【特集】

【メガドラミニW AE収録タイトルレビュー】「ヴァーミリオン」

AM2研開発のRPG! 荒削りながらも独特の魅力ある作品

1989年12月16日発売

 「ヴァーミリオン」は「アウトラン」などの体感ゲームや、「バーチャファイター」シリーズを手がけるAM2研が手がけたRPGである。アーケードゲームでヒット作を飛ばしていたAM2研のRPGということで、当時かなり話題を集めた。

 一方、筆者は今回触るのが初めてである。現在の感覚で触ると冒険のスタート時に装備や持ち物が揃ってなかったり、ヒントの出し方が足りなかったり、いきなりキツイバランスだったり、RPGの方法論が“未発達”だと感じるところがある。「メガドライブの初期の時代はまだRPGそのものが少なく、方法論も固まってなかったな」と当時を思い出させるバランスだ。そのちょっとしたきつさをプレイして乗り越えていくことで、スタッフのこだわりやゲームで表現したいものが見えてくる。

「ヴァーミリオン」はフィールドが3DマップのRPG。AM2研が手がけたゲームとして発売当時話題を集めた
滅びた国の遺児が主人公となる

 本作はある王国の遺児が己の運命に直面していく物語。街は見下ろし型、フィールドは画面左側が3Dグラフィックスで表現され、右側が2Dマップ。2Dマップは地図を持ってないと自分の周囲しか表示されず風景のパターンも少ないため非常に迷いやすい。オートマップ機能もなく、歩いても見える場所はほんの少しな上最序盤は敵がものすごく強い上エンカウント率も高い。

 実はイベントの後に丹念に街の人間に話しかけると「地図」がもらえてフィールドでの行動範囲がしっかり見えてくる。強い敵はきちんと逃げ、レベルアップすると自キャラが格段に強くなって逆襲できるので、焦らず進むことで道が開ける。ダンジョン内では消費アイテムの「ろうそく」や「ランタン」がないと周りが見えなくなるなど独特のこだわりが面白い。

 スタート時の所持金が全然なかったり、父の遺言で「洞窟に行け」といわれるのに地図も何もなかったりと、「RPGにおけるストーリーテリングと冒険の導線はどんなものか」といった、RPGの方法論が磨かれていない時代であることも感じるが、丁寧に進めることでサクサクと進められるようになるだろう。

街は2D、フィールドは3D、戦闘はアクションとなる

 実は「ヴァーミリオン」は“ネタゲーム”としてネットの話題を集めてた作品である。街の人々の会話のセンスが独特で、いくつかネタ的な会話もあり、その雰囲気が楽しい作品なのだ。この雰囲気はこの後の「レンタヒーロー」で大きく花開くこととなる。

 当時のゲーマーにとって、「AM2研」というワードは魔法のように強い磁力を持っていた。ユニークで革新的なゲームを作ってきた彼らが、RPGでどんなことをしようとしていたか? 現在のRPGでの方法論が洗練された価値観から見ると荒削りではあるが、「冒険」への独特のアプローチが感じられる作品である。

マップを入手すると右の2Dマップが表示されるように
ダンジョンはランタンやろうそくがないと真っ暗になってしまう。マップはダンジョンのどこかに隠されている
様々なモンスターが待ち受ける
ボスとの戦いは2D画面となる
街の人の会話は本作の大きな楽しみ