山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第121回

「NEOGEO mini」片手に、ネオジオ筐体が店先に今もある駄菓子屋「ひよこ」さんを訪れた話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

「NEOGEO mini」が相手なら、ネオジオ筐体と一緒の写真を撮らざるを得ない。

SNKブランド40周年を記念したミニサイズゲーム機「NEOGEO mini」が7月24日に発売されました。

「手に入れたー!」という人も、「まだ届かなーい!」という人も、買いそびれてしまって「どこも売り切れで買えない! 買わせて!」という人もいらっしゃるかと思いますが、

実際に触ってみると「ミニサイズながら筐体を再現している魅力」が思っていたよりも大きいんですよね。

手の平サイズな本体ながら、液晶ディスプレイに操作のレバーやボタンも備えていて、電源さえ用意すればこれだけでプレイができます。まさに筐体プレイ再現

あくまでサイズこそ小さいですが、特徴的な青いフードの下に画面枠があって、ゲーム音が響くなかゲーム画面が映し出されてる。その構図、その光景が、あの頃に筐体の前で見ていた景色をどことなく思い出させるんです。

ミニサイズながら画面出力しなくても単体でもプレイできるという特徴に、発表当初は「その機能はいるのかなぁ?」と思った人も少なくなかったと思うのですが、アーケード筐体でプレイしているという感覚までも再現することに価値のある大事なポイントだったという。

そんなわけで、そういうポイントに気がついた人の好評の声によって、発売後に「欲しくなった!」という人が増える製品なのではないかなと感じています。

専用ゲームパッドもそうなのですが、今後の出荷でちゃんと遊ぶために欲しいんだという人の手に届いて欲しいところです。

「NEOGEO mini」の開封レポートを書きましたので、そちらもぜひご覧頂ければと思います。

□あの頃の僕らの100メガショック!「NEOGEO mini」開封レポート
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1134567.html

この開封レポートでも最後にちらっと掲載しているのですが、「NEOGEO mini」が再現しているアーケードのMVS筐体は、それが設置されていた場所にも、人それぞれに思い出があると思うんですよね。

人によってはゲームショップの片隅に、

人によってはショッピングモールのゲームコーナーに、

人によってはレンタルビデオショップの一角に、

人によっては酒屋の店先に、

そして、人によっては駄菓子屋に。

「あなたの思い出のネオジオ筐体はどこにありましたか?」

なんだかツイッターのハッシュタグみたいな感じですけど。

SNKは当時、設置を希望する店舗に無償で筐体をレンタルするという手法を取っていたんですよね。そのため、当時としてはあまりゲーム専門でない場所にも、最新のネオジオタイトルがあったりした……というわけなんですね。

そんなわけで1990年代いろんなところにあったMVS筐体のなかでも、当時はまだ子供だったという世代の人の記憶に強く残っているのは、やっぱり「駄菓子屋」だろうと思い、

僕が書く「NEOGEO mini」の開封レポートには、どうしてもその光景を写した写真が必要だ!

それがないといけないんだ!

覇王翔吼拳を使わざるを得ない!

となった僕は、入手したばかりの「NEOGEO mini」片手に炎天下を飛び出していきました。

江東区大島で長年に渡って駄菓子屋をされている「ひよこ」さん。おかあさんの明るく元気な笑顔がトレードマークです

訪れたのは、東京都江東区は大島の駄菓子屋「ひよこ」さん。

こちらの店頭には、今も稼動しているMVS筐体があります。

といっても実は、中身のゲームは「スーパーマドラー」という、カードをめくって出た数字で進めていくスゴロクゲームなんですけどね。

ちなみに、2012年には「ゲームセンターCX」のコーナーである「たまに行くならこんな駄菓子屋」で有野課長も訪れているので、それで観たことがあるという人もいらっしゃるかもしれませんね。

僕が到着したときはまだお店を開ける前だったそうなのですが、暑さで溶けそうな顔で店先にふらふらと現われた僕を見て、すぐにお店を開けて「暑いだろうから入って入って」と出迎えてくれました!

事情をお話して店頭のゲームを見せて頂くと、店頭にあるのは、10円玉を入れて弾いてゴールを目指す定番ゲームが2台と「スーパーマドラー」が稼動しているMVS筐体が1台あります。

実は僕はこの「ひよこ」さんを訪れたのは初めて。この「スーパーマドラー」は他で滅多に見られない珍しいゲームだというのも聞いていたので、ぜひプレイしてみたかったのですが……昨日からコインシューターの調子が悪くて遊べなくなってしまったとか。残念。

店頭にある3台のゲームは、いずれもいわゆる10円ゲーム
10円を入れて弾いてゴールを目指すタイプのゲームが2台
お目当てのMVS筐体と「NEOGEO mini」を並べて撮影!

店内も見せて頂きました。

ぎっしりの駄菓子や玩具!これぞ駄菓子屋という光景に、なんだか自分も子供の頃に戻ったかのような感覚が。

おかあさんにお話を伺うと、「ひよこ」は昭和52年(1977年)創業で今年で41年!「NEOGEO mini」はSNKブランド40周年を記念した製品なので、ほぼ同世代。なんだか奇遇な感じに。

ところせましと並んでいる駄菓子&玩具の数々。やっぱりこの山ほどある感じがテンションが上がるんですよねー
これまでたくさんの取材も受けられたそうで、店内にはサイン色紙もたくさんあります。ゲームセンターCXでの有野課長に、モヤモヤさまぁーず2、さらにダウンタウンの浜田さんと志村けんさんのお2人、元フジテレビアナウンサーの故・逸見政孝さんのサインも。貴重です

そうこうしているうちに、さすがは夏休み。子供達がやってきました。迷いに迷ってこれと決めた駄菓子を買って、お菓子を片手に店頭のゲームへ。いつの時代も駄菓子の基本的な楽しみ方は変わらないですねー。ただ、「スーパーマドラー」が遊べないのでちょっと残念そうにしている場面も。

このご時世だと往年の筐体のメンテナンスというのはなかなか難しいのかもしれないですが……。そこをなんとか、MVS筐体と共にもっともっと末永く子供達に楽しんでもらえたらいいなと思いますよね。

駄菓子を買ったら次はゲームだ!というわけで子供達は10円ゲームへ。僕も子供の頃は行きつけの駄菓子屋や行って同じような毎日を送ってました。「俺もそうだった!」という人も多いのでは

というわけで、「NEOGEO mini」のために現在も稼動しているMVS筐体の姿を求めて訪れた駄菓子屋の「ひよこ」さんですが、おかあさんの笑顔が暖かく、近所の人が世間話をする憩いの場であり、40年以上も変わらず子供達の楽しい記憶を作り続けている、素敵な場所でした。

さすがにMVS筐体が現役稼動している駄菓子屋さんはかなり希少ですし、そもそも駄菓子屋さん自体が少なくなっているわけですけども。僕が昔に通っていた駄菓子屋さんも、もうなくなっていますしね。

だからこそこの夏はぜひ、今も営業されている駄菓子屋さんを調べて訪れてみるというのはいかがでしょうか。

なにか、しばらく思い出すことがなかった感情に再会できるやもしれませんよ。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。