山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第152回
“新作を発売日に定価で買うリスク”が日本でも月額サービスへの関心を加速させるような気がする話
2019年3月6日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
嫌なタイトルだなっ!
……自分でつけておいてなんですけども。
ここ最近のゲームシーンのホットな話題の中でも、特に未来のことについて注目したいのが、
マイクロソフトの月額ゲームサービス「Xbox Game Pass」が“様々なプラットフォーム”で提供される可能性がある、
という噂ですね。
「Xbox Game Pass」は、現在のところXbox One向け定額制サービスであり、提供されているゲームが遊び放題になるというもの。
昨年には、「Xbox Game Pass」をWindows PCにも提供するというマイクロソフトの戦略が伝えられていたわけですが、今年に入ると、「Xbox Game Pass」にストリーミングプレイの「Project xCloud」を融合させ、“様々なプラットフォームに提供したい”という表現に進んでいます。
これは例えば、「Xbox Game Pass」に入ることでスマートフォンでもクラウドストリーミング越しにXbox Oneのゲームがプレイできる……というようなことになります。
そして、ここからは噂の領域ですが、マイクロソフトはこの「Xbox Game Pass」をXbox One以外の他のゲーム機向けにも提供することを考えているという話も挙がっています。
例えば、「Halo」シリーズをNintendo Switchでストリーミングプレイする……というようなことが、もしかしたら実現するのかもしれないというわけですね。
もちろんこれはあくまで現時点では噂や憶測ですし、実際にその提案がされたとしても、他のプラットフォーマーがその提供を受け入れるかどうかもまた、繊細な議題ですよね。
実際のところがどうなるのかはまだわかりませんが、ストリーミングプレイと月額サービスの組み合わせという形で、プラットフォームがハードウェアからサービスとなり、ゲーム機はそれを楽しむための端末となるという未来が、少しずつ近づいているように思えます。
月額サービスは映画や音楽の分野ではだいぶ浸透していますし、「話題の新作はこれまで通りに個別で購入するけど、それ以外は月額サービスで楽しんでいる」という人も多いと思います。ゲームもそこに近づいているのかもしれません。
ボクはというと、昨年11月に「Battlefield V」が発売されたタイミングから、EAが提供する月額プレイサービス「Origin Access Premier」を契約しているのですが、
これがだいぶ新作ゲームに対する意識が変わるんですよ。
「Origin Access Premier」は月額1,644円でPC向けのEAタイトルがプレイできるというものですが、「Battlefield V」や「Anthem」といった大型のタイトルも発売前からプレイできるという力の入れよう。
こうなると、当然ながら“パッケージ版なりダウンロード版なりを発売日に購入する”という考えが全くなくなります。
だって、買わなくたって「Origin Access Premier」でプレイできますし、プレイしてみて面白かったなら「Origin Access Premier」を継続するなりすればいいですし、
個別にゲームを買うのは、よほどそのゲームが面白くて今後も遊び続けたいと思って、かつ、「Origin Access Premier」は契約解除する、となった時のみ。
こういう意識になってきます。
もっと言えば、プレイをどうしても再開したくなったら、その月だけ「Origin Access Premier」を再契約すればいいということでもありますね。
ボクは「これって『Battlefield V』や『Anthem』の売り上げ本数にもだいぶ影響するのでは」とも思ったのですが、もう本数で語る領域ではないんだろうなとも感じた次第です。
月額サービス利用の環境になると“新作へのリスク”も感じないんです。
新作へのリスクとは、「買ったゲームがつまらなかったらどうしよう!」とか、「評判が悪くてすぐに値下がりしちゃったら、なんか損した気分になる!なんか辛い!」みたいなことですね。
月額サービスに追加されたゲームを何も支払うことなくプレイするだけなので“新作へのリスク”なんて微塵もないんです。
発売直後から販売価格が日に日に下げられていき、ついには1週間も経たないうちに定価の半額以下になってしまっている……なんていうことがあると、新作ゲームを発売日に定価近い価格で買うことが嫌になっちゃいますよね。
それこそゲームをポンポン買えるような独身貴族ならまだしも、学生さんとかだとかなり辛いでしょう。
ゲーム不信にもなりますよ、そりゃあ。
でも、月額サービスで遊ぶのならお財布に優しいし、そうしたリスクにビクビクすることもない……というわけで。
今回のタイトルにある、“新作を発売日に定価で買うリスク”が日本でも月額サービスへの関心を加速させるという話になってくるというわけなんです。
正直なところ、良いことではないと思うんですよ。月額サービスで遊ぶということで精神的なリスクが減ったと同時に、新作へのプレイモチベーションや意識が下がったところもあります。だって買ってないから。期待度や必死さは上がりづらいんです。
「あぁ、今日からアーリーアクセス開始かー、プレイしてみるかー」っていう感じで、追加されたものを、のたーっとプレイします。
のっぺりした心の起伏でまったり遊びます。
まぁ、それはそれで良いっちゃ良いんですけど、
ゲームを販売店で買って帰り道の電車内で取説を読んで……とまではさすがに言いませんが、
お金出して買って、面白いかどうかをプレイ開始のそのときまでドキドキしながら待つという、ワクワク増幅タイムは大事だなって思ったりするところもありますね。
もうひとつ言えば、“新作を発売日に定価で買うリスク”だっていう話そのものが良くないことなわけで。
“新作を発売日に定価で買うリスク”そのものが無くなることが望ましいんです。本当は。
そんなわけで、個別に購入する新作にも期待できて、月額サービスも有意義に使えて。そういう未来になって欲しいなって思います。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。