山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第134回
過去未来の2つのアメリカオープンワールド激突に、センスとやりこみが光る「BLACK BIRD」の話
2018年10月24日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
世界中のゲームファンが待ちに待った、“過去のアメリカ”と“未来のアメリカ”を舞台にしたオープンワールド作品が、ついにやってきて大激突ですよ。
秋をスキップして一気に冬に向かっているかのような勢いで寒くなってきましたが、みなさん、風邪とかひいていませんか? ちゃんとご飯食べてますか?
……なんか息子を心配する田舎のお母ちゃんみたいになってますけども。
今週はいよいよ金曜日の10月26日に、「レッド・デッド・リデンプション2」発売です。
ロックスター・ゲームスが手がける、“1899年のアメリカ”を舞台にした西部劇のオープンワールドアクションアドベンチャーですね。
この発売をひたすら楽しみにして今日まで過ごしてきた、というファンの人も多いことでしょう。
海外のインタビューでは、広大なマップは、前作「レッド・デッド・リデンプション」の倍以上かつ「グランド・セフト・オートV」も遥かに超える広さ。とりあえずのクリアまでにかかるプレイ時間はおよそ65時間以上、700人の声優が参加し、30万のアニメーション、50万行の会話を収録……などなどの回答があって、
文字通り、規模がいろいろおかしいモンスタータイトルとなったそうです。
「RDR2」の規模を越えるゲームが次に現われるのは果たしていつなのか。それが何年後になるのか。ちょっと想像できないほどです。
僕は既にプレイステーション 4でのダウンロード版を予約購入済みですが、容量はなんと約92GB!
パッケージ版の方はBlu-rayディスク2枚組みということですし、
今世代の成熟を感じさせる、とてつもない存在感のタイトルです。
そんな「RDR2」の発売が迫るなか飛び込んできたのが、“未来のアメリカ”を舞台にしたオープンワールドRPG。
「Fallout 76」のβテストです。
ベセスダソフトワークスより11月15日に発売予定の「Fallout 76」ですが、今作はオンラインマルチプレイがメインということで、そのβテストが予約購入者を対象に行なわれます。
それが北米時間でXbox One版は10月23日から、PS4版とPC版は10月30日から。
まさに、「RDR2」リリースのまっただ中であり、大激突です。
ロックスター・ゲームスとベセスダソフトワークスという、どちらもオープンワールドタイトルの雄とも言える存在ですし、
「RDR2」は、1899年のアメリカ、
「Fallout 76」は、2102年のアメリカが舞台。
「約200年で人類はここまでいきますか」という、不思議な気持ちも湧いてくる2大ビッグタイトル。
過去と未来のアメリカを描くオープンワールドタイトルの大激突です。
どちらもいち早く楽しみたいところですが、体は1つ、使える時間も限られていますよね。
……とりあえず「Fallout 76」のβテストは諦めて「RDR2」に専念する? いやぁ、「Fallout 76」のβテストのデータは製品版にも持ち越せるというし、発売直前のβテストっていうのはある意味1番楽しい時間だしスルーなんてもったいない。じゃあ逆に、「Fallout 76」のβテストを優先して「RDR2」は後からじっくりプレイする?……いやぁそれもまた、うーん、どうすればいいんだ……。
……とまぁ、こんな感じに世界中のゲームファンが頭を抱えていること間違いなしです。
いやぁ、本当どうしたらいいんですかね。
眠らなくても大丈夫な、機械の体が欲しいですよ、ホントに。
さてさて、そんな大型タイトルのビッグバンみたいな話の一方で、僕が今週に夢中でプレイしているのが、
「BLACK BIRD」です。
Nintendo SwitchおよびSteamで発売予定で、10月18日にNintendo Switch版が先行して発売されました。
こちらを制作したのは、かつてプレイステーション用タイトル「moon」を手がけたラブデリックの流れを汲むOnion Games。
Onion Gamesからは昨年にAndroid/iOS用アプリ「Million Onion Hotel」が発売されていて、そちらも独特な世界観がクセになるパズルゲームだったのですが、
「BLACK BIRD」は、そんな世界観やキャラクターを引き継ぎつつも、ゲームデザインはまったく異なるシューティングゲームになっています。
可哀想な少女がパタリと倒れ、少女は大きなタマゴになって、そこから禍々しい黒い鳥が生まれて、みんなの命を食べていく。
そんなダークな黒い鳥が主人公の横スクロールシューティングで、
セピア色のテイストに黒い世界観、かわいいのにどこか禍々しさを感じるキャラクターたちに、ステージ間に見られる薄暗い想像が膨らむ物語などなど、心をざわめかせる要素てんこもりです。
シューティングとしては、ループするマップを左右好きなように進んでいけるようになっていて、マップ中に点在する通信施設を破壊していくという、「ファンタジーゾーン」を彷彿とさせる構成。
倒した敵が落とす宝石を取っていくことで黒い鳥がパワーアップしていくので、果敢に攻めのプレイをしてスコアを稼ぐほどにパワーアップも速まっていくという作り。敵を倒したコンボがMAXのときにボムを放てばスコアも宝石ドロップも大幅アップで、クリア目的もスコアアタックのやり込みプレイも、どちらも同時に両立されるような、上手いバランスのシステムになっています。
ループするステージのなかで、敵がBGMに合わせて出現するので、曲のメロディーやコーラスに乗りながらプレイすると自然とスコア稼ぎのタイミングもわかってくるというのも、独特かつ上手い仕組み。
さらに、本作はマルチエンディング、プレイ次第で分岐もあって、隠れた要素もたっぷり。最初は説明なしに突き放され気味に始まっていく本作ですが、プレイを重ねて理解が進むごとに、やりこみの奥行きがかなりあること、そして、その作りの良さを実感するばかりです。
クセになるような、奇妙で、ほの暗くて、シュールでシニカルでブラックなテイスト。
それでいて、シューティングゲームとしてがっちり遊べて、スコアアタック=パワーアップ=クリアへの道にしっかりと繋がっていることから、自然とスコアアタックの気持ち良さに到達するようになっているゲームデザインの上手さもかなりのもの。
表面も内面も個性的で優れている「BLACK BIRD」。ゲーム好きなら見逃せないゲームだなと思いますよ。
ただし、説明とかは特になしに突き放し気味に始まるゲームなので(でも本当はそこから自分で模索してシステムに気づいていくのが良いところなのですが)、特にシューティングゲームに慣れていないという人だと厳しいかもしれません。
そういう人には、こちらの動画がとても参考になりますので。どんな仕組みのゲームなのかざっくり見てみたいという人にもオススメです。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。