【特別企画】
【アストロシティミニ全タイトルレビュー】「コットン」
コットンがかわいすぎる! 1コインクリアに萌えた想い出のファンタジーシューティング
2020年12月10日 00:00
「コットン」は1991年に稼働を開始した横スクロールシューティングで、開発はサクセス。ファンタジーな世界観のシューティングで、プレーヤーはほうきにまたがって空を飛ぶ魔法使いの女の子、コットンを操作し、魔法を駆使して敵を倒し、世界を救うために戦う……わけではない。
何しろ打算的で己の欲に忠実なコットンは世界がどうなろうと知った事ではない。実際に世界を救ってほしいという妖精シルクの要請に対してもガン無視だ。だがシルクはコットンの性格を知り尽くしており、コットンの大好物である「WILLOW」が食べられるという提案をすることで、コットンの助力を得るのに成功した、という何ともギャグテイスト溢れる流れだ。
本作は基本的にはオーソドックスな横スクロールシューティングだ。特筆すべきはステージクリア後に毎回ちょっとしたカットシーンが入る事だ。これによりコットンのコミカルなストーリーがビジュアルでも楽しめる。
当時のシステムの仕組み上、ムービーと言うよりは大型スプライトを活用したシンプルなアニメーションだが、これが最高に楽しい。敵が落とした「WILLOW」を食べようとするコットンと、あの手この手でそれを阻止しようとする妖精シルク。そんな2人の駆け引きが毎回楽しめる。己の欲望に忠実で利己的なコットンだが、こうした仕草の何もかもがかわいいのだ。
一方でシューティングとしてはかなりハードな作りだ。各ステージの情報も交えつつ、本作のゲームとしての魅力や実機で体験した筆者の思い出話などを交えつつ、語っていこう。
コットンとの想い出
1991年当時、筆者は高校3年生。ある日の学校帰りに、何の気なしに立ち寄った地元のゲームセンターの片隅で稼働していた「コットン」のテーブル筐体との出会いが、筆者の人生を大きく狂わせた。
画面には右手にほうき、左手に妖精を抱えたおかっぱ頭の女の子の立ち姿のタイトル画面。そこからデモプレイが始まると、横スクロールの画面内をドット絵のコットンがかわいく動き回る。そして溜めショットのようなアクションから強力な魔法攻撃を放つのだが、その都度「かりゅ~!」、「いかづちっ!」と、とろけるボイスが発せられる。恐る恐るコインを投入すると「コイ~ン」とこれまたかわいい声が響く。これはやるしかないとプレイを開始したが、その難易度の高さに初見プレイはステージ1の中盤であっさりとリタイアしてしまう。
この日以来、筆者の生活スタイルは激変した。当時、筆者は毎日500円の昼食代をもらっていたが、このうち300~400円を全て「コットン」に投入する生活が日課となった。最初のうちはステージ1で全滅する事も多かったが、次第に慣れてきて、段々とステージ後半までスムーズに進めるようになってきた。だがステージ後半の難易度はやはり高く、ステージ4、5くらいで全滅する日々が続いた。
だが、そんな筆者を憐れんでか、シューティングの神様が手を差し伸べてくれた事もあった。ある日、いつものように「コットン」をプレイしようと、コインを投入したら、いつもの「コイ~ン」ではなく、なぜか「コイコイコイコイコイ~ン」という妙な声が響いた。クレジット数をよく見たらなぜか最大の9まで上がっていたのである。どうやらインカム部の調子が悪くて誤動作をしていたようで、2~3日後には修理されたが、その間、少ないコインで心ゆくまでコットンを満喫できたことで、最終的にはコットンを1コインクリアできるところにまで上達することができたのだ。正直、ゲーム自体があまり得意ではない筆者にとって、アーケードゲームでの1コインクリアは人生初の体験だった。
