【特集】

【メガドラミニW AE収録タイトルレビュー】「ワンダーボーイV モンスターワールドIII」

昨今では味わえないレトロゲーの厳しさを痛感!? 王道のアクションRPG

1991年10月25日発売

 プレイしていると“当たり前”の感覚になってしまうのだが、昨今のゲームはとにかく遊びやすい。遊びやすさに慣れ過ぎてしまい、広大なマップを行き来するゲームでは一瞬で目的地に移動できるファストトラベル(ワープ機能)が無いとそれだけで不満を感じるほどだ。

 そんな甘ったれた感覚に喝を入れ、“元来ゲームとはこういうものだ”という、昔の感覚を思い出させてくれたゲーム、それが今回プレイしたアクションRPG「ワンダーボーイV モンスターワールドIII」だ。

 セガの名作アクションゲーム「ワンダーボーイ」シリーズ第5弾にして「モンスターワールド」の3作目という若干分かり辛い位置づけの本作。筆者は本シリーズは全くの未プレイなのだが、このゲームには古き良きRPGのエッセンスが詰まっており、プレイしていてとても懐かしさを感じた。レトロゲーの真髄を存分に味あわせてもらったので、その内容を紹介していこう。

 伝説の勇者の子孫・シオンとなって、悪の魔の手からモンスターワールドの平和を取り戻すという王道なストーリー。ゲームスタートから特にどこへ向かうかも告げられぬままシオンの冒険が始まる。近年のRPGではNPCと会話をする必要はあまり無く、単なる飾りになっている作品も多いが、昔のRPGは町の住人などにもしっかり話さないとゲームが進行しないなんてことも結構ある。本作がまさにそれだ。とりあえず目に入ったNPCには手当たり次第話かけるのが鉄則だ。

NPCから情報を集めるのは、ゲームを進む上で必要不可欠

 本作のアクションは武器による攻撃と魔法、ジャンプに防御と、4つのアクションを駆使して進んでいく。戦闘では敵との間合いの取り方や、相手の隙をついて戦うのが重要。シンプルな操作ながらアクション性が高く面白い。

 RPGではあるもののレベルの概念や主人公の成長要素などはない。その代わりにショップで購入できる武器や防具などの装備で主人公を強化していく。武器は剣と槍の2種類があり、剣はリーチが短いが攻撃範囲が広く、逆に槍はリーチが長い代わりに攻撃範囲が狭いという特性がある。戦況によって武器を使い分けることで、戦いを有利に進めることができる。

2種類の武器を使いこなすのが攻略のカギ
使用回数制限はあるが魔法はかなり強力だ

 森や海中、砂漠などの様々なダンジョンを攻略していくのだが、敵の猛攻やトラップなどもあり、結構歯応えがある。ダンジョンの最深部にはボスも待っており、初見プレイでの攻略はなかなかに困難だ。

 ダンジョンでライフが0になってしまうと所持金が減るうえに、最後に利用した宿屋へと戻されてしまう。本音をぶっちゃけてしまうと、またダンジョンの入り口からのやり直しは正直骨が折れる。

 セーブは宿屋でしかできないため、ダンジョンで倒れたら宿屋に強制送還は回避することができなかった。しかし「メガドライブミニ」では好きな場面でいつでもセーブすることが可能。ちょっとズルい気もするが、ボス戦前でセーブをしておけば何度負けてもボスからリトライできる。このやり方なら、効率よくゲームを進めることができる。

ダンジョン内はまさにトラップ地獄
攻略パターンが分かるまで、ボス戦はかなり難しい

 アクション性の部分では、今プレイしてもとても面白く古さを感じさせない作りだが、RPGとしての側面から見ると時代を感じさせる内容であった。

 ゲーム序盤のダンジョンでは、オカリナを演奏して扉を開かなければならない場面があるのだが、演奏はもちろん手動で、ミスなく正しい順番でボタン入力しなければならない。しかも、扉によって入力するボタンは異なるので、町で1度教えてもらっただけでは記憶するのは不可能なレベル(個人差あり)。昔は当たり前にやっていたが、メモを取りながらゲームをするなんてまさに数十年振りだ。

パスワードの記録など、昔のRPGはメモは必須だった
演奏は手動入力。昨今のゲームだったらオートで演奏してくれるところ

 次に進む場所へのヒントが少なかったり、ノーヒントで隠し扉を見つけなければならないなど、レトロRPGならではの難しさを体験することができた。

 本作が特別難しい訳ではなく、90年代のゲームはこの手のレベルのものはザラにあった。近年の作品と比べるとクリアまでの道はかなり険しいが、ゲームとしてのクオリティはとても高く面白いので、興味が湧いた人は「ワンダーボーイV モンスターワールドIII」に是非挑戦してもらいたい。