山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第88回

オンライン9,000万 VS 秋葉原Hey8,849万の熱い戦いが繰り広げられたPS4「魔法大作戦」の話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

「ハイスコア」。いい響きですねー。ハイスコア……1位! いいですねー。今回はそんな2017年に起きたハイスコアバトルのお話です。

24年前の作品……とは思えないぐらい今プレイしてもキャラや演出のキャッチーさが光る「魔法大作戦」

エムツーのSTGブランド「M2 Shot Triggers」の第3弾、プレイステーション 4用シューティング「魔法大作戦」のインタビュー前後編をお届けしました。今回もたっぷりの内容になりましたが、お楽しみ頂けましたでしょうか。

□M2 Shot Triggers「魔法大作戦」インタビュー前編
https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/1089519.html
□M2 Shot Triggers「魔法大作戦」インタビュー後編
https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/1089519.html

エムツーさんの、「どうしてそこまでやるんです?」、「それはね、ゲームが好きだからさ……」的なやりすぎワークスを伝えるインタビューは、今回も健在。というか、今回はより、“そのゲームが好きなので好き放題やってしまった”という作品への愛がすごいので、ぜひご覧頂きたく思います。

そんな「魔法大作戦」ですが、特にオリジナルモードの「DUALモード」の工夫が面白いんですよ。

アーケード向けのシューティングゲームというとワイワイ楽しんでもらう用の2人プレイモードのあるゲームが多いのですが、特に家庭用に移植されたりすると、1人で楽しむスタイルが基本になって、ほぼ触るのことない“死にモード状態”になったりすることも。……することもっていうか、まぁあるあるですよね。

ですけど、作品によってはそんな不遇というかおまけモード的になりがちな2人プレイモードにならではの要素や演出があったりする、特に「魔法大作戦」はそういうところがあるゲーム。

ということで生まれたのが、1人で2人プレイの要素を味わえちゃう「DUALモード」。詳しくはインタビューをお読み頂きたいですが、このモードは発想の転換というか、ちょっとした発明チックに思えるぐらいのアイデアで、いろんなシューティングゲームでもこの遊び方をしてみたくなります。

さてさて、そんなPS4「魔法大作戦」の「DUALモード」で、熱い戦いが繰り広げられたんですよ。

それが、「PS4オンラインハイスコア」 VS 「秋葉原Hey」の仁義なきスコアアタック。

まずPS4オンラインハイスコアというのは、もうそのまま。PS4「魔法大作戦」を購入して楽しまれている人のスコアです。

対する秋葉原Heyのスコアというのは、

秋葉原のレトロタイトルぎっしりゲームセンターこと「Hey」で行なわれた、PS4「魔法大作戦」を特別にアーケード筐体でプレイできる「フィールドテスト」で出されたスコアのこと。

日本各地どころか世界からもスコアが集結するオンライン上と、秋葉原Heyというあくまでも1店舗ではあるもののレトロタイトルのメッカと言える場所との、「魔法大作戦」DUALモードスコアバトルが、連日繰り広げられたのです。

秋葉原Heyのフィールドテストでは、アーケード筐体にREGZAを組み合わせた特注の筐体でプレイができました

秋葉原Heyのフィールドテストは、10月27日~11月1日まではアーケード版準拠の“ARCADEモード”で、11月2日~9日はM2 Shot Triggersオリジナルの“DUALモード”で稼働しました。特に“DUALモード”の稼動は、PS4「魔法大作戦」ダウンロード販売開始と同時だったこともあり、まさに用意ドン状態。ハイスコアがぐいぐい伸びていきました。

ちなみに僕はそんな両スコアを、PS4では自宅で普通にランキングをチェックし、秋葉原Heyの方はTAITO LIVEの秋葉原Heyチャンネルの配信にて見守っていました。

(なお、それを見つつひたすらにインタビュー後編をまとめていたりもしていたのです)

TAITO LIVE秋葉原Heyチャンネルでフィールドテストの模様が連日配信されたのですが、PS4版とのスコア争いに注目が集まったり。オンラインとHeyとで競っているっていう変則的なシチュエーションがまた面白かったんですよ

このスコアの伸びたるや恐ろしい上がり方をしていきまして。

まずはオンラインスコアでは上位が6,000万点台を早々に突破。秋葉原Heyもそれを追随するように、6,000万点台を出す猛者が現われます。

ですが、事件は11月6日に起きました。

PS4のスコアはさらに伸びて7,600万点台へ、

さらにはその日の夜にスコアがストップする9,000万点……

いわゆる“カンストスコア”が達成されてしまったのです。

僕を含め、「秋葉原Heyチャンネルの配信を見守っていた勢」にも、このPS4でカンストスコアが達成されたという情報が伝わりました。このとき僕はまさに配信のチャット欄でこれを知り、すぐさまPS4「魔法大作戦」を起動してそのスコアを確認、リプレイをチェックしたりして驚愕していました。