「コットン」がそのゲームセンターから消えてからも、各ゲーム機に移植や続編が発売されるたびに、買うようになった。声優さんが声を担当したPCエンジン版や、3Dシューティングになって生まれ変わったメガドライブ版の「パノラマコットン」などなどだ。ただ、これ以降の「コットン」はあまり手にした記憶がない。その後もサターン版の「コットン2」や「コットンブーメラン」など色々と発売されたのは記憶しているが、実際のゲームをプレイした記憶がなく、「コットン」は思い出として、記憶の奥の棚にしまわれていったのである。
ところが、2019年の東京ゲームショウで、筆者はコットンと実に28年ぶりの衝撃の再会を果たす事になる。それが2021年2月発売予定の「コットン リブート!」だ。そんなわけで、新たなアレンジバージョンの楽しみは来年に取っておくとして、今は1991年に稼働開始したオリジナルの「コットン」を心行くまで堪能していきたい。
29年ぶりの感動の再会は初見と変わらずステージ1止まり……
今回、筆者の手元に「アストロシティミニ」が届いた瞬間、真っ先に起動したのはやっぱりコットンだった。クレジットを入れずに放置すると始まるデモプレイを見ていると、アーケード版をひたすらプレイしていたあの頃を思い出す。
あれからほぼプレイしていないが、なんとかなるさとコインを投入すると、当時幾度と聞いた「こい~ん!」の声が。そしてカットシーンを経て、いよいよ「いっくぽ~ん」の掛け声とともに再会プレイ開始!、ところがその直後……「ひぇ~! 」、「てんてけて~ん! 」……あれ? ステージ1の序盤でいきなりやられた。流石に当時あれだけやったんだし、もうちょいやれるだろ……「ひぇ~! 」、ん? ……「さいなら~」と、再会プレイはコットンのハードな難易度の前にあえなくステージ1の中盤で撃沈と言うどうしようもない結果となった。これじゃ初見と変わらないじゃないか!
「コットン」は基本的に敵の出現パターンが決まっており、そのパターンを頭と体で覚えてクリアしていく、いわゆる覚えゲーのシューティングだ。そのため、敵の出現パターンが記憶と肉体から抜け落ちていると、流石にクリアはかなり困難になってしまうのだ。
特に中ボスやボスについてはパターンを知らないと生き残るのが非常に難しい。反射神経だけで乗り切れない理由は2つある。1つは自キャラ、敵キャラ含めて、各キャラクターのサイズがかなり大きい事。そしてもう1つは、自機のスピードアップが存在しないため、敵の動きを見てとっさにかわそうとしても避けきれない。さらに言うと、敵の動きが割と緩急が激しく、いきなり高速で突っ込んでくるような動きをする敵が多いのも初見殺しになりやすい要因の1つといえる。
と言う事で、改めて「コットン」について説明していこう。コットンはほうきに乗って空を飛び、やってくる敵を通常のショット、または下部に向かって放つボムを使って撃退していく。コットンのショットは、敵を倒すことで得られる経験値を貯めていき、これによりショットのパワーをアップできる。経験値は画面下部のEXPゲージに貯まっていき、ゲージをマックスにすることでショットのレベルが上がるという仕組みだ。
また、敵を倒すと落とすクリスタルは、そのまま取っても経験値が上がるが、ショットを当て続ける事で色が変化、オレンジ色の状態で取ると経験値が多めに獲得できるほか、赤色で「火竜(かりゅう)」の魔法を、青色で「雷(いかづち)」の魔法を獲得できる。獲得した魔法は画面下部にストックされ、ショットボタン長押しでチャージして発射すると、ストックの左端から順番に消費していく。
火竜の魔法はコットンの「かりゅ~!」と言う声とともに竜の形状の炎が一直線に飛んでいき、正面の敵を一掃する。また、雷の魔法でもコットンの「いかづちっ!」と言う声とともに一定時間、前方に雷を放射し続ける。ストック順に魔法を使うため、次に使う魔法が何になっているかは画面で確認をしておき、状況に応じて使い分けるのがいいだろう。
