山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第114回
7年ぶりの初代“絶望と希望のダークファンタジー”は今もプレイの止め時が見つからなくなる熱いゲームな話
2018年5月30日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
あれから7年が経って。シリーズの終焉まで見届けた先の今だからこそ、初代の味わいと魅力を、その深淵を、味わえるんです。
「DARK SOULS」シリーズの初代作品を現世代の最新ハードへとリマスター移植した「DARK SOULS REMASTERED」が発売されました。(PS4/Xbox One/PC版で発売中。Nintendo Switch版は夏発売予定)
先週末からどっぷりプレイしているという人も多いのではないでしょうか?
僕ももちろん7年ぶりのロードランを楽しんでいます。
シリーズを通して愛して止まない「DARK SOULS」シリーズですが、僕にとって初代「DARK SOULS」は特に思い出深いんですよね。
2011年のプレイステーション 3版ではレビューを書くために発売前にROMをお借りしてプレイしたんですよ。
(こういう話を聞くと「羨ましいっ!」って感じるゲームファンの人もいるかもしれないですね)
ただ、想像してみて欲しいんですけど、
発売前のゲームであり、どうしても突破できない難所があったとしても、インターネット上のどこをどう検索しようがなにをしようが攻略的な情報は出てこないですし、オンラインプレイもできないです(というか仮にオンラインにしたところで人がいないしメッセージも一切ない)。
まぁ発売前なんだから当たり前なんですけども、
その完全なノーヒント、ノーサポート、オフラインモードでプレイする「DARK SOULS」のまぁ難しいこと。
レビューを書くにあたっては、少なくともエンディングを迎えるぐらいまではプレイすべきなのですが、その条件での「DARK SOULS」は、そもそもそれすら難しい。
死にまくっているうちに、「このままだと発売日にレビューを掲載するのは無理なんじゃないか?」っていうプレッシャーが押し寄せてきます。
また、レビューとしては当然そのゲームの良し悪しといったものをまとめていくわけですが、その判断も難しいものになっていきます。特に難易度の判断が難しいんですね。
何10回とリトライしてもクリアできない難所に対して、「もしかしたらもっと簡単な方法があったり、ここに来るまでに強力な装備があったりするのに、自分がそれを見逃しているだけなのでは?」というような疑心暗鬼が出てくるんですよ。
一方で、もしかしたらそのゲームは、誰がプレイしたとしてもあまりにも難しすぎる「難易度バランスが調整不足なゲーム」なのかもしれません。もしそう確信できたなら、レビューにはそう書いていかないとなりません……が、そう断言するのも難しくて、上の「自分のプレイに問題があるのでは」的なことが堂々巡りします。
その答えを出すには、詰まっている箇所に対してとにかく限界まで工夫してプレイし続けるしかないんですね。
僕の当時のプレイでは、ネタバレにならない書き方をしますけど、いわゆる“オンスモ”でそれが起きました。
「DARK SOULS」プレイ済みの人ならわかって頂けるのではないかなと思うのですが、攻略に関わるような情報はまだ世界に存在しておらず、オフラインモードで挑むソロでの“オンスモ”は、もはやちょっとした事件。
しかも遊びではなく話題作のレビューというなかなかヘヴィーな仕事であり、その仕事の進行が止まるっていうことなんですよ。オンスモが突破できないってことは。時間というプレッシャーもあります。
そんななか寝ずに“オンスモ”に挑み続けて、もう何10回目のトライなのかわからないぐらいのときに、オンの方を初めて倒すことに成功して残りがスモだけになったときの「イケるかもしれないっ!」っていう興奮、同時に押し寄せる「ここでミスってチャンスを逃したら地獄だっ……!」っというプレッシャー。
他のどんなことよりも丁寧に慎重に操作して、焦らないよう、少しずつ少しずつチクチクと攻めて、ついにスモの方も倒れたときの、あの圧倒的な達成感!
