【特別企画】

【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「SHINOBI 忍」

プレーヤーを熱くさせる、セガの元祖忍者アクションゲーム!!

導入年:1987年

基板:System16A/B

開発:セガ

 セガの忍者アクションゲーム「忍」シリーズは、2011年に発売された「Shinobi 3D」以降、新作が全くリリースされていない。個人的には「忍」シリーズを久しく見てないという感覚が全く無かったのだが、よく考えればそれもそのはず、「メガドライブミニ」、「ゲームギアミクロ」と近年コンパクトサイズのゲーム機が登場したが、そのいずれにも「忍」シリーズは欠かさずラインナップに含まれていたのだ。

 セガにとっては欠かせない存在である「忍」シリーズ。その原点である「SHINOBI 忍」も「アストロシティミニ」に収録されている。筆者はメガドライブの「ザ・スーパー忍」からシリーズに触れてきたので本作をプレイするのは今回が初である。シリーズファンとしていつかは遊びたいと思っていたので嬉しい限りだ。

 本作はステージクリア形式の横スクロールアクションゲーム。世界征服を企む犯罪シンジゲート「ZEED」にさらわれた子供の忍者たちを救うため、現代に生きる忍者「ジョー・ムサシ」がZEED壊滅を目指すといったストーリーだ。

 主人公ジョーのアクションは、遠距離攻撃の手裏剣と近接攻撃の体術、そして1ステージで1回だけ使用できる忍術が用意されている。それらを駆使して迫りくる敵を蹴散らしつつ、捕まっている子供忍者を救出していく。

メイン攻撃となる手裏剣
敵との距離が近いと自動で近接攻撃になる
忍術は「分身の術」、「稲妻の術」、「竜巻の術」の3種類がある

 特定の子供忍者を救出するとジョーの攻撃がパワーアップするという要素もある。体術だった近接攻撃は刀になり、手裏剣はなんと銃火器という型破りな武器に変化するのだ。火力も上がり、固い敵もサクッと倒せることができかなり爽快だ。

近接は忍者らしく刀を使うが、遠距離武器はまさかの銃

 「忍」シリーズといえば難易度の高いことでも有名だ。本作以降の作品はコンシューマ用ゲームということもありマイルドなライフ制を採用しているのだが、この「SHINOBI 忍」は1度敵の攻撃を受けたらミスとなるシビアなゲーム性となっている。ダメージ覚悟でゴリ押しで進むという雑なプレイが許されず、腕前と集中力が要求される。本作の“一撃たりとももらえない”という緊張感がプレイを熱くさせるのだ。

 肩慣らしともいえる最初のステージは緩やかなのだが、ステージ2に突入した途端に敵の猛攻は凄まじく、油断をしているとすぐに討ち取られてしまう。不意を突いて現れる初見殺しの敵なども多くかなりの難しさなのだが、本作は敵の出現パターンなどにランダム要素が一切無いので、ステージ構成や敵の行動パターンなどを覚えてしまえば誰でもクリアできる絶妙なゲームバランスとなっている。当時のプレーヤーはプレイを重ねて上達していく感覚を味わいながら、このゲームに夢中になったのだろう。

ステージが進むにつれて、敵の出現する量が尋常じゃない
画面全体範囲の忍術の使いどころが重要になる

 アクションゲームとしての面白さはもちろんだが、本作独特の世界観もデタラメ感全開でとても良い味を出している。敵味方含めて登場キャラクターのほとんどが忍者という設定なのだが、ザコ敵を見ていくと「突忍モヒ」はどこかで見たような世紀末モヒカン男、「砲忍バズーカ」はゴリゴリな軍人という風貌で、もはや名前に“忍”さえ付いていれば忍者と言い切る力技はさすがである。

モヒカンも軍人も、どちらも忍という強引さ
この敵にいたっては、もはや人外

 ボスキャラクターも胡散臭いやつ揃いなのだが、中でもステージ3のボス「マンダラ」は忍者と全く関係のない“金の仏像が積み重なってタワーになっている”というとんでもないビジュアルで、一目見た瞬間衝撃を受けた。そしてこのボスの行動は“こちらにひたすら迫ってきて電流が流れる壁まで押し込んでくる”という見た目に反して超地味な戦い方をしてくる。1度見たら一生忘れないであろう、このインパクト特大のキャラを生み出したセガのセンスに脱帽である。

仏像が迫って来るというシュールなボス戦
マンダラ戦は連打あるのみ。ガチの連打で応戦しないと普通に勝てない強敵だ

 今回「SHINOBI 忍」を遊び倒したが、ゲームセンターでプレイしていたらどれだけの100円玉が消えていったか分からないほど熱中してしまった。本作の簡単にはクリアさせてくれない挑戦的な難易度がプレーヤーをゲームへ引き込んでいくのだ。

 アストロシティミニならコンティニューは無限にできるので、どんな難しいステージでもいずれは活路が開けてくるのも遊び続けるモチベーションに大きく繋がる。最終ステージだけはコンティニューができないという落とし穴もあるが、そこはセーブ機能を上手く使って最後まで遊んでもらいたい。