【特別企画】
【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「ラッドモビール」
ソニックが躍る! ド派手なクラッシュ! 疑似3Dレースゲームの完成系
2020年12月11日 00:00
「ラッドモビール」は1991年発売の体感レースゲーム。当時は車両を模した専用筐体上で稼働しており、ハンドル操作で筐体が左右に傾く仕様だった。
実を言うと本作のプレイ記憶は非常に曖昧だ。と言うのも高校時代の友人たちと共に通っていたお店でガンガンやりこんだのは実は「パワードリフト」の方だった。当時、4人対戦バージョンが導入されていたお店が近所にあり、これをみんなで遊ぶのがとても楽しかったのが想い出として残っている。「ラッドモビール」をプレイしたのはパワードリフトから入れ替わった後だった事もあり、何度かはプレイしたが、あまり多くプレイした記憶がないのである。
そんな数少ないプレイ記憶の中でもとりわけ印象的だったのはやはり画面上部でブラブラと揺れ動くソニックのマスコットだ。ゲームその物に特に影響はない筈なのだが、車両の動きに合わせてブラブラと揺れ動くソニックのマスコットは、不思議なリアルさを演出しており、本作にとって象徴とも言えるビジュアルのアクセントとして今でも記憶に残っている。
また、これまで自身の車両が表示されている3人称視点が多かった同社の体感ゲームシリーズにおいて、本作では常にドライバー目線の1人称視点になった点、ライトやワイパーと言った普通の自動車に装備されている機能が搭載されていたのも非常に斬新だったし、こうした不思議なリアリティを感じつつも、スピード感溢れるレースゲームとしての印象は、当時から非常に色濃く残っている。
そして、今回の「アストロシティミニ」への収録が、本作にとって初の移植ということで、久しぶりにガッツリ遊んでみた。
豊富に用意されたペナルティの数々! タイム設定はかなりシビア
本作はいわゆる「ハングオン」や「アウトラン」、そして「パワードリフト」の系譜となる疑似3Dレースゲームの後継とも言えるタイトルだ。当時プレイした時にも感じた事だが、スプライトを駆使して道路や背景を描画する仕組みにしてはやたらと滑らかにコースが流れると感じていた。実際に久しぶりに見直してみても、道路の流れは非常にスムーズなので、走っていてとても強い爽快感が味わえる。
特にパワードリフトでも見られた道路のバンクの動きは非常に滑らかで、今回よく見てみると仕組みは同じながらパワードリフトよりもスムーズに動いているように感じられた。一方でその難易度はかなり激しく、何度も繰り返しコースを走って記憶していかないとクリアタイムはなかなか出せない。
また、ペナルティになる要素も多く、高架や崖の上を走るコースではコースを踏み外して落下してしまうと、かなりのタイムロスになるし、そもそも落下の演出がめちゃくちゃ怖い。急に足場が無くなってスッと落ちるような感覚はかなりのリアリティだ。ただし落下後はなぜか落ちる前の場所に落下してきて車両がクラッシュするという不思議な現象が発生する。
また、対向車と衝突しても、車両がひしゃげてクラッシュし、しばらく動けなくなったり、ステージによっては警察に捕まるとその場でしばらくお説教される演出も用意されているなど、バラエティ豊富なペナルティが印象的だ。
全20ステージ構成で、アメリカを横断するコースとなっており、ロサンゼルスやラスベガスなどステージ毎にアメリカの有名な地名が表示されるのも続きをプレイする原動力になる。
また、ステージ毎に時間帯や天気などが異なり、夜間などの遅い時間帯の場合、ライトを点灯して走行したり、雨が降るステージではワイパーのスイッチを入れたりなど、仕掛けも色々盛り込まれており面白い。このような場合に、暗い場所でライトをオフのまま走行したり、豪雨の中でもワイパーを使わずに走行する事は可能だが、逆に晴れた日にワイパーを付けたり、昼間からライトを点灯したりなど、常時使えるわけではなく、あくまでも臨場感を増すための演出の1つになっている。ただしクラッシュや接触などで車が停止した時に、ライトやワイパーは1度オフになってしまうため、走行再開時はこれらも合わせて再起動する必要がある。
本作の攻略のポイントはコースを把握する以外では、とにかく対向車や並走車との接触、また高い位置を走るコースでは落下に注意、警察が来た時はとにかく追いつかれないようにするなど、とにかくペナルティを喰らわないよう走ること、その1点に尽きる。ぶっちゃけ、対向車に衝突してクラッシュするくらいなら、道路外に逃げて速度が減少した方がマシなレベルだ。
本作は1度でもクラッシュなどのペナルティを喰らうと、よっぽどそこまでのタイムにゆとりがない限り、取り返すのがかなり困難になるほどシビアなタイム設定となっており、今回プレイした感触だと、1つのミスも命取りだ。
また、ステージ12の序盤において、道路を塞ぐように横転したトラックを回避するために線路に回避して貨物列車に追われるトラップや、ステージ2での赤信号の交差点に飛び込むようなトラップなど、ピンポイントのトラップも用意されており、飽きのこない作りになっているのも冷や汗物だが面白い。
そして、本作において全ステージをクリアしてとりあえずエンディングを確認したいという目的でプレイするなら中断セーブよりもコインを大量投入したコンティニュープレイをおススメしたい。というのも本作の難易度は非常に高いが、コンティニューを使用する事でその難易度がぐっと下がるからだ。
ステージ途中でタイムが足らなくなるとゲームオーバーだが、コンティニューするとステージの最初からやり直しとなる。この時、タイムはかなり余裕を持った状態でスタートするように設定されるため、ギリギリのタイムでクリアした状態で中断セーブして繰り返しトライするよりも余裕をもってプレイできるようになる。中断セーブを何度繰り返してもタイムは増えないが、苦手なコースなどで何度も繰り返しプレイする場合、コンティニューであればその都度タイムが増えていくため、苦手な人であってもクリアできるくらいの難易度になっていく。
もちろん、腕を磨いて1コインクリアを目指したり、同じコースを何度もリトライしてコースを勉強したい場合の中断セーブはかなり有効に活用できる。苦手なコースで煮詰まる時は、コースの全容を把握するまでは中断セーブで何度もリトライし、ある程度把握できたところで、あとはコンティニューを繰り返してプレイする。これを繰り返せば、比較的スムーズに全ステージがクリアできるようになる。
今回、筆者も最初のうちはコンティニューをせず、何度も中断セーブを繰り返してコース状況を把握したり、ベストラインを模索しながらステージを進めていたが、途中からどう頑張っても1秒か2秒ほどタイムが足らず、諦めかけたところでコンティニューを試してみたところ、一気に楽にクリアできた。その後はちょっと複雑なコースの時のみ中断セーブを使用し、それ以外のところではコンティニューを駆使する事で、無事にエンディングを迎えられた。
本作がゲームセンターに置かれていた時代、まだ高校生の筆者にはコインを積み上げてプレイするだけの金銭的余裕はなかったことを考えると、当時やりたくてもやれなかったクレジット入れ放題で遊べる夢がかなう「アストロシティミニ」はマストバイなミニゲーム機と言える。
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