このオンスモ撃破を経てその先のプレイも進めることができたことで僕の「DARK SOULS」のレビューは、
“本作のシビアさは圧倒的に人を選ぶ。だが、ゲームに本気で挑み夢中になりたい、苦難を乗り越えた先の溢れんばかりの達成感を味わいたい人にオススメ”
という内容にまとまっていきました。ちなみに下のリンクが、その当時のレビューですね。
□絶望を越えた先にある本物の達成感 その全てがプレーヤーを圧倒する
PS3ゲームレビュー「DARK SOULS」
https://game.watch.impress.co.jp/docs/review/480578.html
このレビューには
“何度も「これはダメだ。難しすぎるし苦労が多くて辛すぎ!」という判断をしそうになった。”
とか、
“いろんな方面からアプローチしていくと、いつしか光明が見えてくる。底知れぬ絶望の中にも希望は必ずある。”
など、まさにこのコラムで書いていることの表面が書いてありますね(笑)。実際は本当にギリギリのヒィヒィ言いながらの戦いのようなレビュープレイでした。
どこか1歩でも妥協したり諦めたりしていたら、自分なりに「DARK SOULS」というゲームを捉えることはできず、上辺だけのレビューになっていたかもしれません。
前置きのつもりだった思い出話が思いのほか長くなってしまいましたが、この思い出話からも「DARK SOULS」というゲームが優れたゲームであることは伝わるのではないでしょうか。
もちろん今はオンラインでの協力プレイもできるし、見ても構わないという人ならネット上には攻略情報もしっかりたっぷりまとまっています。オンライン協力ありネット上の攻略情報ありでプレイしたら、ほどよく死ぬけどとても楽しみやすいゲームに変わりますよね。
さてさて、発売されたばかりのそんな初代「DARK SOULS」のリマスター版ですが、グラフィックスの高精細化で細かいディテールがしっかり見えますし、
あらためてプレイすると初代「DARK SOULS」は、ルート選びの自由度の高さや、後のシリーズ作から比較するとアクションが控えめなこともあって、よりRPG色が強いのを実感できます。
最終作の「DARK SOULS III」はスピードもレスポンスも速くてかなりアクション寄りですが、初代「DARK SOULS」はリアルタイムアクション操作RPGみたいな手触りの違いがあります。
また、「DARK SOULS III」をプレイした後にまた初代「DARK SOULS」へと舞い戻ってプレイするというのも、いろんなことに気がつかされたり再確認できる流れでいい感じ。
「あぁ、やっぱりこれって同じ場所なんだってわかるなぁ……」
とか、
「これが後にこういう名前になって……」
とか。
初代「DARK SOULS」の謎が「DARK SOULS III」の物語で解けて、逆に「DARK SOULS III」の謎は初代「DARK SOULS」を見直すことで気がつきます。
特にキャラクターの行動原理は、シリーズ作を並べることで本質が掴めるものがありますね。単体作品のみだとミスリードするのではないでしょうか。それもまた楽しいし単体作品の中ではミスリードな理解でも不都合が出ていないところもまたすごい。
「DARK SOULS」というゲームは、ストーリーがゲームプレイの邪魔にならないようにゲーム中で語ったり長々としたイベントシーンがあったりはほぼありません。ですが、考えることが好きな人に向けて補完して考察することで見えてくる物語や世界のヒントは散りばめてります。その、ゲーム体験と世界観の魅力を良質している手法はやっぱり見事だなぁと思いますね。
ちなみに初代「DARK SOULS」というと、PS3版のときには通信方式の違いからオンラインプレイ周りがちょっと大変だったわけですが、このリマスター版ではそこも解消されていて快適。僕は今回のリマスター版でまず「暗月の剣」の誓約をやっていますが、呼ばれまくりでかなりいい感じです。
誓約周りの快適さも入れると、このリマスターは初代「DARK SOULS」の魅力を100%以上に楽しめるものになっていると言えるかもしれないですね。
というわけで、7年前にPS3版をプレイした人は、その懐かしさと7年という月日、そして色褪せないどころか今プレイしてもガチで面白い「DARK SOULS」の凄さに驚いて、未プレイという人は、一部にある当時の手触りやバランス感覚に戸惑いつつも、それを乗り越えて慣れた先にある初代にしかない独特の面白さに驚いてみるのがオススメ。
やっぱり「DARK SOULS」は面白い。それを再確認しているリマスタープレイの日々です。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。