コメディアンBJ Foxの脱サラゲームブログ

連載第3弾

「Dead Cells」のレビューをパクってしまったIGNにBJ Foxが物申す!

 欧米と日本でのゲームプロモーションを両方経験してきた僕は、お互いの違う点をいくつか気づいてきた。どっちも良い点とちょっとねと思う点があるわけである。僕にとっては、最大の違いが、欧米でのレビュースコアの偏重である。レビューの記事の内容よりも、その最後の最後に出ているくる「点数」が大事にされるのだ。ゲーム、映画、音楽、テレビ……。欧米ではレビュースコアが大事だし、プロモーション担当者泣かせでもある。特に追加コンテンツ及びパッチの時代である現在において、レビュースコアのあり方が議論されるべきだと思いながらも……。

 僕が常にゲームニュースをチェックする英国のゲーム媒体IGNに、「Dead Cells」のレビューが掲載されていた。Nintendo Switch版の。スコアは、10点満点の9.7点だった。レビュー本編をほぼ読まずにスコアだけで衝動買いしてしまった! というわけでレビュースコアの議論は後回しにして、今回はこのゲームを紹介しよう。

蘇った死体から、プレイがスタートする

わかってないよね、お前

 「Dead Cells」は、プレイしやすいのに、チャレンジ性が高いと言える、いい意味での難易度が高めというファーストインプレッションだった。システムについては、まあ、僕が勝手に連載ライバルに認定している山村智美さんが先に記事を書かれて、しかももっと上手な日本語で説明してくれていますので、ゲームシステムの解説は彼に任せよう。

「最大の特徴は、ランダムに生成されるマップに繰り返し挑戦していく、いわゆる「ローグライク」であり、自由に2Dマップを探索していく「メトロイドヴァニア」と融合させて、「ローグヴァニア」というジャンルに仕上げたというタイトル」

だって。

 やり込んでいくと共に、新しい装備、武器や魔法をアンロックして、死んだら、ゲームの最初に戻ることとなるが、アンロックしたものが残ることで、成長感が気持ちいい。前に難しかったエリアは、アンロックした武器を装備することで、ほぼ無敵モードでサーッとクリアできるようになり、繰り返しのつまらなさもなく、戦いのフローをたっぷり楽しめる。

蘇って最初に出会う画面:自分がアンロックしたスキル・武器のコレクション。何もない状態からスタートする

まあ、最後までワンプレイできるのではないか、と思えるくらい!

 その時、「メトロイド」や「キャッスルヴァニア」の2タイトルよりもコナミさんの「コントラ」の良いところを思い出した。「コントラ」ではどんどん装備をアップグレードしてどんどんヒーロー感が強まってくるが、死んだ瞬間の絶望感は凄いものがある。それに対して「Dead Cells」は「死」がゲームの軸でもあり、死後の成長もあるので(絶望感が全くなくはないけれど)ついにワン・モア・トライとなる楽しさもある。

 こういう風に「死」はゲームプレイの一局面となることも昔々のダンジョンズ&ドラゴンズのRPG「プレーンスケープ:トーメント」も思い出された。その主人公は、「The Nameless One (名も無き者)」でもあり、「Dead Cells」はもしかしてそっちにもインスパイアされたかな?

つまり、ローグライク・ コントラスケープ・メトロイドヴァニア。

 ところで、僕はプレイして割と早い段階で行き詰まってしまった。オブジェクトがあり、インタラクトができたけれど、何も起こらなくなってしまったんだ。もしかしてそのオブジェクトを動かすスキルをまだアンロックしていないなぁと思いつつ、難しいことに遭遇したらすぐにWebをチェックする今時風の僕はやっぱり今回もチェックしてしまった。「Dead Cells First Level」を検索したら、最初に出てきたビデオは、以下のやつだった!

ビデオタイトル和訳:IGNは僕のDead Cellsのレビューをパクった!どうしよう?

