【特別企画】
【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「忍者プリンセス」
ドット絵の“姫様”に萌えたあの頃
2020年11月25日 00:00
「忍者プリンセス」は1985年に稼働を開始したアクションゲーム。主人公の「くるみプリンセス」を操作し、寒天城にいる「玉露左衛門」を倒すのが目的だ。家庭用ゲーム機ではMSXやセガ・マークIIIなどにも移植されている。
本作の主人公、くるみプリンセスは「普段は着物に身を包んだ可憐なお姫様。でも姫様は実は忍者だったのです」みたいなドラマのオープニングみたいなナレーションが入りそうな感じで、ゲーム開始時に姫様から忍者に変身するビジュアルが見られる。忍者姿の姫様はミニスカート姿でとてもセクシー。とは言うものの、この時代のドット絵キャラはなんというかキャラに使われる色にも制限があるし、ドット数も決して多くはないので、ゲーム内のビジュアルだけだと、一見すると黄色い不気味なキャラにも見える。
だが、このドット絵のくるみプリンセスが、なんというか萌えるのだ。アーケード版のインストカードなどではかわいくイラスト化されたくるみプリンセスが拝見できるのだがそちらは無視して、ドット絵をベースに自分の脳内で想像により補われたかわいさとセクシーさをあわせ持つ“姫様”が何とも愛おしいのである。
昔のゲームにはこうしたシンプルなドット絵ながら想像力による補完の成果でかわいさ無限大のキャラクターが非常に多く、筆者はこうしたゲームが大好きだ。ただ、その一方で忍者プリンセスが稼働しているお店が筆者の近所に少なかった事もあり、実際には出先などで偶然出会って1コインプレイした事がある程度の記憶しか残っておらず、是非ガッツリとオリジナル版をプレイしまくってみたかった。
そのため、今回「アストロシティミニ」収録と聞いて狂喜乱舞したタイトルの1本である「忍者プリンセス」。どんなゲームかご紹介していこう。
本作は全16ステージで構成される。ステージ開始時に寒天城までの道のりを示した地図と自分の現在位置が示されるので、現在のステージがステージ全体の中のどの辺りかというのがわかる仕組みだ。
通常は上下に自由にスクロールできる縦長のステージ内を移動して、制限時間内に最下部から最上部まで進み、最上部で待ち構えるボスを倒す事でクリアとなる。道中には首領の大蒜(にんにく)率いる、忍者軍団が待ち構える。忍者軍団の攻撃は多彩で、ステージ1から多種多様な色合いの服を着て、攻撃方法も多様な忍者たちが出現し、姫様を迎え撃つ。
ステージごとに仕掛けが色々と用意されており、例えばステージ3では、常に岩が転がり落ちてくる危険な山の中腹を、ひたすら斜めに昇っていくのだが、強制スクロールにより、常に画面全体が斜めに動いており、転がる岩をかわしながら、さらに忍者たちとも戦う必要があるなど、通常ステージとはテイストがかなり異なっており、苦戦必至だ。
うちの姫様の攻撃手段は手裏剣を投げる事だ。8方向に移動しながら、その移動方向に向かって手裏剣を投げる通常ショットと、どこを向いていても常に上に向かって手裏剣を投げられる上部固定ショットが2つのボタンそれぞれに割り当てられている。
通常時の手裏剣はサイズが小さいため、敵に当たりにくいが、敵が落とす巻物をゲットすることで、貫通力もある巨大手裏剣が使える。巨大手裏剣は巻物を取ったステージにいる間だけしか使えないが、攻撃力が一気に上がるので、見かけたら入手必須だ。
巨大手裏剣を獲得すると、そのステージ内のBGMが忍者テイスト溢れるリズミカルで耳心地のいい音に変化するのも気持ちいい。
なぜ、上部固定ショットが用意されているのか。それは実際にプレイしてみるとわかるが、正直なところ上部固定ショットがなければ本作の難易度は格段に跳ね上がる。というのも、姫様が向いた方向に手裏剣を放つ通常ショットは、こちらが思っている以上に敵や敵弾に当たらないのだ。
昔のアーケードゲームだとコナミの「タイムパイロット」も同じような仕組みだったが、要するに主人公の向ける方向は8方向のため、隙間にいる敵には攻撃が当たらない。また敵の攻撃を避ける時に、敵とは逆の方向を向いてしまうと、敵とは反対の方向に手裏剣が飛ぶことになるので、想定していた敵が倒せなかったりと、向いた方向へのショットのシステムは慣れるのが非常に難しい。
そのため、どこを向いていてもショットの向きが常に上部になる上部固定ショットを使い、プリンセスのX軸を敵に合わせるようにしてショットを連射するスタイルを取り入れると、これだけでかなりの数の敵が撲滅できるので、上部固定ショットの採用は大変ありがたい。
通常ステージの場合、ひたすら上に向かって歩いていき、敵が出現したら上部固定ショットで敵を撃退。後ろから敵が迫ってきた場合などは、それをかわしながらこちらの位置をとにかく敵よりも下に移動して上部固定ショットをお見舞いしてやればいい。最初のうちはこの方法を駆使して敵と戦う事で、手裏剣の感覚が少しずつ見えてくるし、攻略もやりやすいのでおススメだ。
