【特別企画】
【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「シャドーダンサー」
ムズすぎる故に止まらない! パワーアップした忍者アクションゲーム!
2020年12月7日 00:00
1989年にアーケードで稼働した、「忍」シリーズの中では極めてマイナーと言わざるを得ない隠れた名作「シャドーダンサー」。まさに忍の如く隠れた存在すぎて、アストロシティミニのラインナップが発表されるまでアーケード版があることを筆者は全く知らなかった。
メガドライブ版の「シャドーダンサー ザ・シークレット・オブ・シノビ」は夢中になってプレイした記憶があるが、「ESWAT:サイバーポリス イースワット」同様にアーケードとメガドライブ版とでは内容が全く違うようなので、本作は初見プレイだ。
「シャドーダンサー」は、過去作の主人公ジョー・ムサシの息子、「ハヤテ」が活躍する横スクロールアクションゲーム。ハヤテのアクションは、遠距離攻撃に接近攻撃、そして1ステージに1回だけ使用できる忍術と、シリーズを踏襲している。
基本的にはこれまでの作品と大きくは変わらないが、本作独自の要素として「忍犬」が新たに追加された。ハヤテが連れている忍犬のヤマトに指示を出せば、敵に飛び掛かり一定時間動きを封じてくれるのだ。この新要素が加わったことで過去作よりも戦略の幅が広がっている。
本作ではステージ中に仕掛けられた爆弾を回収しながらゴールを目指していく。パワーアップの要素も健在で、前作では捕まった子供たちを助けると主人公の攻撃が強化されたが、本作では特定の爆弾を回収することでハヤテの攻撃が爆発手裏剣などにパワーアップする。爆弾回収で強くなる理由は謎だが、火力が上がって敵を蹴散らすのが気持ち良いので細かいことは抜きにする。
System18の基板になったことによりグラフィックス面は「SHINOBI 忍」から遥かにクオリティが上がっている。キャラクターの表示は大きくなり、ドット絵もカッコ良い造形になっている。前作ではシンプルだった背景も描き込みが非常に細かくなっていて、ゲームの世界観がダイレクトに伝わってくる。
「忍」シリーズなのである程度の難度は想像していたが、「シャドーダンサー」はその遥か上を行く激ムズ難易度であった。敵は忍犬を使うのが前提の布陣になっておりとにかく数は多く、攻撃の勢いは異常なほどに激しい。
ならば忍犬にしっかり働いてもらえばいいところなのだが、主人への忠誠心を疑うレベルでなかなか思うように言うことを聞いてくれなかったりする。方向キーの下と攻撃ボタンで敵めがけて忍犬を突撃させられるハズなのだが、結構な割合で無視をされ、悲しみのしゃがみ手裏剣に化けてしまう。
その逆もあり、しゃがみ攻撃をするつもりだったところに忍犬が思いがけない突進をかまして、返討ちにあってトボトボ帰って来るなんてこともたびたび起こる。とにかく扱いの難しい忍犬なのだ。
本作からは横だけではなく、上下の縦方向にもスクロールするようになっており、これも難しさに拍車をかけている。画面がスクロールした先に敵が待ち構えていると即襲撃に合ってやられてしまう。この事故を回避するには敵の配置をしっかり覚える必要がある。
先に進んでいくと、プレイしていて気が狂いそうなステージ構成になっていく。終盤の滝つぼを登っていくステージでは小さい足場を飛び移って進むのだが、ここでも容赦なく敵が襲ってくる。攻撃を食らえば1発アウトなのは当然で、敵に触れただけでもノックバックしてしまいそのまま落下死してしまうという凶悪さ。
ゲーム―オーバーの連続で心が折れかけたのでここらで中断して原稿に取り掛かろうとするのだが、どうしても脳裏に滝つぼの惨劇がよぎってしまい原稿に手が付かず、結局プレイを続行することになった。悔しいが「シャドーダンサー」には最後までプレイしたくなる“ゲーマーを惹きつけるモノ”があるのだ。
絶対に攻略不可能のように思えるステージでもプレイを重ねていると次第に進歩が見えてくるのはさすがの「忍」クオリティ。やられるたびに毒を吐きながら遊び続け、かなりの時間を費やしたがなんとかエンディングを見ることができた。
一筋縄ではいかない本作の難しさは、プレイしていて知らず知らずのうちに熱が入ってしまった。うまくいかないもどかしさと同時に、少しずつだが着実に進めるようになってくる上達感、クリアできたときの達成感は近年のマイルドなゲームでは味わえない感覚である。
ゲームをクリアして、本作についていろいろ調べてみたのだが、ハヤテは一体何の目的で何と戦っていたのかが最後までわからなかった。ラスボスの素性はおろかエンディングの内容も理解できなかったので「シャドーダンサー」有識者がいたら本作のストーリーを是非教えてもらいたい。
©SEGA ©SEGATOYS