山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第130回
“良い意味でカオス”だったTGS2018が終わるや、気がつけば「クッパ姫」が爆発的に広まっていた話
2018年9月26日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
今年の東京ゲームショウも無事に終わりましたね。いやぁ、今年はなんだかんだで盛況でしたし、面白かったなーって感じています。
天候が落ち着かない日々で「これは来場者数は去年より減るのではないかなー?」なんて思ったりもしたんですけど、最終日は晴れましたし、フタを開けてみたら前年よりも約4万人も来場者増という結果だったということで。
たしかに、一般日の3日目と4日目は、明らかに昨年よりも人が多いなと感じました。
【「東京ゲームショウ」来場者数】
日程 | 2018 | 2017 | 2016 | |
---|---|---|---|---|
ビジネスデイ1日目 | 9月20日 | 31,961人 | 26,564人 | 31,399人 |
ビジネスデイ2日目 | 9月21日 | 36,356人 | 31,512人 | 33,634人 |
一般公開1日目 | 9月22日 | 107,310人 | 106,075人 | 98,074人 |
一般公開2日目 | 9月23日 | 123,063人 | 90,160人 | 108,117人 |
合計 | 298,690人 | 254,311人 | 271,224人 |
そんなTGSですけども、僕の感想としてはタイトルのとおり“良い意味でカオス”だったと思います。
ステージイベントへの「VTuber」出演があったり、隣接するホールでは「e-Sports X」が開催されていたりと、まだ実験的なところや課題もあるかもしれないものの、これからもっと伸びていく(はず)の最新の試みを果敢に取り入れてましたし、
一方では、TGS前日に発表された「プレイステーション クラシック」の登場をはじめ、往年のアップライト筐体を再現した家庭用ゲーム筐体「ARCADE1UP」シリーズが話題になったり、「アーケードアーカイブス」シリーズを展開するハムスターブースも筐体展示がありつつ盛況、セガブースでは「SEGA AGES ゲイングランド」に、「STEINS;GATE ELITE」出展では実際に制作したファミコレADV「シュタインズ・ゲート」のファミコンカセットも展示されていたり。極めつけはX68000の実機まで。
そうした、20~30年前あたりのクラシックなハードやソフトの出展が多く、しかも目立っていたのが印象的でした。
僕も、セガゲームスのブースで頂いたファミコレADV「シュタインズ・ゲート」のステッカー(ファミコンカセットのラベルサイズ)を実際にカセットに貼ってみようと、カバンにファミコンカセットを入れて幕張メッセに向かったわけで、
「まさか2018年のTGSにファミコンカセットを持参して行く事になるとは」と思ったり。
さらにゲームモチーフのアパレルなどを取り扱う「ゲームグロリアース」の物販ブース「CASSETTE DISC x GAMES GLORIOUS」では、“セガハード米”や“セガハード入浴剤”といった、深く考えたら負けな気のするアイテムも。
今年のTGSはそうした、チャレンジングな新しい試みがありつつ、往年のファンが飛びつくクラシカルなものも入り乱れているという様相で、ゲームに関するいろんな好み、その多様性が感じられる光景に。
そんな“良い意味でカオス”なTGSだったなと思えた、というわけなんです。
今年のTGSのテーマは「新たなステージ、開幕。」だったわけですが、的を射ているなぁって思えます。基本的にはeスポーツの取り扱いを意識してのテーマフレーズなんだと思いますが、その想定とは違った意味でも、ゲーム文化を楽しむ新たなステージが垣間見えたTGSだったなと思います。
それにしても、最近特に思うんですけど、2018年のゲームシーンがこんな感じになるとは、昔はちっとも想像できなかったですよね。
例えば、もし25年ぐらい前の当時の自分に会いに行けたとしたら、
今の自分「私は25年ぐらい先の未来からきたお前だ」
25年前の自分「わーすごい!未来ではどんなゲームしてるの?」
今の自分「……最近プレイしたのは『サンダーフォースIV』だ」
25年前の自分「え」
今の自分「ちなみに『バーチャレーシング』が出ることも発表されたんだぞ」
25年前の自分「……お前、未来からきてないだろ!」
今の自分「ケーブルのない無線コントローラーでプレイできるし、⼤きくて薄い⼤画⾯のテレビで遊んだり、持ち運んで外でプレイしたりもできちゃうんだぞ︕」
25年前の自分「……え、『バーチャレーシング』持ち歩けるの!?未来すっげー!」
今の自分「だろう?」
おそらく、こんな会話になるだろうなと思います。
最初は「未来すごくないじゃん、ギャフン!」的なオチにしようと思ってたんですけど、なんかもう1周まわって「未来さすがだなっ!」って言ってもらえそうな気がするのでこうなりました。
さてさて、そんな事を思ったりしているうちに気がつけば終わってしまったTGSなのですが、僕がTGSの仕事を無心でやっている間に世界には、
「クッパ姫」
というNEWワードが誕生していました。
Twitterを見たらそのイラストだらけになっていたので、仕事に集中している間に世界線を越えたのかと思いました。
「クッパ姫」誕生の発端は、先日に配信された「Nintendo Direct 2018.9.14」内で紹介された「New スーパーマリオブラザーズ U デラックス」の新要素として、キノピコが「スーパークラウン」というアイテムを取ると、キノピーチというお姫様的な人の見た目のキャラクターになるところから。
これを見た海外のファンは「なぜクラウンを取ると人の姿になるんだ?……ピーチ姫も元はキノコ族なのか?」といったように困惑。これについてはまだ何も公式な情報がないので、世界中のファンの憶測や仮説が飛び交っているようです。
そんななか、海外のゲームファンであるhaniwaさんがその「スーパークラウン」に注目して、「クッパもスーパークラウンを被ったらお姫様になるのでは」的なアイデアに到達。
haniwaさんが自身のTwitterに、金髪にちょっとワイルド&セクシーな見た目になった「クッパ姫」とマリオが仲良くするという4コマ漫画をTwitterに投稿すると、それが広まっていき、ついに日本のTwitterユーザーの目にも触れ、触発された絵描きの皆さんは見事な「クッパ姫」のイラストを次々に投稿。Twitterのトレンド上位になったりと、すっかり大ブームになってしまいました。
こちらが最初のきっかけとされているマレーシアのhaniwaさんが投稿した4コマ。
The Super Crown's some spicy new Mario lorepic.twitter.com/7DQe6UXvLQ
— haniwa (@ayyk92)2018年9月19日
よくよく考えると「マリオ」が世界的に知られているのと同様に「クッパ」は世界でもトップレベルに知名度のある悪役キャラクターであり、何かのきっかけさえあれば、世界中のファンが衝動にかられるほどのキャラクターの強さといじりがいのある設定の積み重ねがありますよね。
今回は最初に現われたモチーフが多くの人の、特にイラスト界隈の人を刺激するものがあったこともあり、それが爆発してしまったというわけですね。
ちなみに「クッパ姫」に続いて「キングテレサ姫」も人気で、「キングテレサ姫」は後ろから襲いかかろうとするけど、面と合わせると顔を赤くして手で覆い動けなくなっちゃう白いドレス姿のお姫様。確かにかわいい要素が満載です。さらに、「キラー姫」とか「デデデ姫」とか「パックンフラワー姫」も見かけました。
この流れ、しばらくはいろんなキャラクターで見かける感じになりそうですが、「個人の楽しみとして許される範囲」を越えてしまわないよう、そのあたりはお気をつけ頂きたいなと思います。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。