山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第120回
往年の名作「神業-KAMIWAZA-」を思い出しつつ「盗む」ばっかりしていてなかなか進まない「オクトパストラベラー」の話
2018年7月18日 12:45
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
週末はゴールデンウィークぶりの三連休でしたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。
「2018 FIFAワールドカップ」がついに終わっちゃいましたねー。僕はE3 2018での昼夜逆転生活からそのままの勢いで約1カ月に渡ってワールドカップもひたすらに観まくっていたので、全部が一段落した今は燃え尽き感がすごいです。
もっとワールドカップでの活躍が観たかったっていう選手が多いですよね。僕はもうそれが本当に心残りで。なんなら特別に来年もやりませんかね今世代選手でのワールドカップ。
ちなみに4年後の次回ワールドカップはカタールで開催予定で、カタールの気候を考慮して11月21日から12月18日に行なうという、史上初の冬開催になるそうです。
……ゲームファン的には年末大作ラッシュのまっただ中っぽくて、夏開催よりも観ていくのが大変かもしれない!
さらにちなみに話をすると、そのさらに次の2026年のFIFAワールドカップはアメリカ、カナダ、メキシコ3カ国の共同開催が決定しているんですね。
この2026年のワールドカップが従来の夏開催だった場合、アメリカでE3(世界最大のゲームの祭典)、ワールドカップ(世界最大のサッカーの祭典)、EVO(世界最大の格闘ゲームの祭典)と2カ月ぐらい世界最大エンタメ祭りが続くっていう、すごいことになるんですよね。
まぁ8年後の話なので「現地で2カ月たっぷり楽しんでみたいぜ!」っていう人は、今から貯金していきましょう。……8年あれば少しはなんとかなるんじゃないですかね。
さてさて、そんなワールドカップロスまっただ中の僕ですが、プレイしているのはもちろん「オクトパストラベラー」です。
このコラムで3週に渡って1本のゲームのことを書くなんて初めてじゃないですかね?
ビジュアルやサウンドなどの表向きな魅力はこれまでの2週でたっぷり書いてきたのでもう語るまでもないと思うのですが、
いざ製品版でじっくりとプレイしてみると、
“世界感の自然さ”
がまた独特で魅力的だなーと感じています。
物語に大げささや押しつけがないんですよね。ファンタジー世界がそこに存在していて、それ自体の味を楽しんでいくような、自然体な魅力があります。
ゲーム側からの働きかけは最小限で、プレーヤーの方から何があるのかを探っていくとそこに眠っている魅力に気づいていけるようなスタイルが取られていて、それをとてもゲーム的に実現しているのが各キャラクターの「フィールドコマンド」。
特に、サイラスのフィールドコマンド「探る」は、その街の人の年齢や過去や近況が読めるというもので、いわゆる“フレーバーテキスト”が読めます。
そこには意外な過去が書かれていることもあり、そこから、その世界にかつてあった事件や出来事が読み取れることも。また、その人の考えや暮らし、そして年齢がわかることで街の人の存在感が増しますし、あくまで今作では8人のキャラクターが主人公としてピックアップされているけれど、それ以外に人にもそれぞれの物語があることを感じさせます。
もちろん「探る」はゲーム的にも結構重要で、探ることで探索のきっかけになる新しい情報を手に入れることもあります。気になることを話している人は欠かさず探るようにするのがオススメですよ。
探る以外のフィールドコマンドでも街の人の隠れた面が垣間見えます。テリオンやトレサのコマンドでその人の所持品を見ると意外なものを持っていて、そこから何かその人の物語が見えてきたり。
はたまた、オルベリクやハンイットのコマンドで戦ってみたり、オフィーリアの導くで仲間にしてみると、おじいちゃんがめっちゃ強かったり。
妙に味のある世界観が見えてきたり、ちょっとバカゲーっぽさというか、笑える感じも眠っていたり。
フィールドコマンドを積極的に使わずとも物語は進められますし、早解き気味にプレイしている人だとスルーしがちかもしれませんが、正直それはオープンワールドRPGをメインストーリーだけ遊んで終えてしまうかのようなもったいなさがあるかもしれません。
逆に言うと「オクトパストラベラー」のプレイフィールには、プレーヤーが自発的にいろんなところに行ってみたり、フィールドコマンドでいろんなものを見てみたり、試してみたりすることで、自然体な世界から味が染み出てくるという、オープンワールドRPGのそれに近いものがあるかもしれません。
世界中のゲームファンからは「オクトパストラベラー」がスクウェア・エニックスの作品ということもあって、往年の「ファイナルファンタジー」に近いという意見、はたまた「ロマンシング サ・ガ」に近いという意見があり論議されているそうですが、
僕はどちらにも似ていなくて“スクウェア・エニックスのテイストが融合した良いアクワイアゲー”だなーと感じています。
「オクトパストラベラー」を開発したアクワイアは、近年だと「AKIBA'S TRIP」シリーズ、以前には、「天誅」シリーズや「侍道」シリーズなどでも知られますが、よくよく考えると“街の人にプレーヤーが何かする”とか、“物語を自由に楽しめる”とか、“やりこむと変なものが隠されていて笑っちゃう”とか、アクワイアの味と言えるところが今の「オクトパストラベラー」にも繋がっていたりします。
もうひとつ言えば、「勇者のくせになまいきだ」シリーズも手がけているという点では、ドット絵の良さを扱えるというところも言えたりしますよね。
僕なんかは街の人からアイテムを盗めるテリオンのフィールドコマンド「盗む」を使いまくってプレイしていて、新しい街に着いて街の人がたくさんいるのを見ると、「盗めるものだらけだ!」なんて喜ぶ有り様ですが、町人から盗むというところからはアクワイアの往年の名作「神業-KAMIWAZA-」(PS2、2006年)を思い出さずにはいられません。
「神業-KAMIWAZA-」は江戸を舞台に主人公である義賊のドロボウを操作し、町の人からスリ盗ったり、屋敷に忍び込んでお宝を狙ったりするステルス泥棒アクション。斬新さと良いバカっぽさ、楽しみかたはプレーヤー次第という自由さを兼ね備えた“The アクワイア”な名作。
テリオンがそんな「神業-KAMIWAZA-」のエッセンスを継いでいるかどうかはさすがにあれですが、「オクトパストラベラー」はそういう、アクワイアが歩んできた味を感じさせるところが随所にあって、じっくり取り組むほどに面白さと深みの出るゲームだなと感じます。
そんなわけで、テリオンの「盗む」で低確率のアイテムゲットに時間をかけまくっていたり、サイラスの「探る」でいろいろなフレーバーテキストから世界観を補完していたりと、とにかくじっくり取り組んでいるのでなかなか進まない僕の「オクトパストラベラー」プレイですが、
じっくり取り組むことで、より良い味が楽しめるゲームだなと感じていますので、あまりフィールドコマンドを使っていなかったという人は、ぜひ片っ端から試してみてください。
隠れたところに良い味が眠ってます。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。