山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第86回

高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

いよいよ「スーパーマリオ オデッセイ」が発売となりましたが、期待通り……というよりも期待以上と言っていいのではないでしょうか?

正直に言うと発売前は、「スーパーマリオ オデッセイ」を楽しみにしている一方で、「でも期待を越えるほどの作品になるのは難しいんじゃないかなー……」っていう気持ちもあったんです。

というのも、なにしろ「マリオ」シリーズだからというのがあるんですよね。

世界で1番有名なゲームシリーズですし、もちろん僕もこれまでに多数のシリーズを触ってきました。

知り尽くされているゲームであり、スタンスとしても万人向け。となると、ゲーム好きを驚かせるほどに新しい魅力を持った最新作を出すというのは至難の業です。というか、ほとんど無理な気すらしてしまうのですが。

今年には長く任天堂を代表するシリーズのひとつ「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」が新しい挑戦の末に素晴らしい作品となったという例があるわけですが、それがまた一段と「スーパーマリオ オデッセイ」のハードルを高めていたと思います。

そこに加え、ジャズ主題歌の「Jump Up, Super Star!」も大好評、どうにも止まらないワクワク感、Nintendo Switchというハードそのものの勢いに対する期待値まで相まり、「スーパーマリオ オデッセイ」への期待のハードルは「どこまで高くなるんです、これ?」っていう感じになっていたと思うんですよね。

そんなことを感じていた僕は、「このハードルを越えるほどの期待をするというのは酷なんじゃないかなぁ」なんて思っていたりしたんです。

“安定感のある面白さで魅せる”

そういう方向性だと思っていて、革新を求めると違ってしまうんじゃないかなーっていう心境。

そんなこんな気持ちを抱えつつ迎えた発売日。

早速プレイを開始してみると……、

「スーパーマリオ オデッセイ」はその高まった期待のハードルをぴょーんと、Jump Up!

軽々と飛び越えていったんですよねー、これが。

高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話

「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」は“ゼルダの当たり前を見直す”というアプローチから、それまでのシリーズになかった魅力を手に入れ、シリーズにとって革新的な作品になったわけですが、
一方で「スーパーマリオ オデッセイ」はこれまでのシリーズからかけ離れたところはあまり多くはないと思うんです。

「スーパーマリオ64」から始まり、「スーパーマリオサンシャイン」や「スーパーマリオギャラクシー」などなど、続いてきた3Dマリオの流れ。新しさや驚きよりも、安心感や親しみのある“良く知っている3Dマリオの手触り”。

ですが、その良く知っている3Dマリオ感が、ものすごく洗練されているんですよね。簡単に言えば“出来がいい”んです。

直感的に楽しめてシリーズ作を思い起こさせるギミックもあったりしつつ、でもそこにはしっかりと、「スーパーマリオ オデッセイ」ならではなオマージュやアレンジが効いています。思い起こさせつつも新しいというテイスト。

メイン要素であるパワームーンを探すというところには、マリオ64的な“探索”の要素がふんだんにあるのですが、そのパワームーン探しから獲得するまでの道は、気がつくとステージクリア型なデザインのエリアに踏み込んでいくこともあり、パワームーンをゲットしたときには従来マリオの1コース分をクリアしたぐらいの時間感覚であり満足感になります。

マリオが訪れる王国自体もそれぞれに個性があり、そこではこれまでの「マリオ」シリーズらしからぬ挑戦も見られます。この挑戦の部分は、ジャズ主題歌「Jump Up, Super Star!」にも代表されるところで、「スーパーマリオ オデッセイ」で最も独創性のあるところかもしれません。ただ、それらもやはり“最初は驚いたけど慣れるとしっくりくる”というものになっています。

そんなわけで、個人的には「スーパーマリオ オデッセイ」はやはり、事前に思っていたように“馴染みのある安定感のある面白さ”ではあったのです。ですが……、

それらはものすごく洗練されていて、バランスもテンポも優れていて、文句なく楽しいというものになっていたことで、高まっていたハードルを飛び越えていく作品になっていました。

予想通りだったのに予想外だったんですね。

マリオの旅、プレイの隅々は常に“楽しい雰囲気”に包まれていて、コミカルさとエンタメ感のある魅力……ざっくり言うと“明るくて楽しいゲーム”という方向ではやっぱり世界一。

Joy-Conを振って帽子を投げるという、今作独自の攻撃方法があるので、よりアグレッシブに動けるところも大きな魅力と思うのですが、その新鮮さにも慣れた頃にはやっぱり、マリオシリーズの原初である“ジャンプアクション”の面白さに立ち返っていきます。

いわゆるジャンプアクションゲームというジャンルの面白さを改めて知ったり、初めて実感するという人が、この「スーパーマリオ オデッセイ」でたくさん現われるのではないでしょうか。

高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話

そんなわけでして。

「スーパーマリオ オデッセイ」に対して

「期待のハードルが上がりすぎてしまい、それを越えることはできなかったけど充分に面白い」

という、ちょっと寂しい言葉も頭のどこかに用意していた僕なんですけど、

そんな言葉はまったく必要なかったですよねー。

あまりにも3Dマリオらしくて、あまりにも馴染みのあるもので、あまりにも常に楽しい。

高いにもほどのあるハードルすらも笑顔で飛び越えていくマリオさん、さすがです。

世界中でも同じように大好評の高評価連発なようで、あらたまって言うまでもなさそうなのですが。

新たなアプローチで魅力を見せた「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」とはまた異なるもの。

スタンダードなマリオらしさ、ひいては任天堂らしさ。優れたバランス感覚とデザインセンスを見せる「スーパーマリオ オデッセイ」は、これまでいくつかの「マリオ」シリーズではピンとこなかったという人にもオススメしたい作品です。

もう「スーパーマリオ オデッセイ」への評価は、これまでの「マリオ」シリーズで1番かどうか、というところにありますよね。

僕の感想としては、シリーズ1の作品なんじゃないかなって思います。

新しい挑戦で魅せた「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」

積み重ねの結晶で魅せた「スーパーマリオ オデッセイ」

2017年はやはり、この2本が印象的かつ代表する年となりそうです。

高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話
高まった期待のハードルを“Jump Up!”軽々と飛び越えていった「スーパーマリオ オデッセイ」の話

ではでは、今回はこのへんで。また来週。