセンター」もありますが、こういう光景だけでもいいので、それも何かの形で実現して欲しいですね。

……もう少し年をとってからそういう昔を思い出す的なVR体験をしたら、もしかしたら懐かしさのあまり泣くかもしれないですけど、それで泣かされるならいいなって思うような。

ひとまず、今回紹介した「SEGA Genesis Classics」でのVRモードに興味のある人は、ネット通販等で購入できたりしますので。チェックされてみてはいかがでしょうか。

話題は変わって、今週末はいよいよ年に1度のあの戦いです。

アメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級の格闘ゲーム大会

「EVO」です。

今年のメイントーナメントは、

・Injustice 2
・大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U
・大乱闘スマッシュブラザーズDX
・鉄拳7
・ブレイブルークロスタッグバトル
・ギルティギア Xrd REV 2
・ドラゴンボールファイターズ
・ストリートファイター5アーケードエディション

の8種目。もちろん、上記メインタイトル以外のサイドトーナメントも多数行なわれます。

開催されるのは、日本時間だと8月4日、5日、6日。次の土、日、月の3日間です。

大一番と言える最終日が日本では平日の月曜日になってしまったので、なかなかリアルタイムで見るのが難しいという人もいるかもしれませんが、そこはやはり他の大会とは別格と言えるEVOですし、年に1度の最大の戦いですので、ぜひアーカイブ等でその熱戦の模様をチェック頂きたいところです。

今年はどんな熱い戦いが繰り広げられるのか、楽しみですね。

昨年の「ストリートファイター5」部門で優勝を勝ち取った「ときど」選手。今年はどんなドラマが待っているのでしょうか

ではでは、今回はこのへんで。また来週。