山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第127回

VRで身振り手振りにボイチャでチーム連携なオンラインFPS! PS VR「Firewall Zero Hour」がいい感じな話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

「VRで実現したら面白そうなもの」話をするとたいがい出てくるジャンルのひとつ、「VR空間でほかのプレーヤーと一緒に戦えるチームプレイのオンラインFPS」。これをついに実現した「Firewall Zero Hour」が面白いんですよ。

8月30日に発売になったPlayStation VR用タクティカルマルチプレーヤーFPS「Firewall Zero Hour」。こちらを先週末あたりからプレイしていたんですけど、正直ちょっと侮っていたというか、ノーマークだったというか。

想像していたよりもだいぶ、いい感じに楽しんでます。

「Firewall Zero Hour」は、PS VRと、PS VRシューティングコントローラーに対応したオンライン対戦型のFPS。オンライン対戦では4人対4人のチーム戦が楽しめるほか、4人チームで次々と攻め込んでくるCPUと戦う協力型のオンラインプレイも楽しめます。

メインと言える4人対4人のチーム対戦モードは、攻撃側、防衛側にわかれて戦うスタイルで、攻撃側はマップ内にアクセスポイントからファイアーウォールを解除し、どこかに置かれているPCのある場所を特定してそれをハッキングすることが目的。防衛側はそれを防ぐのが目的です。

やられたらリスポーンはなし(味方による蘇生は3回まであり)の、チームプレイ重視で慎重に戦っていく、コミュニケーションがとても重要になるタイプのルール。

4人のチームでいくつかルートが広がっているマップ内で攻防することになるので、ツーマンセルずつに別れたり、または全員固まっていくかなどの意思の疎通が大事ですし、なによりクリアリング(安全確保、確認)意識とそれを伝えるのが大切。

PS VRにはマイクがもともと搭載されていますので、プレーヤーはみなそのままボイスチャットでやり取りできるのですが、それ以外にも「身振り手振り」ができるのも良い感じ。手に持っている「PS VRシューティングコントローラー」の向きや角度がそのままゲーム内の銃器に反映されるので、

ちょっと銃口を立ててクイックイッと振って「先へ進んでくれ」的なジェスチャーをしたり、

銃口で進むルートを指してみたり、

敵がいる気配を感じてストップさせたり。

さらにゲーム内の銃器を壁や柱などをぶつけてしまうと「ガチッ」っというような金属音が鳴って敵にその音を聞かれたりするのですが、あえて音を立てて敵を誘うのに使ってみたり。(そして音で誘いつつ見えづらいところに地雷をしかけておく)

こんな風に、雰囲気たっぷり、戦術的なテクニックとしても使える身振り手振りコミュニケーションができるんです。

公式ムービーからプレイ中のプレーヤーの様子。PS VRを装着し、手にはPS VRシューティングコントローラーを持ってのプレイ。DUALSHOCK4でもプレイ可能ですが、やはりシューティングコントローラーを使った方がより楽しめます

顔の向きや姿勢も反映されるので、「覗き込み」を自分の首や体でできるのもVRあるあるというか醍醐味ですね。曲がり角の向こうにちょっとだけ顔を出して確認したり、遮蔽物の上に顔を出してみたり。

もちろん、銃と手だけ通路に出して撃つようなブラインドショットもちゃんとできます。現実では、テレビの前でPS VRシューティングコントローラーを持った手をにゅーっと前へ伸ばして。

VR空間のマップもなかなかいい感じ。ホテルやオフィス、大きな屋敷や大使館などの屋内マップに、港や中東の街中のような屋外マップ、さらには射撃場や格納庫、倉庫といった軍事施設のマップもありますが、いずれのマップも広さや遮蔽物の量のバランスが良いですし、階層があって高低差もふんだんにあり、上を見上げたり下を覗きこんだりといった視点が自由に動かせるVRヘッドセットの良さが活きる作りをしています。

敵味方ともに、すっかりVR空間に入り込んでいるプレーヤーであり、現実での身振り手振り、そして首の動きをリアルに反映させているキャラクターであり、ボイスチャットでやり取りしていると、異様な生々しさを感じさせるものがありますし、その生々しさが、リスポーンなしルールの緊迫感をより高めるんですよ。