コットンには常に妖精のシルクがお供として追従しており、これがオプションのように援護射撃をしてくれる。また、シルク以外の妖精たちが道中で敵に捕まっている場合があり、これを助ける事で追従する妖精を最大6人まで増やす事が可能だ。
妖精たちは通常はコットンの後を追う形で援護射撃をするが、敵に接触するとその敵が倒れるまで張り付いた状態で攻撃してくれる。また、ボムを長押しすると、魔法と同じような演出と共に、今まで追従していた妖精たちが全員集まってコットンの周りをグルグルと回る動きを見せ、発射すると、前面にいる敵に集中して取りついて、倒すまで張り付き続ける。ちょっと固いザコ敵や中ボスなど、張り付きが効く相手にはかなり効果てきめんだ。ただしボスなど張り付きが効かない相手もいる点には注意が必要だ。
また、インストなどにも記載されていない、隠し魔法についても触れておこう。コットンの魔法は前述の通り、火竜と雷の2種類だが、これらの魔法を使う際にショットボタンだけでなく、ボムボタンも同時に押し続けてチャージする事で、それぞれ異なる魔法に変化させることができるのだ。火竜が利用可能な状態でこれを使うと、「とんでけ~」の掛け声とともに、敵に向かって炎をまとった妖精たちが敵に張り付き、接触だけでダメージを与え続け、一定時間経過するまでは、次から次へと敵に張り付いて倒してくれる。雷が利用可能な状態で使うと、「バリア!」の掛け声で一定時間、敵の攻撃を防ぐバリアを張る事が可能なのだ。
全7ステージで、ステージ1では夜の街を抜け、ステージ2で森に入り、そこからステージ3は地下の洞窟を抜けて、神殿に入っていく。ステージ4で神殿内部を抜け、ステージ5では神殿の地下へと向かう。そこを抜けるとステージ6は火山地帯となり、最終7ステージはラスボスとの一騎打ちのみのシンプルなステージ構成だ。
各ステージとも、肝となるのは中盤で必ず発生する上下スクロール時の敵との接し方だ。本作は原則として強制横スクロールなのだが、ステージ中盤では必ず上方向、または下方向にスクロールの向きが変わる。この時の敵の動きや攻撃パターンが横スクロール時とは感覚が変わってくるので、これに柔軟に対応するのが重要だ。そして何より、中ボスやボスのパターンを覚えて敵の位置取りや攻撃方法を把握して挑むことだ。
なお、通常のシューティングと異なり、本作は屋根や地面などにコットンが接触してもそれが原因で死ぬことはないため、避ける時などは壁を意識せずに当たっていけるのは気が楽だ。
ボス撃破後は「TEA TIME」として上から大量のお茶椀が降ってくるボーナスステージが待っており、それを抜けると次ステージに進む前にカットシーンが入る。画面上部にスプライトを使用した簡素な映像が流れ、画面下部にセリフが出るのだが、バカバカしい内容とコットンのかわいさがとにかく光る素晴らしいビジュアルなので、そのビジュアルからコットンのかわいさの虜になった人たちには是非堪能してもらいたい。
そして「アストロシティミニ」ならではの中断セーブ機能が本作でも活きるのは言うまでもない。道中、敵の出現が少なくなったところで中断セーブしておけば、初見の中ボスやボス相手に何度でもリトライが効く。本作の中ボスやボスはパターンさえ見えてきて、傾向と対策が立てられれば、比較的楽に挑める敵が多い。後半は流石にそこまで甘くはないが、それでも何度かリトライしていれば、慣れてくるので、シューティングは苦手だけど、コットンはかわいいという人は、この中断セーブを活用して、是非最後までプレイしてみてほしい。
なお、何度かトライしているが、まだ1コインクリアできる状態にまでは腕が戻ってきていない。「アストロシティミニ」が発売された際には、1コインクリアできる状態にまで腕を戻して、万全の体制で来年2月発売の「コットン リブート!」に挑みたいところだ。
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