【特別企画】

「高田馬場ゲーセンミカド」池田稔店長と、アストロシティに賭けた青春、思い出をとことんまで語り尽くす!

ミカドのインカム第1位に輝いた意外なタイトルとは?

――今度は基板についてお尋ねします。アストロシティミニに収録されたタイトルのなかで、例えばプレミア価格が付いていたり、あるいは流通量が少ないなどの理由で、特に入手が難しかった基板は何かありますか?

池田氏:「フリッキー」や「忍者プリンセス」、「青春スキャンダル」に使われているSystem1基板が、壊れやすいという理由もあって手に入れるのが難しかった印象があります。その後に出た、「ファンタジーゾーン」や「獣王記」に使われたSystem16系の基板は、名作が本当に多いですよね。例えば「ゴールデンアックス」とかは、いまだに店のインカム(売上)がすごくいいんですよ。なので、ウチで一番多く持っている基板は、おそらくSystem16系ではないかと思います。

――では、System16の後に出たSystem18は、どんな印象をお持ちですか?

池田氏:「シャドーダンサー」や「エイリアンストーム」に使われた基板ですね。実は、System18はとても貴重な基板で、なぜかと言いますとセガさんの中で最初にJAMMA規格に対応させたシステム基板だからなんです。ほとんどの基板は、セガさんオリジナルの特殊なハーネスを使うんですけど。

――System24の基板も、INHさんではいろいろとお持ちですよね?

池田氏:ええ。System24はちょっと特殊な基板で、フロッピーディスクとかを使うこともあってすごくセンシティブなんです。例えば、もしフロッピーディスクドライブが壊れたら、今ではもう買えないですよね? ですから、故障が発生したときのリスクが高いので、稼働させるのは正直に言うと非常に怖いです。でも「ゲイングランド」や「クラックダウン」などは、今でもすごく人気があってインカムもいいんですよ。

 今となっては、きちんと動くSystem24の基板はとても珍しいと思います。そんなこともあって、同じ基板を使った「クイズ宿題を忘れました」とか「所さんのまーまーじゃん!」とか、当時は安かった基板をみんなが買い集めて、「ゲイングランド」などに使っていた基板が壊れたときの予備としてストックするようになったという事情があるんです(笑)。System24は、今や絶滅の危機にある基板と言えるかもしれませんね。そんな貴重なゲームの基板をアストロシティミニで遊べるようにしたことは、とても素晴らしいなと思います。

――System24は、きめ細やかなドット絵が印象的な基板ではないかと思いますが、池田さんの目にはどのように映りましたか?

池田氏:System24は、元々スプライトがあまり大きく表示できない基板らしいんですよ。そういう理由もあって、「ゲイングランド」や「クラックダウン」、それからアストロシティミニでは遊べませんが「ホットロッド」みたいな、チマチマしたゲームが多いみたいです。

――「コラムス」や「ぷよぷよ」に使われた、C2 Boardについてはいかがですか?

池田氏:さっきも「ぷよぷよ」の基板のお話をしましたけど、「ぷよぷよ」とアストロシティの発売した時期が近かったので、セガさんから各オペレーターに「モニターに帯電防止剤を塗ってください」という連絡がFAXで送られてきたことがありました。今となっては、これもモニターがむき出しだったアストロシティならではの思い出話ですね。

 「コラムス」は、いまだに置いてるゲーセンが結構ありますよね。それから個人的には、「コラムスII」を収録してくれたのがメチャクチャうれしかったです。「II」のほうは、1人用のフラッシュコラムスがもう激ムズで、いまだに誰もクリアできない。もう令和の時代なのに「ムズい!」とか「クリアできネー!」とか、ミカド勢はまだそんなこと言って盛り上がってるんですよ(笑)。あと、実は「コラムスII」は対戦コラムスもかなり面白いんですよ。あんなルールをよく考えたなあと。

 アーケードゲームって、それこそ火傷をするぐらいアツくて難しいタイトルのほうが、実は長持ちしたりするんです。ヌルいものばかり作ってもしようがないと言いますか、「コラムスII」みたいにゲーマー向けに完全に振り切っちゃったほうが、いいと言えばいいんですよね。

――対戦コラムスも面白いですよね。もしかしたら、eスポーツで使用したら意外と盛り上がりそうです。

池田氏:そうそう。eスポーツで一度やってみたらいいかもしれません。

――アストロシティミニの収録タイトルに絞ると、ミカドで最もインカムが良いゲームはどれになりますか?

池田氏:もちろん「コラムスII」ですよ(笑)! 今でも「コラムスII」をメチャクチャ遊んでるミカド勢でもなかなかクリアできないからこそ、みんなでアツくなっているわけですが、あまりにも難しいので「『コラムスII』はパズルゲーム界の『達人王』(※7)だ」って呼んでます。そんな激ムズのゲームが、家庭用でずっと遊べるようになったのはいいですよね。ほかにも、「ファンタジーゾーン」はオープンしたときからずっとインカムが良いですし、今は池袋の店に置いてある「スペースハリアー」も長い間人気がありますね。

※7……「達人王」:1992年に東亜プランが開発、タイトーが発売した縦スクロールシューティングゲーム。1面あたりの長さが非常に長く、ボス以外にも強敵が随所に出現するので、1周全6面をクリアするのは至難の業だった。

トンデモなく難しいフラッシュコラムスと、白熱の対戦が楽しめる対戦コラムスの2種類が遊べる「コラムスII」

――「ラッドモビール」などに使用された、System32についてはいかがですか?

池田氏:この基板には日立製の特殊なICが載っているのですが、このICは時間が経つと電池切れを起こしてしまうので、System24と同様にこちらも結構センシティブですね。なので、もし電池が切れたら自分で電池交換をしながら動かすようにしています。「ラッドモビール」は、確か初めての移植になるかと思いますが、そういう意味でも貴重だと思います。セガサターンには、アレンジ版の「ゲイルレーサー」というソフトが発売されましたけど。

 それと、「ゴールデンアックス デスアダーの復讐」は、昔からインカムがすごく良かった印象があります。確か、私が昔働いていた店では、1997年ぐらいまでずっと稼働していた記憶がありますし、本当に面白かったですよね。

――そんなに長く稼働していたんですか!? つまりオペレーター目線で見ても、「デスアダーの復讐」はずっと稼ぐことができていた傑作なわけですね。

池田氏:そうですね。あの時代のビデオゲームは、毎月たくさんの新作タイトルが発売されていましたよね? おそらく、セガさん以外のメーカーも全部含めると、当時は毎月10タイトル以上の新作が出ていて、店に置いてから半年持ったらまあいいほうだったかな、という感覚でした。ですから、「デスアダーの復讐」は本当にすごい。あれだけ長く稼働できたのは、多分グラフィックがほかの新作に比べても全然見劣りしない、今見てもカッコイイところにも理由があると思います。

 「デスアダーの復讐」以外にも、「ダークエッジ」や「アラビアンファイト」とか、それからアストロシティミニにはありませんが「ドラゴンボールZ V.R.V.S」とか、System32のゲームはピーキーなゲームがとても多いですよね。

――「バーチャファイター」に使用されたModel 1基板は、やはりポリゴンが使えるようになったインパクトは大きかったですよね。

池田氏:ええ。それと、基板のサイズがとにかくデカい(笑)! 「バーチャファイター」の基板は、アストロシティ2の筐体とセットで販売されていたのですが、アストロシティ2はシールドケースに入った大きな基板を背面のほうに貼り付けて動かすという、特殊な筐体だったんです。