山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第95回

年末年始にPS VRでスカイリム地方を旅し、いつかくるかもしれない未来へ思いを巡らせていた話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

新年あけましておめでとうございます! 本年もゆるゆると、ゲームの話題などをお伝えしていきますので、皆様よろしくお願いいたします。

いやー明けちゃいましたね。

年末年始の休みもあっという間に過ぎてしまって、気がつけば2018年もいよいよ本格スタートというところですが、

みなさんは年末年始はどのように過ごされましたか?

暖かい部屋でテレビなり動画なりを観つつのながらプレイで、買ったものの遊ぶ時間がなくて積んでいたゲームを消化していた……なんていう人もたくさんいそうですが、

僕はというと、年末年始にPlayStation VRの「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」をプレイしていました。

いわゆる「スカイリムVR」です。

「スカイリム」といえばオープンワールドRPGの代表格であり代名詞。オリジナル版の発売はそれこそ2011年だったので、そこから数えるともう7年ぐらい経っていますが、

その世界の広さ、クエストやダンジョンの数、諸々のオブジェクトなどの物量の多さは今も随一。

そんなスカイリムがPS VRでプレイできるとなれば、それは、

“作り込まれたRPG世界の中へ入り込み、まるで自分がそこにいるかのような冒険を楽しむ”

っていう、いわゆる“VRの夢”が実現されていく第1歩であり、そのはじまりと言えなくもないわけです。

それがどんなものになっているのか、試さないわけにはいかない! という年末年始にプレイしたというわけです。

正直に言うと、プレイする前には

「VRとは言っても元の『スカイリム』だってたっぷりプレイしたし、そんなに目新しいことはないんじゃないかなー」

なんて感じにも思ってたんですよ。上に書いたVRの夢うんぬんとはだいぶ温度差がありますが。

プレイ済みの人で同じように思っている人もいるのではと思うんですけど、

これがね、実際にプレイすると逆なんですよ。

「スカイリム」をプレイ済みでよく知っているからこそ、「VR化されると何が違うのか」、「何が変わるのか」がはっきりわかるんです。

1番インパクトがあるのは、

「世界も人もモンスターも全てが等身大であること」

ですね。

いわゆる見えているもの全ての大きさです。

特に建築物のスケール感が衝撃的。

例えば、ホワイトランにあるドラゴンズリーチの宮殿の大扉。まさにファンタジー世界の宮殿や王城にあるような大きな扉なのですが、平面のモニターでプレイしていたときには特に何も思いませんでした。

ですが、VRだとその大きさがまさに現実世界のスケールで見えていて、存在感もすごい。

「こんなでっかい扉、現実では見たことないな」って思いますし、「自分1人だと開けるのに苦労しそうだ」なんてことまで思います。

だからこそ、「こんな大げさな扉のあるこの場所は、なんだかすごいところだなっ!」と肌感覚で感じますし、それによってドラゴンズリーチにいる人たちはすごい権力者なんだなという認識にも繋がってくるんです。

現実世界のように、扉ひとつからもその場所の認識や情報を伝えてくるものが強いんです。

もちろん建築物だけでなく、人物にも存在感があります。

なにしろ、大人のキャラクターはみな、自分と同じかそれ以上に身長が高くて、体格もがっしりして見えているので、距離が近いときには威圧感もかなり感じるほど。

ホワイトランのドラゴンズリーチ前。なかなかテキストと画像ではスケール感を伝えづらいですが、VRでは衛兵が自分と同じぐらいの身長に見えます。なので、周りのアーチや正面の扉はものすごくでっかい建造物に見えるんですよ
衛兵のあの名言「昔はお前のような冒険者だったのだが、膝に矢を受けてしまって...」も、等身大で目の前に存在しているかのような衛兵が語っていると、また味わいが違ってきます。哀愁漂ってます

そんな等身大の建造物、木々、人で作られているスカイリム地方を歩いていると、元の「スカイリム」を平面モニターでプレイしていた時にはそこまで感じなかった、“異なる世界にいる”という感覚が沸いてくるんですよ。

特に、夜になってふと夜空を見上げたりしたときに、感慨深いものがこみ上げてくるんですね。

スカイリム地方の広さと作り込み、そしてVRでの立体感と等身大のスケール感が組み合わさって、元の「スカイリム」では得られなかった感覚を作っているというわけです。

もちろん、「スカイリム」自体は高解像度化などがされているとはいっても元々が7年前のゲームであり、画像を見ると誰もが思うとおりグラフィックスは物足りないものがあります。

同時に、VRでハイクオリティなグラフィックスでオープンワールドを表示するにはもっともっとマシンスペックも必要というところもありますよね。

そういう意味では「スカイリムVR」は、“作り込まれたRPG世界の中へ入り込み、まるで自分がそこにいるかのような冒険を楽しむ”という夢の実現としては、第1歩のさらに前、始まりの前の始まりぐらいな感じもするのですが、

だけど、いずれ夢見ていたようなゲームは実現できるという実感を得られるものにもなっています。

そして、それが実現したらすごいことになるし、それは絶対に遊びたいなと、強く思うようなゲームにもなっているんですよ。

オープンワールドRPGのVR化がされている一方で、PCのVR界隈ではVRチャットが流行っているのだそうで。それらがいずれ組み合わさってVR MMORPGというものにも繋がっていくのかもしれません。

現実同様のクオリティを実現するのには、10年、20年という単位で進化が必要かもしれませんが、いわゆるAIによるシンギュラリティ(AI技術が成長して今の世界に大きな変化をもたらすという仮説、技術的特異点)を迎えて、AIが作り広げ続けるVR世界の中を冒険するようなゲームも誕生する……のかもしれないです。

新年早々に、というか新年だからこそ、未来話になりましたが、

「スカイリムVR」は、そんなことも思うような、そうした未来の始祖的な存在を楽しめるゲーム。

ひとつのターニングポイントになるのかもしれないものを、リアルタイムで味わっていくという貴重な体験ができるかもしれませんよ。

……もちろんターニングポイントにならない可能性もありますけど。

まぁ、そういうものに興味の沸く人にはぜひ手を出してみてもらいたいなと思います。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。