山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第82回

「ファイアーエムブレム」と「無双」ってこんなにしっくり融合するタイトルだったのかって思った話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

今週は「ファイアーエムブレム無双」をだいぶ遊びこんでいました。これがなかなか、「無双」のいいところと「ファイアーエムブレム」のいいところがいい感じに上手いこと融合されていて。驚かされたんですよ。

「無双」の説明はさすがにもういいですよね。一騎当千。多彩なプレーヤーキャラクタを操作して千や二千の敵をなぎ倒していく爽快系アクションの代名詞です。

今ではそういう、強い人が大活躍することを“○○無双”とか“無双する”みたいな言い方を、ゲームだけでなく一般の話題でも言うぐらいに浸透しましたが、それも「真・三國無双」が2000年に登場してヒットしてから言うようになりましたし、そもそもそれ以前は“無双”っていう言葉は麻雀の役の国士無双とか、歴史ものなどで武芸の頂点を指す天下無双という言葉はあったものの、それ以外ではほぼ耳にすることのない、今よりもずっと一般的ではない言葉だったんですよね。

“乱舞”っていう言葉も、もともと狂喜乱舞っていう四字熟語がありはしましたが、今の連続攻撃的な猛攻撃のイメージを作ったのはSNKの格闘ゲームから浸透していったところがありますね。

“黒歴史”っていう言葉もいつの間にかインターネット用語として一般的なレベルにまで浸透しましたけど、そもそもはアニメ「∀ガンダム」で作られ生まれた言葉だったりします。言わばガンダム用語なんですね。

意外とこんな風に、ゲーム・アニメからネット用語に、そして一般的なものにまで浸透していった言葉って多いんですよ。

えーと……閑話休題。

閑話休題っていう言葉も今はもうほぼ見かけないですよね。「余談を打ち切って、本筋にもどる意を表す語」であり、「それはさておき」と同じ意味の言葉です。

で、「ファイアーエムブレム無双」の話です。こちらが本題。

なにしろ「○○無双」というと、あまりにも有名過ぎるド定番なシリーズであり、いろいろなタイトルとコラボしてきたものですから。ちょっと言葉が悪いですけどゲーム内容が想像しやすいというか。「あぁ、無双になるのね」って理解しちゃうところがあると思うんです。

僕も最初はね、「『ファイアーエムブレム無双』ですかー、『ファイアーエムブレム』のキャラで無双するんですよね」なんて気持ちでいたんです。まぁ、それ以上の想像をしていないというか。僕は「ファイアーエムブレム」大好きなので、それで充分なんですよという気持ちでいたというところがあったんです。

でもね、いざ購入して「ファイアーエムブレム無双」を実際にプレイしていくと、

想像していたよりも独特で、それでいて理解してみると納得な。

“「ファイアーエムブレム」と「無双」はよくよく考えると親和性が高い”っていうことに気づかされたんですよ。

「ファイアーエムブレム無双」にはまず、“仲間に指示を出す”という要素があるんです。

自分が操作するキャラクター以外の仲間キャラの進むルートや、攻撃する対象や防衛する対象を指示できるんですね。戦略シミュレーション要素の強い「無双 Empires」シリーズ的なものであり、同時に「ファイアーエムブレム」らしさとも共通してくるところです。

操作キャラクターで無双をしつつも、次々に出てくるミッションをこなしつつクリアタイムの評価を良くするという面で、仲間に的確な指示を出すのが重要になっているという、リアルタイムストラテジー+アクションみたいなゲーム性になってるんですね。

仲間のキャラクターに指示が出せるので、「ファイアーエムブレム」本編のシミュレーション的な感覚もあるし、リアルタイムストラテジーになったような感覚でもあったり

また、「ファイアーエムブレム」本編同様に“武器の三すくみ”があります。剣が斧に強く、槍が剣に強く、斧が槍に強いっていう相性のアレです。これも「無双」シリーズにももともと同じ要素があって、両作品に共通する要素だったりします。

先ほどの「仲間に指示を出す」という要素は、特にこの三すくみの相性が有利になるよう味方を敵にぶつけていくのがポイントになってくるわけですね。

さらに、「ファイアーエムブレム」で“相性”というと真っ先に思い浮かぶのが、“ペガサスナイトに弓矢”のような、いわゆる特攻の要素ですよね。これももちろんあります。アーマーナイトに有効なアーマーキラーのような○○キラーの要素も本編同様にたくさんあります。