なにしろPS4「魔法大作戦」はその時まだ配信が開始されてから4日足らずのこと。

オリジナルのDUALモードには独自の稼ぎ要素があるのですがが、この時にはその全容は明かされておらず手探りの時期。それを数日で掴みスコアを最も伸ばせるパターンを構築してカンストにたどり着くというのは、恐ろしい話です。

もちろん、このカンストスコアはいまだ確認する限り1人しか出していない厳しい道のりです。

いやぁ、さすがにカンストスコアを見た時には僕も久々に、世界の広さを、そしてシューティングゲームのスコアラーの修羅っぷり、恐ろしさを思い出しましたね。

PS4版では9,000万点のカンストスコア達成者が現われてしまいました。恐るべし

PS4側で、到達点であるカンストスコアが出て実現可能だと証明されたとなれば、秋葉原Heyのフィールドテストにもひとつの願望というか、見てみたい光景、夢、というものが生まれます。

もちろん“フィールドテストでのカンストスコア達成”です。

この大目標に連日挑んでいたスコアラーさんがいらっしゃいまして。

実際のところはほとんど、オンラインスコアのカンストトップのフィンランドさんと、Heyで連日スコアアタックしている1人のスコアラーさんという、一騎打ち、タイマンみたいな形でもありました……。

「魔法大作戦」は1993年にアーケードでリリースされた作品であり、24年ぶりになる2017年に移植され、オンラインとアーケードとで熱くハイスコアバトルを繰り広げているというのだから、なんとも不思議というか、異次元というか。昨年あたりにこの話を聞いたなら「すまん、よくわからないのでガンダムで例えてくれ」って言いたくなったりする感じです。

そんなこんなでにわかに盛り上がりを見せたフィールドテストも、いよいよ最終日の11月9日。

連日ハイスコアに挑んできたスコアラーさんもこの日はさらに果敢にプレイされており、

あるときのプレイではいよいよカンストが見えてきた8,000万点台へ突入!

ついに、ついにフィールドテストでもカンストスコアの9,000万点が出るかっ!

となったのですが……、

クリア時のスコアは8,849万点!

あと151万稼げていればカンスト!

ほんのあと一歩、めちゃくちゃに惜しかったという結果になりました。

ですがこのプレイでも充分にすごいもので、拍手を贈るべき驚愕のプレイなんですよ。

実際に挑むと実感できるのですが、4,000~6,000万点を越えたあたりから、さらにスコアを伸ばすのには壁があるというか、とてつもなく攻めた早回しと、そこからの撃ち込み稼ぎが必要になります。「魔法大作戦」のDUALモードの稼ぎは、仕組み的にもちょっとした差でスコアが大きく変わってくるんです。えっらいシビアです。

「魔法大作戦」のDUALモードの稼ぎについて、詳しくはぜひ、M2 Shot Triggers「魔法大作戦」インタビュー後編をお読みください。

Heyフィールドテスト最終日に出たハイスコアは8,849万点! 惜しい……!

とまぁそんなわけで、「魔法大作戦」のフィールドテスト期間中に繰り広げられたハイスコア争いは、今回のタイトルにもある、

「オンライン9,000万 VS 秋葉原Hey8,849万」

となったのです。いやぁ、熱い戦いでした。

ちなみにこの後、M2堀井社長の「アップデートのメインコンセプトは『カンストしやがった、くやしい』になります。」という紹介とともに、「魔法大作戦」にはアップデートデータが配信され、スコアの桁数が増やされたものの、それがまた予想外の出来事を引き起こしてしまうのですが……それはまた別のお話。

シューティングゲームのハイスコアを競うというものは、かつては1980年代~1990年代が全盛ではありますが、当時とは違い今なら、今回のお話のように配信なり動画なりリアルタイムに盛り上がれるんですよね。

記録を伸ばすというシンプルなもので競技性も高いですし、スコアというはっきりした数値で競うものですからゲームの予備知識がない人にもわかりやすいと思います。(もちろん稼ぎ方や具体的なプレイを知るにはいろいろ出てきますけど、それは他の競技でも一緒ですよね)

今回紹介したようなスコアラーさんの熱い戦いが、それこそeスポーツ的なスタイルで楽しめるようになったら面白いんじゃないかなーとも思いました。そうなれば、シューティングゲームというジャンルのムーブメントというか風向きがまた少し変わったり、進化したり……というのもあり得るかもしれません。

シューティングゲームは原初のゲームジャンルのひとつと言えるだけに、そこにはゲームの本質的な面白さや手触りがありますので。ぜひともその面白さに触れてみてもらいたいと思います。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。