【IGN Copied my Dead Cells Review: What do I do?】

 ビデオの投稿者は Boomstick Gamingだった。

 Boomstick Gamingは聞いたことがなかった(ゲームレビューを中心とする中間レベルYouTuberらしい)が、あのタイトルに引っ張られ、クリックした。すると、信じられない内容の動画があった。説明すると、Boomstick Gamingが8月にアップした「Dead Cells」のビデオレビューと私が見たIGNのビデオレビューの内容の共通点をハイライトする比較動画があった。まあそう言われば似ているねぇ、から、丸々そのままの言い回しが使い回されたほど、共通点を超えてしまった点がいくつかあった。要するに、僕が読んだIGNのレビューは、Boomstick Gamingのビデオレビューを丸々パクったものだったわけだ。

 私の衝動買いの引き金がIGNのスコアだったことは別に気にしなかった。もう既に楽しんでたし。山村智美さんも「アクションとしての出来も良くて、2段ジャンプ、空中からの急降下、回避といったアクションが、スピード速めの気持ちいい」と述べていて、その通りだからだ。しかし、英国で有力なゲーム媒体がフリーYouTuberのコンテンツを盗用するなんて怖かった。怪物が溢れる、毎回毎回マップが変わる、まるで生きていそうな地獄よりも怖かった。

アクション様子も満載。だって

 ちなみにスタンダップコメディの世界でも、ジョークの盗用が割と大きな問題だ。スタンダップコメディの基礎ルールの1個は、ネタが何でもありだが、オリジナルがマストだ。落語とは違う。落語は、まずシットダウンして既存の台本や表現の要素の上に積み重ねていく再現芸術だ。オリジナルよりも「Dead Cells」のように、今までの作品にインスパイアされるものだ。

 だから、オリジナルならつまらなくていいくらい、オリジナル性を大事にするスタンダップコメディでは、ジョークセフト(冗談盗用)ほど大きな罪はない。実際に1度東京でジョークセフトされたことがあった。撮影の都合でコメディを3カ月間休んで戻ってきたら、別のコメディアンが、僕のネタとヒジョ~ウに似ているネタをやっていた。しかも僕がずいぶん長い間消えてたため、そのネタが他コメディアンのものという印象がつけられ始めてたし、僕はもう使えなかったんだ! なんてことだ! でもコンテンツ盗用の問題は難しい。相当デカい会社ではないとコピーライトをつけることができないし、裁判もいけないじゃん。本当にBoomstick Gamingはかわいそうだなぁ、と思った。

 この事件に関してより深く調べると、IGNはBoomstick Gamingのクレームを真剣に受け止めた上で謝罪し、例のレビューを取り消し、しかも関わったライターを解雇した。ちなみにその衝動買いのきっかけとなった9.7のスコアは、9.5まで下方修正した!

 被害に遭ったBoomstick Gamingは、裏には何があったのかバラされていないが、最初の怒りではなく「どうすればいい?」というリアクションから、最後のコメントまでとても冷静な態度をとっているみたいだ。このインターネット炎上時代では、滅多にない紳士的な対応だな、と思った。IGNのライターの解雇に関しても、若手の時は誰だってミスをするし、無職の僕は、誰も仕事を失って欲しくないと思っているので、とても残念だ。Boomstick Gamingもこの事件でおそらく知名度を上がり、登録者数も急増しただろう。また、IGNさんもこの盗用事件により評判に傷付られたどころか、迅速かつフェアな対応して逆に評判アップしてきた。変なハッピーエンドと言えるかな。

 最後に「Dead Cells」について「『Dead Cells』が面白い、難しい、でも面白いの話」だって。本当にそうですよ。(c)2018山村智美。

今回は、ゲームのレビューの盗作について語りながら、山本智美さまの記事のあちこちを盗作(編注:引用です)してきたんだけど、素なのかネタなのか伝わらないと担当編集の中村さんに言われたので、実際にプレイしている画面を撮って置いた! ちゃんと遊んでる! レビューの盗作について書いた記事で盗作してしまうなんて、いろんな意味で最近のゾンビ映画に近い存在だから、次回はゾンビゲームにしようかな。