【特別企画】
「リターン・オブ・ザ・インベーダー」が稼働40周年。確かな面白さとセンスを感じられるゲームデザインが施された「スペースインベーダー」シリーズ3作目
2025年3月29日 00:00
- 【リターン・オブ・ザ・インベーダー】
- 1985年 稼働
タイトーが1985年にリリースしたアーケード用「リターン・オブ・ザ・インベーダー」が今年2025年で稼働から40周年を迎えた。
1978年にリリースされ世界を席巻した「スペースインベーダー」から7年の時を経て、グラフィックス、演出、サウンドが大きく進化したシリーズ3作目にあたる作品だ。透明感のあるサウンドをバックに、メカニカルあるいは生物的なインベーダー達が曲線を描いて飛び回るその様子は、今改めて見ると不思議な魅力が感じられる。
「スペースインベーダー」シリーズの中でも本作を特に気に入っている筆者が、この40周年を機にその内容について紹介していきたい。なお掲載のゲーム画面は全て「イーグレットツーミニ」の「アーケードメモリーズ VOL.2」に収録された本作を、参考文献には同ソフトに同梱の「電撃TAITO STATION VOL.3」を使用している。
7年の時を経て手強い仲間を引き連れ、三たび地球にやってきた侵略者達
「リターン・オブ・ザ・インベーダー」は、1978年の「スペースインベーダー」、1979年の「スペースインベーダー・パート2」に続くシリーズ3作目として1985年に登場した。前作からは約6年の時が過ぎていて、その間にビデオゲームは劇的な進化を遂げている。特にこの1985年のアーケードゲームは豊作で、「グラディウス」、「スペースハリアー」、「魔界村」といったゲーム史に残る名作が各社からリリースされている。
そんな中リリースされた本作もまた、前作からは大きな進化を遂げていた。単色だったインベーダー達はカラフルなドット絵で描かれ、ステージによっては滑らかな曲線を描いて攻撃してくるようになった。自機のパワーアップ要素やチャレンジングステージなども追加されているが、基本的なゲームルールは「スペースインベーダー」のそれを踏襲していて、続編としての域を逸脱しない内容で作られている。
画面上側に無数のインベーダーが出現し、左右に動くプレイヤー機「XEROVY(ゼロービィ)」でそれを撃ち落とし、全滅させればステージクリアとなるが、最下段まで降りられてしまうと侵略されてゲームオーバーとなってしまう。自機とインベーダーの間にはトーチカと同等の性質を持つ「XERO-GUARD(ゼロガード)」が存在し、インベーダーからの攻撃を防いでくれる。
本作は家庭用機に移植される機会が少なかったせいか、シリーズの中ではややマイナーな部類に入ると個人的には認識していて、2005年にPSPの「スペースインベーダーポケット」で初めて家庭用タイトルとして収録されたときはすぐに購入し、このタイトルばかり遊んでいた。
……とここまでえらそうに書いているが、実は筆者と本作の出会いはリアルタイムではない。リリースから2年後の1987年にフジテレビで放映された「糸井重里の電視遊戯大展覧会」という糸井重里氏がナビゲーターを務めるゲームの歴史やカルチャーを紹介する番組の中で、当時ライターだったゲームフリークの田尻智氏が自前の基板と筐体を使ってこのゲームを紹介しており、「スペースインベーダー」が苦手だった筆者は、インベーダーを撃ちまくれる爽快感と美しいサウンドに魅了されたのだ。
その後ゲームセンターを見て回ったのだが、人気作が次々とリリースされた1980年代後半の時期に2年近くもゲーセンに置かれるようなロングセラーなタイトルではなかったため、ほとんど遊ぶ機会なく時代が過ぎてしまったのだ。つまり筆者が本作を本格的にプレイできたのは、それから20年近く後のPSP版だったことは、あまり大きな声では言えない事実だ。
こちらの弾を撃ち返す強敵「レガード」の攻略や、チャレンジングステージに挑むための戦略が楽しい
本作に登場するインベーダーには特筆すべき存在がいくつか登場する。その筆頭となるのが“DEFLECTOR INVADER”の名を冠された「LEGARD(レガード)」である。このインベーダーは本体の中央部分を狙って撃たないと、「キン!」という甲高い音とともに撃った弾を跳ね返してくるのだ。上手く撃てたとしても、倒した中から別のインベーダーが現われ、曲線を描いて自機のほうに降ってくるから厄介だ。その強さはトラウマレベルといって過言ではなく、このインベーダーが多数登場するステージや、曲線を描いて動くステージは難易度が跳ね上がった。
もう一つ、“MASTER INVADER”と呼ばれる「ZICON(ザイコン)」は、3匹以上を残して他のインベーダーを全て倒すことで、スコアアップのチャンスとなるチャレンジングステージに挑めるようになる。このステージでは画面にUFOが出現し、そこからインベーダー達が次々と現れ、これを撃つことでボーナスが入るという具合だ。
チャレンジングステージという存在ももはや懐かしく、スコア自体がゲームに存在しないことのほうが多くなってしまった昨今だが、今改めてプレイしてみると、このザイコンを残してインベーダーを倒す戦略や、撃つと急降下してくるインベーダーを引きつけて撃つことで入る高得点、そして「レインボー」の条件を満たすと入るボーナスなど、戦略的なスコアアタックが楽める作品でもあった。
本稿でスクリーンショットを撮影しているのは、イーグレットツーミニの「アーケードメモリーズ VOL.2」版である。イーグレットツーミニへの収録は筆者としては待望の出来事で、事前に行なわれた収録希望タイトルのアンケートに本作のタイトルを一番に書いておいた甲斐があった。ちなみに「アーケードメモリーズ VOL.2」付属の冊子には、本作が1年2カ月という長期間をかけて開発されたというかなりコアな裏話も記されている。
本作を縦画面+ジョイスティックでプレイできる感覚は、リアルタイムでその感覚を味わう機会が少なかった筆者にはありがたく、今も楽しく遊んでいる。また「スペースインベーダーポケット」などと同様、いくつかのシリーズを同じ筐体でプレイできるのもいいところだ。
その「アーケードメモリーズ VOL.2」は残念ながら既に完売していて、現行で入手できるのはPSPのダウンロード版のみとなっている。ハムスターの「アーケードアーカイブス」や「タイトーマイルストーン」など、現行のプラットフォームでプレイできる環境も欲しいところだ。
ゲームの歴史に燦然と輝く「スペースインベーダー」。その進化の系譜の中に存在する本作は、決して目立つ存在ではないが、プレイしてみるとシューティングゲームとして確かな面白さとビジュアル・サウンド面に当時らしいセンスを感じられる。
前述の通り現在プレイできる環境が少ないのが残念な限りで、現行機種への移植にも期待したいところ。もし「アーケードメモリーズ VOL.2」を手に入れたのにプレイしていなかったり、クラシック作品を稼働させているゲームセンターで見かけたりするとがあったら、ぜひ遊んでいただきたいものだ。
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