ちょいちょいっと銃でジェスチャーして、その場所に地雷を仕掛けてみたり、

敵の姿を遠めに見つけて味方に位置を知らせたり、

複数の敵と交戦して少しずつ距離を詰められている状況をスモークやフラッシュバンでなんとか切り抜けたり、

やられた仲間の声を聞き、蘇生しようと駆けつけたら待ち伏せていた敵にまんまとやられたり。

ちなみに、やられてしまった後はマップの各所に仕掛けられている監視カメラを切替えながらマップの様子が見られて、しかもまだ生きている仲間にボイスチャットが伝わる仕様なので、やられたあともナビゲーター役のようなプレイが可能。

「その角を曲がったところに敵が待ち伏せてるぞっ!」っとか、

「○○のあたりに敵が2人いるよ!」とか。

監視カメラを切り替えて敵を見つけることや、それを声でうまく説明して伝えられるかどうかもプレイのうちになっているという、うまい仕掛け。

使用するキャラクターも様々な人種や国籍のキャラクターがいて、それぞれに持っているスキルも異なる。また、プレイしていくことでアンロックされるキャラクターもいます。

同様に、銃も基本的なアサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、ハンドガンに性能の異なる種類が豊富にあり、カスタマイズパーツもアンロックしていくことでたくさん増えていきます。C4などの爆発物や地雷などのトラップ系のアイテムもいろいろとあって、単純な撃ち合いだけでなく、いろんな戦い方ができるのも魅力。

ゲームモードとルール自体はかなりシンプルですが、遊びの幅はしっかり持たせていて、工夫すればするほど味が出てくる良さがあります。

そういうプレイや楽しさを、VRのフル立体空間の中でできていることが、なにより新鮮で大きな魅力ですね。ゲームの世界に入り込んで特殊部隊ごっこみたいな、そういう妄想がついに現実のものになってきたなって思えますよ。

今回もプレイ動画を作って公開してありますので、そちらもぜひご覧頂ければと思います。(最後の方に一緒にプレイされていたチームの人の声が少し入っていますが)

べた褒めしきりだとさすがにアレなので、ちゃんと難点に感じたところも書くと、メニュー周りのちょっとわかりづらいところや翻訳の説明不足感などに感じる荒削りさがありますね。オンライン対戦の試合のテンポもちょっと遅くて間延びしちゃいがちなところももったいない感じです。

操作周りでは酔い対策の定番のひとつ、左右視点操作が角度切り替わり式(カクカクと向きが変わる方式で、それだと酔いづらいとされている)なのですが、VRに体が慣れた人向けにシームレス操作も選べるようにして欲しいなぁというところ。

※追記訂正:記事をご覧頂いた方から、オプション項目の「クイックターン」をオフにすると項目そのものが「スムースターン」に変わってシームレス視点操作にできるということを教えて頂きました。お詫びして訂正いたします。ありがとうございます。

あとは、ルールがリスポーンなしのチームプレイ重視タイプなので、そういうタイプのシュータータイトルはどれもそうですけど、人を選ぶところはありますよね。ソロでコミュニケーションとかせずに気軽に撃ち合いしたいっていう人には向かないルールです。一応CPU相手に4人協力プレイするモードもありますが、それ以外はソロでのトレーニング的なモードがあるぐらいで、あくまでメインはオンライン対戦。バラエティ感があまりないというところが難点でしょうか。

こうしたところが気になるところだったり、人を選びそうなところなわけですが、逆に言うと一点突破型な魅力を持っているというか、このシンプルなルールと、コミュニケーション重視のチームプレイの醍醐味にガチッとハマれる人なら、強烈に楽しいゲームになっています。

僕も久々にプレイしていて熱中するというか、思わず声が出るぐらいにのめり込んじゃう感じ。実際、最初はボイスチャットもせずに無言でプレイしている人も、試合が佳境に入ってくると自然に声で情報を伝えるようになっていたりするぐらいです。

緊張感あふれるゲームルールにVRの没入感がクロスして、負けたときに悔しがり、勝ったときにグッドゲームとたたえ合い、その繰り返しを時間が許す限り続けてしまう。

シュータージャンルや対戦ものが苦手ではないという人でPS VRをお持ちの人には、ぜひオススメしたいところ。うまくハマっていくと、遊びこむほどに楽しさがにじみ出てくるいわゆるスルメ的な、長く遊べるタイトルになってくれるのではと思いますよ。

……あなたも最後の1人になり、やられてしまった仲間の期待を背負っての緊迫感バリバリのプレイを味わってみませんか?そこで勝てたときの気持ち良さはなかなかのものですよ。

今週にはPS VR対応の「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS」も発売されますし、ちょっと久々にPS VRの話題タイトルが続く感じですねー。そちらも楽しみ。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。