「Bloodstained: Curse of the Moon」レビュー

Bloodstained: Curse of the Moon

8ビットスタイルをとことん追求した、五十嵐孝司氏入魂の2Dアクション

ジャンル:
  • アクション
発売元:
  • インティ・クリエイツ
開発元:
  • ArtPlay/インティ・クリエイツ
価格:
980円(税込)より
発売日:
2018年5月24日

 インティ・クリエイツは、プレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Swich/PS Vita/3DS/Windows向けアクションゲーム「Bloodstained: Curse of the Moon(ブラッドステインド:カース・オブ・ザ・ムーン)」の配信を5月24日に開始した。

 本作は「悪魔城年代記 悪魔城ドラキュラ」などを手がけたArtPlayのゲームクリエイター「IGA」こと五十嵐孝司氏の作品であり、現在開発中のプロジェクト「Bloodstained: Ritual of the Night(ブラッドステインド:リチュアル・オブ・ザ・ナイト)」の前日譚として制作されたもの。

 懐かしい8ビット時代を匂わせる2Dアクションゲームとしてこだわりが見られる本作のレビューをお届けしていきたい。なお今回プレイしたのはNintendo Switch版で、ゲーム画面もそちらで撮影している。

霧が晴れ、暗闇にたたずむ主人公の斬月

8ビット表現に対するこだわり、武器による攻撃とジャンプを主体としたアクションゲーム

 かつてKONAMIに在籍し、「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」や「キャッスルヴァニア 白夜の協奏曲」など、それまでとは趣の異なる探索型のアクションゲームとしての「悪魔城ドラキュラ」シリーズを打ち立てた五十嵐氏。

 独立の翌年2015年にはKickstarterにて、「IGAVANIA」(ゴシック調の探索型アクションゲーム)なるジャンルを掲げた完全新作「Bloodstained: Ritual of the Night」の開発資金調達を行ない、全世界約64,000人のバッカーから554万ドルもの支援を受け、現在も開発が進められている。

 そんなKickstarterのストレッチゴールの一環として制作・配信されたのが、この「Bloodstained: Curse of the Moon」だ。もちろん五十嵐氏は本作でもプロデューサー及びシナリオスーパーバイザーとして開発に携わっている。

 本作は、探索系アクションとして開発中の「Bloodstained: Ritual of the Night」とは異なる、ステージクリア型のアクションゲームとなっている。そのゲームデザインの原点となるのはもちろん、初代「悪魔城ドラキュラ」だ。プレーヤーキャラクターの1人がムチを使い、無数の敵を退けながら上下左右にスクロールするステージを進み、その最後には強力なボスが待ち受けている。

 また複数のプレーヤーキャラクターを切り替えたり、道中が分岐していたりする点は、シリーズ3作目「悪魔城伝説」を意識していることが予想される。キャラクターの攻撃やジャンプなど、操作系の感触もかなり当時に近いものとなっていたのも嬉しいところだった。

上下にスクロールするステージを進んでいく。ランプを壊すとアイテムが出現
キャラクターはボスを倒して話しかけると仲間になる

 そしてもう1つ、ゲームをプレイして感じられるのは、1980年代の8ビット表現に対するこだわりだ。昨今はドット絵時代の2Dグラフィックスが再評価され、その手の表現を採用した作品も増えているが、その中には単純に2Dに置き換えたただけの“美しすぎる”ドット絵も多く見られる。もちろん今どきの表現の選択肢としてはありなのだが、それらを“レトロ風”や“8ビット風”などとくくってしまうのは、筆者のように当時を現役で体験してきた世代には多少なり違和感があったはず。

 本作は表現においても、隅々まで8ビット時代の表現にこだわって作られている。例えばキャラクターは1体につき3~4色で描かれていて、色使いはファミコンのそれに近い。背景も全編黒を基調に、少なめの色数とパターンを組み合わせたグラフィックスで構成され、雰囲気は当時のままで、ゴシックホラーの世界観の表現にも一役買っている。

 サウンドはもちろんチップチューンであり、ボスの咆哮などの効果音もそれらしく作られていて、遊んでいて心地がいい。もちろん現代の技術で開発されたゲームなので、画面はワイドでグラフィックのにじみやちらつきもなく、プレイは非常に快適だ。

ボスは強敵だが、必ずどこかに弱点がある。また最後の一撃にも注意が必要だ
ホラーアクションにはつきものの、痛々しいトラップのステージも登場

主人公と3人の仲間達の特性を使いこなし、難局を切り抜けろ

 冒頭でも述べたように、本作のゲームシステムは初代「悪魔城ドラキュラ」を意識したような、武器による攻撃とジャンプを主体としたアクションゲームとなっている。自身に呪いをかけた悪魔を討つために旅をする「斬月」は、ある日大いなる悪魔の気配を感じ取り、月夜が照らす城の中へと乗り込んでいく。そこで彼は3人の人物と出会い、己の目的を果たすために、彼らを利用するのである。