仲間への指示では、この特攻やキラーの効果で味方側が有利になるよう向かわせるのが、当然ながら大事ですね。逆にペガサスナイトの仲間が敵アーチャーに狙われたときには、いち早く別のキャラで敵アーチャーを排除したりと、原作さながらの対処も大事になったりします。

「ファイアーエムブレム」本編でこの特攻の有利で敵を一撃で倒したりというのは快感だったんですけど、この「ファイアーエムブレム無双」ではアクションであり、その手応えと威力を自分の操作と手で感じられるのがいい感じなんですよ。

キラー効果の出ている攻撃は、普通の攻撃よりも大きな“ズバッ!”という音と、画面全体をビタッと止める強めなヒットストップ演出が入るので「効いてるっ効いてるっ!」っていう感じがすごいです。

例えばペガサスナイトのシーダ様が敵に出てきたりなんかしたときには、意気揚々と操作キャラクターをタクミに変更し、一目散にシーダ様の元へと駆けつけますとも。ズバズバ弓矢がヒットして、シーダ様はあっという間に沈み、タクミは「次に戦っても僕が勝つよ」みたいな生意気なことをおっしゃられます。まぁ、何度やってもそりゃあ勝つでしょうね、この相性なら!っていう感じですけども。

三すくみ、そして特攻の原作再現が、各キャラや武器の要素を際立たせています。飛行ユニット出現時はウキウキでタクミに操作を切り替えちゃいます

そんなわけで、よくよく考えるとそれらの要素って「無双」シリーズにもともとあった要素でもあるんですけど、「ファイアーエムブレム」本編にも同じものがあって、それを活かすことが両作品のらしさを高めることになっていた……というわけなんですよ。

ある意味では、「ファイアーエムブレム」っていうゲームがもし、アクション要素とリアルタイムストラテジーな方向に進化するとなったら、こういう感じになるのでは的な仕上がりになっています。

一方で「無双」として、あまりその辺の要素を意識せずとも、育成したキャラクターでズバズバ活躍しまくっていれば、ある程度の難易度は楽々クリアできるぐらいのお手軽さも留めてはいます。

ここは結構悩みどころなんですけど、仲間への指示や相性、戦局への対応力が試されるような、シミュレーション要素強めなバランスのモードなりがあっても面白いかもしれないですねー。いっそ自分は指示を出すのみで仲間は全部CPUの動きでもいいやもしれません。より「ファイアーエムブレム」本編っぽさが出るというか。

ちなみに今作は「ファイアーエムブレム」の各シリーズの英雄がひとつの世界に集結するオリジナルストーリーが展開されるのがメインで、それとは別に原作の一部シーンをモチーフにしたヒストリーモードというものもあり、ずいぶんと遊びこめる作りになっているのですが、

今作を遊んでいると、“本編1本ずつを丸ごとこのシステムでリメイクしてみて欲しい”なんていう気持ちも湧いてきますね。なにしろ今までは脳内で補完していた「ファイアーエムブレム」の戦場の様子、戦い方や魔法がどんな見え方なのかなどが、バリバリ動いてくれますから。オリジナルストーリーもいいですけど、本編の物語もこのスタイルで一から十まで楽しんでみたいってなるんですよねー。

とまぁそんなわけで、ゲーム性は「ファイアーエムブレム」らしくも「無双」らしくも楽しめる、良い感じの融合作品になっていますし、「ファイアーエムブレム」の戦場は“こんな感じ”っていうのを見た目にも楽しめますし、思っていた以上に満足度が高いというか、組み合わせから生まれた新感覚の発見&発展みたいなものを感じるゲームになっていました。

もちろん1作目なので、「あのキャラやこのキャラも出して!」とかたくさんあったりするのですが、プレイするとそういう欲が出てくるぐらい、良い手触りのゲームになっています。

この「ファイアーエムブレム無双」きっかけに「ファイアーエムブレム」本編に手を出してみる……なんていうのも、ありだと思いますよー。

とりあえず、様子見している「ファイアーエムブレム」ファンの皆さんには、ぜひ注目してもらいたいですね。……そして、今作がもっと売れて次回作も出てくれたら、みんな幸せになるのではないだろうか!

というわけで。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。