【特別企画】

「高田馬場ゲーセンミカド」池田稔店長と、アストロシティに賭けた青春、思い出をとことんまで語り尽くす!

今なお思い出も情熱も尽きることがない、アストロシティとセガのアーケードゲーム

――これだけ長い間、アストロシティのような古い筐体や昔のビデオゲームが、多くのプレーヤーの皆さんに愛され続ける理由はどこにあると思われますか?

池田氏:やはり、先ほどもお話したように大型体感筐体を使った豪快なゲームがある一方で、すごく細かいゲームが多いことでしょうね。「ゲイングランド」や「クラックダウン」しかり、それから「エイリアンシンドローム」とかもそうですよね。

 「ゴールデンアックス」や「デスアダーの復讐」みたいな、セガさんのベルトスクロールアクションゲームもすごく良くできていますよね。特に、敵キャラの動き方のアルゴリズムが素晴らしいんですよ。例えば、敵の種類によっては必ず主人公を背後に回り込むように動いたりして、徐々に主人公をみんなで囲むようにするとか、主人公の位置から離れているとダッシュで接近する敵もいたりするので、遊んでいると状況によって毎回違った動きを求められるように感じられるんです。

 「コラムスII」のほかにも、「アレックスキッド with ステラ ザ・ロストスターズ」や「ワンダーボーイ」も、「何でこんなに難しいの?」って思うぐらい、もうとにかくムズい(笑)。そんな振り切ってしまったピーキーさと繊細さが同居しているところが、セガさんのゲームの面白さであり、すごいところでなのしょう。だからこそ、みんなが今でもずっと印象に残っているんだと思います。

――池田さんはバンド活動もされていますので、セガのゲームミュージックも当然お好きではないかと思います。今回の収録タイトルのなかで、特にお気に入りの曲は何かありますか?

池田氏:やっぱり、Hiro師匠(川口博史氏)作曲の「ファンタジーゾーン」ですね。あとはファンキーK.H.(林克洋氏)さん作曲の「カルテット」のBGMも大好きで、当時はレコードでサントラを買いましたし、今聴いても本当にカッコイイなと思います。それから、「ソニックブーム」のBGMもファンキーK.H.さんが作曲されたのですが、アストロシティミニで初めて家庭用に移植され、また聴けるようになったのも個人的にはうれしかったです。

――このタイミングでお話をするのは時期尚早かもしれませんが、もしアストロシティミニがたくさん売れて、セガトイズでまた続編のミニハードを発売することになった場合は、どんなゲームを移植してほしいですか?

池田氏:そうですねえ……。あれも入れて、これも入れてと言い始めたら切りがなくなってしまいますが、「SDI」を移植していただけたらうれしいですね。曲もすごくカッコイイですし、ほかにも「SDI」みたいな特殊なコンパネ(※8)を使うゲームが、コンパネごと復刻させていろいろ移植されたら最高ですね。もしかしたら、「SDI」はマークIII版みたいにシフトボタンを押しながら自機を操作するやり方にすれば、できないことはないかもしれませんよ(笑)。

※8……特殊なコンパネ:アーケード版の「SDI」は、上部にショットボタンが付いたレバーで自機を、トラックボールで照準を操作する、本作独自のコンパネを使用していた。セガ・マークIII版ではパッドにトラックボールがないため、方向ボタンだけを動かすと照準が動き、1ボタンを押しながら方向ボタンを押すと自機が動き、2ボタンを押すとショットを発射するという操作方法にアレンジされた。

――もしミニハードの次回作を発売する場合は、どの筐体をミニ化するのがベストだと思われますか?

池田氏:やはりブラストシティでしょうね。「バーチャファイター3」や「バーチャファイター3tb」をはじめ、「ファイティングバイパーズ」とか「ラストブロンクス」など、セガさんの3D対戦格闘ゲームが全部まとめて遊べるようにしたら、人気が出るかもしれません。

 それから、ST-V基板(※9)で出たゲームも遊べるといいですね。「レイディアントシルバーガン」とか「蒼穹紅連隊」とか。あるいは、もし「バーチャファイター2」をメインに据えるのであれば、NEWアストロシティミニにしたほうが多分いいのではないかと思います。

※9……ST-V:セガサターンとほぼ同じ性能を持つシステム基板。「ダイナマイト刑事」「ぷよぷよSUN」などのゲームのほか、「プリント倶楽部2」にも使用された。

先月オープンしたばかりのミカド3号店、ゲーセンミカド×ナツゲーミュージアム in 白鳥会館では、なんと「カルテット」の筐体が稼働中だ(※「カルテット」の写真はミカドの公式サイトより引用)

――今後、ミカドではアストロシティミニ、もしくは収録タイトルを使った対戦大会などを実施する予定はありますか?