 3人はボスを倒すと順に仲間になり、次のステージからボタンでボタンで瞬時に切り替えが可能となる。それぞれはメインとなるメインウェポンの他に、「ウェポンポイント」を消費して使用できるサブウェポン、そしてそれぞれ特別な能力を持っている。以下でその能力を簡単に紹介する。

斬月

 本作の主人公で、剣を持った退魔士。正面にくり出すメインウェポンの剣はリーチはやや短めなものの、連続でくり出せる強さを持つ。特定の条件を満たすと「月華」、「緋月」、「葬月」という3つのスキル「ソウルアーツ」が覚醒し、さらに強力な剣士となる。詳しい条件については書かないが、ステージクリア後の彼(プレーヤー)の選択がカギだ。

ソウルアーツを取得することにより、さらに強力な剣士となる

ミリアム

 「Bloodstained: Ritual of the Night」の主人公となる予定の少女で、錬金術によりシャードをその体に埋め込まれている。メインウェポンにムチを装備し、全キャラ中最長のリーチを誇る。また身が軽く、他のキャラよりも高いジャンプが行なえ、さらにスライディングで、狭い通路をすり抜けられる。4種の軌道を描くサブウェポンなども含め、扱いやすいキャラだ。

敵と離れた場所から攻撃できるのがミリアムの強み。ボス戦でも活躍する

アルフレッド

 錬金術師で、サブウェポンとして使える4種の錬金術が最大の力。炎のバリア「バーニングスフィア」や、ボスも凍りつかせる「フロストカリバー」など、魔法のような効果を持つ。中でも「ヴォルティックレイ」はホーミングして、耐久力のある敵に連続で大きなダメージを与えられる。HPが全キャラ中最低で、メインウェポンのロッドの攻撃範囲が極端に狭いのが弱点。

錬金術の効果中は、キャラクターを変更しても効果が続く

ジーベル

 ミリアム同様、シャードを体に埋め込まれた青年。コウモリのような弾を斜め上3方向に撃ち出すメインウェポン「サモンダーク」で、上方の敵に対して圧倒的な強さを誇る。またサブウェポンの「チェンジイモータル」はコウモリの姿に変身して飛行する能力で、ウェポンポイントが続く限りどこへでも飛んでいける。彼が仲間になると、新たなルートを開拓できるようになる。

チェンジイモータルはダメージを受けても効果が切れるので、万能ではない

 仲間となる彼らは、HPは固有、ライフとウェポンポイントは共有という独自のルールのもとに行動し、誰かがやられない限りゲームは続けられるので、キャラクターの素早い切り替えも攻略の1つとなっている。またステージにはミリアムやジーベルにしか行けない場所があり、そこから新たなルートを開拓するような楽しみもある。

マップには簡単なルートが表示される。仲間がいれば新たなルートを見つけられる
一撃では倒せない強敵は、ミリアムやジーベルでやり過ごすという手もある

 何よりミリアムを使っているときのムチをふるうアクションをはじめ、階段の上り下りや破壊できる壁の中に隠された隠しアイテムの発見、あるいは敵にダメージを受けて吹っ飛ばされたときのイラッとさせられた感覚まで、8ビット時代の「悪魔城ドラキュラ」シリーズをプレイした経験があれば、当時とさほど変わらない感触でゲームプレイができるはず。

 またゲームにはライフ制限やダメージによる吹き飛びがない「カジュアル」のスタイルも選択でき、前述のライフを共有したシステムなどもあるので、ひとまず最初のエンディングを見るのは難しくないかと思う。

後半のトラップやボスは、初見ではクリアできないかもしれない

 ゲームはマルチエンディングであり、より深くゲームを楽しみたいなら周回プレイが前提となる。ゲームをクリアすると、難易度が異なるモードがアンロックされ、モードによってはキャラクターが最初からアンロックされたものもあり、初回プレイで回れなかったルートも開拓できるという仕組みだ。

 また、かのシリーズを想定していたした人は最初のプレイで「こんなものかな?」と思うかもしれないが、そこはぜひクリア後の各モードを試してみることをオススメする。

それまでの道筋をやり直す「カースオブザムーン」はメニュー画面で発動できる。アイテムを撮り逃したときなどに便利だ

 タイトルとしては本編よりも先に外伝が発売されることになったわけだが、本作をプレイしてみれば、「Bloodstained」という作品にかける五十嵐氏や開発陣の熱意を感じ取れることができるはず。「Bloodstained: Ritual of the Night」への期待を高めるには十分な完成度であり、また純粋に2Dアクションゲームとしても価格以上に楽しめるものとなっているので、ぜひこの機会にプレイしてみてほしい。