【特集】
【メガドラミニW AE収録タイトルレビュー】「OutRun 2019」
近未来の世界観で“アウトラン”が楽しめる!
2020年3月23日 00:00
「OutRun 2019(アウトラン-2019)」は、1993年3月26日に発売したメガドライブ用ソフトだ。しかし新米メガドライバーの筆者は、今回「メガドライブミニ アジアエディション」の収録タイトル発表に際して、そのタイトルを初めて知った。
最初にタイトルを見た時の第1印象は“怪しい”だった。
過去にもファミコン用ソフトに「2010 ストリートファイター」というのがあり、タイトルだけで当時のアーケード版「ストリートファイター」のような格闘ゲームを期待してしまった事がある。ところが、実際のゲームを見てみると、似ても似つかぬ微妙なアクションゲームだったので、その印象が強かったのだ。特にタイトルに4桁数字を入れた続編は怪しいに違いない。
しかしそういった想いは杞憂だった。その走り、楽しさは間違いなく「アウトラン」だったのである。「OutRun 2019」をプレイしてみて、単体でのゲームとしての出来や、筆者も思い出深い「アウトラン」との違いなどを考えていきたいと思う。
まずやはり「アウトラン」について少し語らせて欲しい。セガの「アウトラン」と言えば、1986年に稼働開始した、大型筐体のアーケードゲームだ。内容も当時としては新しく、レースゲームが主流だったこの時代に、“公道をドライブする”のが目的と言う斬新な方向性だった。そのため「アウトラン」では搭乗する車両がオープンカーとなっており、時代を象徴した粋な演出だ。
そして、もう1つドライブに欠かせない物がBGMだ。「アウトラン」ではプレイ開始時に「MAGICAL SOUND SHOWER」、「SPLASH WAVE」、「PASSING BREEZE」の3曲からゲーム内でかけるBGMの選曲が可能になっており、ドライブ時の車内BGMの雰囲気を再現しており、やはり「アウトラン」の肝は“BGM”という事を再認識した。
筆者も「アウトラン」は大好きで、特にこの3曲のBGMはイントロを聴いたら曲全体が口ずさめるほどだ。ゲーム自体の出来もさることながら、やはりBGMが最高という印象が強く残っているのが「アウトラン」なのだ。
一方、「OutRun 2019」はシムスというメーカーが作った作品。メガドライブに「アウトラン」を移植し、当時のファンから技術力の高さを評価されたメーカーが、オリジナルのドライブゲームを作り上げた、というのが「OutRun 2019」だ。
本作のタイトルに冠する2019は、1993年の発売時期から見るとほどよく近未来となる26年後だ。これをさらに1年後の2020年に改めて見るのは何とも気恥ずかしい。背景の未来都市の画像も、近未来っぽくもあり、今とあまり変わらない感じにも見られる絶妙なテイストでやっぱり気恥ずかしい。
車両デザインも昨今の近未来車両と比較すると野暮ったさを感じる人がいるかもしれないが、筆者個人としては、ちょっとタイトー製アーケードゲーム「ナイトストライカー」に登場する「インターグレイ」っぽい雰囲気が感じられて、それなりにカッコいいと思っている。
ゲームを開始すると、ステージセレクトの画面になり、ここで1~4ステージのどこかを選択できる。ゲームのメイン画面は、元祖と変わらずに、自機が全て表示されるサードパーソン視点だ。前述の通り、本作の車両の天面には屋根があり、オープンスタイルに変形することはないのが残念だが、近未来では大気があまりキレイじゃないのでオープンカーは禁止なのだ、など勝手な妄想に浸りつつプレイを進めればあまり気にならない。
画面下部には、近未来感のあるデザインで、車両のパワーゲージと時速表示、シフトレバーの状態表示、残りタイムやステージ情報などが表示される。アクセルをふかしてスピードを上げ、コースの右左折は速度調節しながら曲がっていく。近未来的な都市をバックにコースを走っていると、看板や他の車両が見えてくる場合もあるので、接触しないように回避しつつ抜いていく。
ステージ途中のチェックポイント前には分岐点が出てくる場合もあるので、好みのコースに寄せて走ってコースを選択すればいい。またジャンプ台を見かける場合もあり、これに乗っかるとかなり高くジャンプすることもできる。ジャンプの浮遊感も心地よい。
普通に加速していくと、時速294㎞まで上がったところで、加速が止まる。その後はターボゲージが溜まっていき、最大まで上がったところでターボが動作して、最大速度は時速336㎞まで跳ね上がる。ただし加速度が上がるほど、カーブでの制御は困難になるため、速度の調整などの工夫が必要になるので注意が必要だ。
事前の筆者の思い込みは走ることで杞憂だとわかった。ちゃんと「アウトラン」なのだ。もちろんアーケードゲームそのままというわけではなく、美しいリゾート地を走り抜ける「アウトラン」とは大きく違うが、近未来の「アウトラン」なんだよ、と言われれば、なるほどと納得できた。
一方で残念なポイントはBGMだ。本作ではBGMの選択ができず、ステージ固定となっている。本作のBGMがいいか悪いかをここで論ずるつもりはない。個人的な好みだとステージ3のBGMは結構好みだったが、一方でステージ1のBGMはあまり好みではなかった。前述の通り、「アウトラン」のポイントは“ドライブしている”感だ。近未来におけるドライブであっても車内BGMは欠かせないはず。にもかかわらず、スタート前にBGM選択がないというのは、筆者にとってやはり本作を「アウトラン」というには抵抗がある。
しかしゲームとして本作の骨子はそれなりに「アウトラン」を意識した作りになっており、走っている爽快感など「アウトラン」の良さをきちんと継承していると感じられた。なにより、メガドラならではのユニークで楽しめる1本として、異彩を放つ1作だと思う。アジアエディションを購入した人はぜひ挑戦してみて欲しい。
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