【特別企画】
【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「獣王記」
マッチョが! 獣が! 魔人をぶちのめす異色のアクションゲーム!!
2020年12月2日 00:00
1990年にフルカラーの携帯ゲーム機、1999年にインターネット機能を取り入れたコンソール機など、時代の先を行く前衛的なスタイルがセガの持ち味であり、ゲームファンが心酔する魅力である。
そんなセガが1988年に異色の世界観を放つアクションゲームをアーケードでリリースする。その作品は、時代の先を行き過ぎて2020年でもまだなお時代がついて来られていない名作「獣王記」。子供の頃にメガドライブ版を遊び倒した筆者にとって思い入れ深い作品だ。
ギリシャ神話のような世界観で、魔人に連れ去られた女神アテナを救い出すため、主神ゼウスの命を受けた獣戦士が戦いに身を投じるというストーリー。物語の部分だけ見ると普通にありそうな設定だと思われるが、主人公の獣戦士が本作ならではの異彩を放っている。
獣戦士という名前から荒々しい屈強な戦士を彷彿とさせるが、封印から目覚めた獣戦士の姿はお世辞にも強そうと思える見た目ではなく、限りなく普通の人(のような風貌)である。しかしステージ中に出現するアイテム「スピリットボール」を取ることで、「パワーアップ!」の音声と共に獣戦士は“マッチョになる”。マッチョになった主人公がさらにスピリットボール手に入れると今度は、“筋骨隆々のさらなるマッチョになる”のだ。パワーアップのたびに主人公がムキムキになっていくのが斬新かつシュールな演出である。
二段階のマッスル化を経て、3つ目のスピリットボールでついに獣の姿に変身することができる。ステージごとに変身する姿が異なり、「ウェアウルフ」、「ウェアドラゴン」、「ウェアベア」、「ウェアタイガー」の4種類が用意されている。「獣王記」最大の見所といっても過言ではない、獣へ変身する演出がとにかくカッコよく、製作の力の入れ具合がヒシヒシ伝わってくる。
ゲームの内容にも触れていこう。本作は半強制スクロールのアクションゲーム。パンチとキックのアクションを駆使してモンスターを蹴散らしていくのだ。殴りや蹴りで敵が砕け散っていく表現はとても爽快だ。
ステージのラストにはボスが待っているのだが、ボス戦に突入するには条件が存在する。道中でスピリットボールを取り逃して主人公が獣に変身していない状態だとボスまで辿り着いても去って行ってしまい、ステージをもう1周させられるのだ。ステージを3周して変身できなかった場合は人間状態のまま強制的にボス戦になる。ステージも2周、3周と進むたびに難易度が上っていくので、可能な限り1周目で変身してさっさとボスに挑みたいところだ。ちなみに、相当ミスをしない限り人間の状態でボス戦に行くことはほぼないが、ボスはこちらが変身をしているのを想定した強さになっているので人間状態でボスと戦うとなった場合はかなり厳しい状況である。
このゲームは獣に変身をすると人間状態とは比べ物にならないくらい攻撃アクションが強化される。パンチは強力な飛び道具になり、キックは突進技へとパワーアップ。こうなるとほぼ敵なしの状態になり、ボスでさえも軽く捻ることができてしまう。変身前はザコ敵にも苦戦させられるが、その分変身したときの無敵感は痛快の一言。獣の強さを存分に味わえるゲームバランスがかなり熱いのだ。
独特な世界観を放つ「獣王記」。今見てもやはり主人公がマッチョになる様は異様で、さらに登場する敵キャラも不気味という、マニア心をくすぐる要素が凝縮されていた。変身する獣ごとにアクションが全く異なるのも面白く、最後まで変身のワクワク感を噛みしめながら遊ぶことができた。
ゲームの難易度は高めで人間状態では我慢を強いられるが、獣になって溜めたフラストレーションを爆発させられるのも最高である。上手くプレイすれば十数分で全ステージクリアができるというサクッと遊べるボリューム感も今の時代に合っている。
アーケード版では、メガドライブ版にはない衝撃的なエンディングも待っているので、エンディングを見たことのない人はもちろん、過去に遊んだ人も当時を思い出してプレイしてもらいたい。
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