【特別企画】
【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「ゴールデンアックス」
剣と魔法と筋肉がぶつかり合う、ハイ・ファンタジーアクションの原点!
2020年12月4日 00:00
「ゴールデンアックス」は、セガのシステム基板「System16B」にて1989年にリリースされたアクションゲームだ。奥行きのあるスクロールステージで、耐久力の概念がある敵を連続攻撃で倒していく「ベルトスクロールアクション」のシステムをいち早く取り入れたファンタジーアクションとして人気を集め、その後シリーズ化もされている。リリースから29年が経過した2018年には、誰も予想していなかった舞台化が実現し、ファンを驚かせたことも記憶に新しい。
ベルトスクロールアクションといえば、カプコンが1989年にリリースした「ファイナルファイト」が特に有名だが、この「ゴールデンアックス」はそれよりも数カ月早い時期にリリースされていて、以降のアーケード市場における同ジャンルのトレンド化に一役買ったタイトルといえる。
剣と魔法が存在し、人間だけではないドワーフや巨人、モンスター達が登場するファンタジックな世界観は、同ジャンルの小説や映画を思わせるが、実は当時家庭用ゲームで流行っていたRPGからインスパイアされたものだと、セガのディレクター内田誠氏は後に語っている。内田氏はエニックス(当時)の「ドラゴンクエスト」を意識し、本作に自分なりの「ドラクエ」のテイストを組み込んでみたが、上司には今一つ理解されなかったとのこと。本作の前に手がけた「獣王記」が作品として納得のいく完成度とならなかったため、その反省を本作に生かし、キャラクター選択や派手な魔法など、プレーヤーを楽しませる要素をふんだんに盛り込んだそうだ(「SEGA AGES 2500 ゴールデンアックス」付録リーフレットより)。当時のアーケードタイトルとしては珍しくスコアが存在しないのも、RPG的な意味合いが強いからなのかもしれない。
神が作りし斧「ゴールデンアックス」を奪い、「ファイアーウッド王国」を滅ぼした悪しき巨人「デス=アダー」に復讐を誓う3人が主人公として登場し、ゲームスタート時はそのいずれかを選んでプレイすることとなる。通常攻撃のコンビネーション(攻撃ボタン連打。通常時と密着時で手数が異なる)やジャンプ斬り(ジャンプして攻撃ボタン)、ダッシュ攻撃(レバーを左右どちらかに素早く2回入れてダッシュしながら攻撃ボタン)、回転斬り(攻撃ボタンとジャンプボタン同時押し。後方への攻撃)、ハイジャンプ斬り(ダッシュしながらジャンプ後に攻撃ボタン)などがあり、操作は共通しているが、モーションや判定などはキャラクターごとに異なっている。
そして本作の大きな見どころでもある「魔法」は、ゲーム中に登場する「シーフ」から奪える「魔法の壺」を取り、魔法ボタンで使用することで、画面内の全ての敵にダメージを与えられる。魔法にはレベルの概念があり、魔法の壺を複数取ることでレベルが上がり、使ったときの威力が上がり、演出も派手になるのだ。
アックス=バトラーは筋肉モリモリマッチョマンのバーバリアンで、ロングソードを使って戦う。仲間2人の中間に位置するバランスで、攻撃も魔法もそこそこに使える扱いやすいキャラクター。特筆すべき特徴がないのも特徴といえる。レベル4までの大地の魔法を使う。
ティリス=フレア(アーケード版インストではティリス=フレイアー)は、紅一点のビキニ姿のアマゾネス。武器はショートソードで、リーチが若干短い。彼女が使う火の魔法は全キャラクター中最高のレベル6まであり(魔法の壺は最大9個必要)、強大な破壊力を持っている。またダッシュ攻撃の跳び蹴りが非常に強いというのもポイントだ。
ギリウス=サンダーヘッド(同インストではギリアス=サンダーヘッド)は、髭を貯えたドワーフで、両刃の斧を持って戦う。斧は敵に当てやすく、後ろに転がって背後の敵を吹っ飛ばす回転斬りが非常に強力だ。魔法はレベル3までしか上がらないが、魔法の壺4個で最大レベルの魔法を使うことができる。
この手のゲームは、敵に挟まれると圧倒的に不利になり、しかも本作の敵は複数が現れたときは常にプレーヤーを挟むように位置どりをしてくるので、できるだけ数が少ないほうの敵の後ろに回って攻撃することが基本となる。なおこのときにダッシュを使うと、敵もダッシュ攻撃で追撃してくるので、軸をずらしながら歩いて移動するのが得策だ。
また道中で見逃せないのが、乗り物となる動物(モンスター?)達だ。「獣王記」では敵として登場した、長いシッポで敵をひっぱたく「チキンレッグ」、目の前の足元に炎を吐く「ブルードラゴン」、前方に火の玉を飛ばす「レッドドラゴン」が存在する。彼らの攻撃は強力なうえ、敵を吹っ飛ばす効果があり、ダウンしている敵に上手く攻撃を重ねることで連続してダメージを与えられる。乗っている敵を吹っ飛ばして、必ず奪い取るようにしたい。なおステージ間の休憩タイムには必ず逃げてしまうので悪しからず。
実は筆者がこのアーケード版をプレイしたのは、本当に久しぶりのことであった。移植版であるメガドライブ版の完成度が高く、アーケード版よりもそちらが移植されることが多いという珍しい事態でもあったので、必然的に遊ぶ機会も減ってしまったわけだが、感触は基本的に変わらない。メガドライブ版よりもステージが少ないので、15分程度でサクッとクリアでき、この「アストロシティミニ」版は標準装備のジョイスティックで遊べるのも具合がいい。演出やサウンドがリッチで、アーケードならではの小粋なエンディングもあるので、楽しんでみてほしい。
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