山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第81回
TGS 2017をくぐり抜けて感じた“もっとゲームを楽しんでもっと好きになる場所”への話
2017年9月27日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
今年も東京ゲームショウが終了しましたね。幕張メッセに行った人、ステージイベントのネット配信を楽しんでいた人、各メディアのTGSの記事をチェックして楽しんでいた人などなど様々だと思いますが。今年のTGSいかがでしたか?
僕はというと毎年のとおり、ビジネスデイとパブリックデイ合わせての4日間ともに幕張メッセにフル参戦して、インタビューやステージイベント等を中心に取材させて頂きました。
なにしろホール内を行ったり来たりしてたくさん歩きますので、これを書いている段階ではまだ足が痛くてぐったりしているのですが。黒木渚さんの「ふざけんな世界、ふざけろよ」をループで聴きながら、TGSを思い出しつつこれを書いている次第です。
黒木渚さんの歌はオススメですよ。最近元気が出ないなってあなた!ぜひ聴いてください。僕が今年のTGSを全日程がんばれたのは、黒木渚さんの歌とレッドブルのおかげにほかなりません。
それはさておき、そんな今年のTGSを振り返ってみると「ちゃんとゲームで楽しんでいる姿が見れた東京ゲームショウ」っていうキーワードが頭に浮かんできました。
というのも、今年のTGSはe-Sportsコーナーが大きく作られて“日本でもe-Sportsを”的な流れがかなりフィーチャーされていたのが大きかったのだと思うんですけど、それ以外のブースやステージイベントでも、ユーザー参加型な対戦や協力プレイをやっていたり、試遊以外でもゲームで遊んでいる光景を見ることが多かったなーと思うんですよね。
もちろん、従来通りの最新タイトルの情報を発表していくステージイベントや試遊が大半ではあったので、そのあたりはいつも通りのTGSだなとも思うのですが、
プロゲーマーの試合が繰り広げられたe-Sportsコーナーに、FPSタイトルのマルチプレイをガンガンまわしているPCゲーム関連ブース、なんだか妙な乗り物系(ライド系)がいろいろあって目を引いていたVRコーナー、さらにインディーゲームコーナーもあった、9~11ホールの印象が特に強いですかね。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントのブースでは、「コール オブ デューティ ワールドウォーII」のコーナーでSIEチームとマルチプレイで対戦して勝つとTシャツがもらえる、なんていうのをやっていたんですけど、そこを通りかかったときに、対戦していた来場者の人がすごく楽しそうな笑顔だったのが印象に残っているんですよね。
それを見て思ったんです。
「あぁ、やっぱりゲームを楽しんでなんぼだな」と。
新作の発表や情報はもちろん楽しみで、これからもTGSに注目する大きな理由であり続けるとは思うのですが、今はステージイベントはリアルタイムにネット配信され、情報も瞬く間に広がりますので、無理をしてまでTGSに足を運ぶ必要もないのでは?と言えちゃうんですよね。
そこで、会場に来てはじめて味わえるものとして“ゲームで楽しんじゃう”っていう側面が増えてくれたら、僕は嬉しいなと思っていて。
具体的には、そのときのトレンドのゲームを、同じくそのゲームを好きな人たちと一緒にライブな現場で遊ぶみたいな、単純なことですかね。
僕はe-Sportsっていうプロの競技の側面もそれはそれで楽しみですけど、誰もが好きなゲームでわいわいと楽しむっていう根本がより大事だと思うんですよね。それがもっとTGSの場で広まって欲しい。
なにしろ“ゲームを遊んで楽しいって感じる気持ち”っていうのは、ゲームビジネスであろうが文化であろうが、全ての元になるものであって1番大切ですから。それがないと始まらないんです!
そうして、発売済みだけどあまり知らなかったゲームのことも好きになって、そのシリーズの新作にも注目するようになって、それがTGSに出展されていたり、ステージイベントをやるのを見たり。そういう連鎖にもなっていけたら、最高なんじゃないかなーと思います。
今年のTGSはまだ一部ですけど、そういう“ゲームで遊んで楽しもう”っていうアプローチがチラホラと見えたような気がしました。これはネット経由でも楽しめる情報ベースなTGSの楽しみ方や数字には見えてこない側面なのではないでしょうか。
入場者数で比べてみると今年は昨年より約1万5,000人ほど減少したという結果だったそうですが、そもそも昨年はPlayStation VRにプレイステーション 4 Pro、さらに年末の大作群の発売も控えていたという“いろいろなタイミングが重なった年”だったので、それと比較すると今年は落ち着いたものになります。
新ハード見たさにガツンと盛り上がるTGSももちろんいいですけど、ゲームを一緒に遊んでもっともっと好きになろうっていうアプローチがもっと充実していったTGSも見たいですね。
僕がこういうことを書く気持ちになったもうひとつの理由が、SIEのJAPAN Studio公式生放送番組「Jスタとあそぼう」のパーティーを取材させて頂いたこと。
そのパーティーの模様は「JAPAN Studioクリエイター陣とゲームファンとで大パーティー! Wプレジデントも登場した、『Jスタとあそぼう:リアル』の模様をお届け」の記事にまとめているので、詳しくはそちらをご覧頂きたいのですが、
事前応募から招待された約100名のユーザーさんと、SIE JAPAN Studioのクリエイターさん50人以上に、SIEワールドワイド・スタジオのプレジデントである吉田修平氏、SIEジャパンアジアのプレジデントである盛田厚氏まで参加して、ゲームありクイズありトークありで大変に盛り上がったパーティーでした。
こちらがとても和気あいあいとした、いいパーティーだったんですよ。
ゲームファンの人が好きなゲームの話で盛り上がって、それを作ったクリエイターさんに思い出を語って、クリエイターさんもそのゲームを作った当時のことを思い出したりして。今まで日本ではこういう場所ってなかなか馴染みがないというか、特にユーザーさんとってなると無かったのですが、いざやってみたら、ゲームっていう共通言語があれば、全然いけるというか。
すごくプレミアムなパーティーで、招待されていた幸運なユーザーさんはますますゲームが好きになったこと間違いなしだと思います。
なかなか同じようにはできないとは思いますが、TGSの会場でも同じようにゲームをますます好きになれるような、改めて好きになれるような。そういう試みがもっともっと広がってくれたらいいなと思います。
まぁ、今年のTGSの感想をまとめるつもりが脱線して個人的な気持ちや考えを、だーっと書いてしまいましたが。
今年のTGSそのものは、爆発的だった昨年の盛り上がりからするとさすがにおとなしく見えてしまうものはありましたけど、動き出した“シリーズ一区切り後の新展開なタイトル”あり、ゲームで楽しむっていう根本のアプローチの兆しがあったり。
これから何かが変わっていくような気もするTGSでした。
というか、変わらないといけないとも思うんです。
なんだか僕は、今年のTGSで体は疲れたけど心はちょっと元気になりましたよ?
だから、もっともっと、何かが変わればきっと何かが良くなるのではないでしょうか。
なって欲しいなー。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。