一方でこれを軸にしつつ、通常のショットも途中からは必要不可欠になってくる。というのも強制スクロールのステージでは岩や馬など他の障害物も多いため、どうしても下部への移動には限界が出てくる。また、敵は四方八方から出現して、取り囲むように姫様を狙ってくるので、上部固定ショットだけではどうしても限界があるからだ。しかし、通常ショットがある程度当てられるようになる事で、本作の攻略は格段に進めやすくなるので、この2ショットの使い分けをうまくできるようにするのが本作の攻略のポイントと言える。
また、もう1つ、消えボタンも用意されている。これはボタンを押すと僅かの間だが、姫様が姿を消す「消えの術」を使えるのだ。消えている間は如何なる敵の攻撃も無効になるという非常に強力な術で、しかも回数制限などは特になく、さすが姫様! これでクリアも楽勝? と思いきや、本作はそんなに甘くはない。
消えている間は敵の攻撃を受けない代わりに、こちらからも一切の攻撃ができなくなる。しかも消えていられる時間はかなり短いため、連続使用で逃げる戦略はむしろ普通に戦うよりも難易度が高い。
一方でステージによってはこの消えの術が大いに役に立つ。例えば、ステージ8は強制横スクロールで画面が右から左へとゆるやかに動いているのだが、その中を馬がガンガンと駆けてくる。馬は上下移動する事はなく、常に左から右に直進していくのだが、馬に触れると即死のため、これをかわしながら、敵の忍者とも戦う必要がある。このような時、馬と接触する直前に消えの術を使う事で、危険な馬をかわすことができるのだ。
他にもステージ4のようにたくさんのワンコたちが群れを成して襲ってくるステージなども、全てのワンコが撃退できない場合などは消えの術でかわしながら戦うスタイルが有効なので、常に頭の片隅には消えの術の事を置いておくのがいいだろう。
本作に登場する敵の忍者たちの攻撃は非常に狡猾な上に、動きが非常に素早い。物陰に隠れていて、縦軸が合ったタイミングですごい勢いで飛び出してくる忍者やシンプルに手裏剣で攻撃してくる忍者など数も種類も豊富だ。なお、序盤の忍者が放つ手裏剣であれば、こちらの手裏剣で相殺できる。逆に言うと、こちらのショットが相殺される場合もあるので、敵を完全に倒すまで油断は禁物。巨大手裏剣なら敵の手裏剣を弾き飛ばした上で、さらに敵を倒す事もできる。
他にもこうした動きがすばやい敵への対策としては、斜め移動がおススメだ。この時代のゲームの中には斜めに入力した際に上下左右の移動と比べると移動速度が1.414倍ほど速くなる物が存在するのだが、本作はそれに該当する。
これには直角二等辺三角形の三平方の定理における辺の長さ、1:1:ルート2が関係するのだが、その説明はここでは割愛するとして、敵の移動速度はかなり速く、姫様の移動速度と同じか、それよりも速い敵が多い。だが斜め移動時のみ、こちらの移動速度が敵を上回るか、同じくらいの速度で移動できるようになるので、随所で活用して敵の忍者を返り討ちに合わせていこう。
また、もう1つ重要な要素として、本作では実は忍者など一部の敵について、接触するだけではミスにはならない。ただし、敵の攻撃を受けると一撃でやられてしまい、姫様はその場で泣き崩れてしまう。敵の攻撃は手裏剣などの飛び道具のほか、刀による近接攻撃がある。また、忍者以外の敵ではワンコの場合、普通に走っている時はミスにならないが、とびかかってくるモーションを取ると途端にミスになる。馬や岩については接触した瞬間、ミスになるなど、キャラクター毎に特徴があるので、ゲームをプレイし、ミスを繰り返しつつ覚えていく事になるだろう。
難易度という点で言えば、本作はかなり難しい。姫様は歩くのがあまり速くないため、多勢に襲われると、どうしても回避しきれずにやられてしまう。こうした敵のラッシュをショットと消えの術をタイミングよく駆使して、回避できた時の爽快感はなかなかだ。
そして、時代を感じるのはボスを倒した時に敵が倒れたり、爆発したりといった演出がなく、いきなりクリア画面が表示されるという逆にシンプルな演出だ。セガマークIII版やMSX版ではボスを撃退すると、そこで画面が切り替わりクリア画面が表示されるのだが、アーケード版ではその場でゲーム進行が停止してスコアカウントが始まる唐突感が逆に斬新で面白い。
「アストロシティミニ」ならではの楽しみ方としては、まずはステージのノーミスクリアを目指し、うまくクリアできればそこでセーブ。1機でもミスした場合はそこでデータをロードして再度同じステージに挑戦する方法だ。
敵の出現パターンはある程度決まっているので、ステージ全体の流れを把握しながら、姫様の操作感覚を体で覚えていくことで、最初のうちは全然当たらなかった通常ショットも当たるようになってくるし、消えの術の使いどころも見えてくる。ある程度敵の出現パターンが見えてきたら、ステージ途中、特に巻物取得のタイミングでセーブしておき、そこから後半戦を何度もプレイするというスタイルもアリだろう。
全16ステージをクリアするとエンディングが用意されており、簡単なメッセージが表示される。セーブ機能を駆使してゲームを攻略しつつ、最終的には1コインクリアを目指す修行の旅も面白そうだ。
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