池田氏:実機を使って「バーチャファイター」の大会をやってみようかなと考えているところです。この間、池袋サラ(※10)さんにお話をしたら、もし大会を開いたら参加すると仰っていただきました。ウチで大会を開催するとベテランだけでなく、今でも世界一強いんじゃないかと思うプレーヤーとか、生まれて初めて遊んだゲームがセガサターン版の「バーチャファイター」だったという若いプレーヤーにも来ていただけるんですよ。

 皆さんもアストロシティミニを買ったら、自宅で練習をしてから、本物のアストロシティでゲームが動いているミカドの大会に、ぜひ参加していただけたらうれしいです。実機ではなくて、アストロシティミニを使った「バーチャファイター」の大会もできるかどうかも、これから検討してみます。

※10……池袋サラ:元セガ公認の「バーチャファイター」鉄人プレーヤーの1人で、池袋GIGOを拠点にしていたのが名前の由来。「LIVE UFO バーチャファイタートーナメント」で優勝して一躍有名になった。

――大会でアストロシティミニを使う場合は、最初にジャンケンして勝ったほうがアーケードスティックを使うか、それとも本機に付いている小さなレバーとボタンを使うのかを選べるようにしたら、意外と盛り上がるかもしれませんね。

池田氏:それも面白そうですね(笑)。それからミカドでは、今も「バーチャファイター3tb」を置いていますけど、これは私も大好きなゲームで、今までに一番お金を使ったゲームが、多分これだと思います。初代「バーチャファイター」も相当やりましたけどね。

――「バーチャファイター3tb」をそんなにやり込まれたんですか!?

池田氏:当時はプレイ単価が、「ストリートファイターII」よりも高かったんですよ。たいていのゲーセンでは、「バーチャファイター」は1プレイ100円なんですけど、「ストII」は50円の店も結構ありましたので。若い頃に、給料日に1日だけで10万円ぐらい使ったこともありますよ、対戦で負けまくったので(苦笑)……。

――ちなみに、池田さんは「バーチャファイター」シリーズではどのキャラクターがお好きですか?

池田氏:ジャッキーです。あとはプロレスも好きなので、ウルフもよく使っていました。「バーチャファイター3tb」ではジャッキー、ジャッキー、ウルフみたいな組み合わせでよく遊んでいました。

――1990年代の対戦格闘ゲームブーム期には、池田さんがお勤めのゲーセンでも対戦大会などの集客イベントを何度も開いていたと思います。当時、特に印象深かった思い出は何かありますか?

池田氏:だいたい1997年前後までの時代は、アーケードゲームが一番の高スペック、高性能でしたよね? つまり、一番すごい最新のゲームを遊びたかったら、ゲーミングPCを買うんじゃなくてゲーセンに行かなければいけない時代でした。ですから、「バーチャファイター」でも「ストII」でも、あるいはSNKさんのネオジオ系のタイトルでも、大会を開くとマニアだけではなくて、普通の人も結構参加してくれたんです。

 何せ当時は、プレーヤー人口がすごく多かったですから。普通の学生から、「お前、普段何してんだ?」というちょっと怪しい人まで(笑)、もういろいろな人が参加していました。今のミカドでは、大きな大会を開催した場合は、多くても50人ぐらい集まればいいよねという感覚ですが、当時は大会を開くと毎回50人ぐらい、多いときには100人とか普通に参加していたので、もう多過ぎて仕事にならないぐらい、すごい人数が集まる時代でした。

――当時はビデオゲーム中心の狭いお店だと、大会を開催して人がたくさん集まったときは、ほかのゲームが遊べなくなるほど混雑しちゃうんですよね。

池田氏:そうそう。地下のゲーセンだと、空気があまりにも薄くなって、タバコを吸いたくなってもライターが着火しないから吸えなくなっちゃう(笑)。あの頃の熱気、熱狂は、やっぱり我々の世代にとっては忘れられないですよね。だから、今でもこんな仕事をしてるんですけど。

――あ、私もそうです……。

池田氏:やっぱりそうなりますね。

(一同爆笑)

――本日はありがとうございました。