【特集】
【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「スペースハリアーII」
後にメガドライバーとなるセガファンが理想とした“if”の「スペハリII」がここに
2022年10月27日 00:00
- 【スペースハリアーII】
- 2022年10月27日発売
- メーカー:セガ
前機種のメガドライブミニにも収録された「スペースハリアーII」が、メガドライブミニIIで再び収録されることとなった。 単なる再録ではなく、メガドライブの機能を実機よりも強化した想定で新たに開発された、“if”想定の「スペハリII」である。
メガドライブ本体と同時発売タイトルの1本として、1988年10月29日に発売された「スペースハリアーII」。アーケード3Dシューティングの名作「スペースハリアー」の続編として、鳴り物入りで発売となった。前作と同じ超能力戦士ハリアーを主人公に据え、新たな戦いの舞台「ファンタジーランド」へと挑んでいく内容で、巨大なビーム砲を抱えたハリアーが飛来する敵を撃ち落とし、障害物を回避しながら前方へと進んでいくゲームシステムは前作を踏襲している。
「スペースハリアー」というゲームはセガファンのみならず、1980年代をゲームセンターで過ごしたゲームファンにとって特別な存在であり、その続編はアーケードではなくメガドライブで発売され、本体入手と同時にプレイできるというニュースは非常に大きかったように思える。筆者は金銭的な問題もあってすぐに本体を買うことは意識していなかったのだが、たまたま出した雑誌の懸賞に幸運にも当選し、比較的早い段階でメガドライブを入手していて、1本目に買ったソフト(当選品の本体にはソフトが付いていなかった)が本作だったので、個人的にも思い入れは強いタイトルだったりする。
メガドライブミニ2のプロデューサーであるセガの奥成洋輔氏は、収録タイトル発表の配信番組(「『メガドライブミニ2』誓いの場所」の回)にて、ゲーム雑誌「Beep」(1988年11月号)に掲載された記事で本作に大きな期待を持ったが、実際に発売されたソフトを遊んでみると、その内容に違和感を覚えたという当時の思い出を語っていた。
それを踏まえて、「メガドライブでオミットされてしまった“拡大縮小機能”がもし備わっていたら」という世界線を想定し、機能が拡張されたメガドライブ上で再現された「メガドライバーが理想とする『スペースハリアーII』」が、今回収録された本作なのである。
このマルチバース版(公式の定義はないが、本稿では前述の配信番組での奥成氏の発言を引用し、「当時とは別の世界線で作られたバージョン」として仮に表記する)「スペースハリアーII」は、グラフィックはオリジナルと変わっておらず、静止画で見る限りはオリジナルと大差がない。しかし実際にゲームをプレイしてみると、画面上に出現する敵キャラクターや敵弾、そして障害物が滑らかにこちらに迫ってくることはわかるはず。メガドライブミニに収録されたオリジナルと比較してみればその差は歴然だ。
ゲームの動きが変わったのは明らかなのだが、筆者個人としてはゲームのプレイフィールやサウンドが前作の「スペースハリアー」を意識したものになっていたことが衝撃だった。オリジナルには前作にあったロックオン(敵の空中物がハリアーの前を通過すると効果音が鳴って、ハリアーの撃った弾がホーミングして敵に当たる)機能がなく、撃ち逃した敵を追撃するのが難しく、爽快感にも欠けていた。それがこのマルチバース版ではロックオン機能が備わり、「敵の前を通ってショットを連射する」という前作の攻略法が通用するようになったのだ。
サウンドについては、BGMがオリジナルのメインテーマ「HARRIER SAGA」の軽快なメロディを残しつつ、ベースとシンセドラムのパートを強めたアレンジで、「ああこれは『スペースハリアー』の続編なんだな」と認識できるような楽曲に仕上げられている。「HARRIER SAGA」は個人的に今でも口ずさめるぐらい好きな曲で、このアレンジはずっと聴いていたくなる心地いいものに仕上がっていた。この機会にこの楽曲が改めてセガファンに認識されれば嬉しいところである。
グラフィックと同様、ゲーム本編にはほとんど手が入れられておらず、あくまで機能を拡張したメガドライブで動く「スペースハリアーII」という仕様なので、過度な期待は禁物だ。同時収録された「スペースハリアー」と比べるとデザインも演出も見劣りし、全体的に間延びした印象を受けるかもしれない。それでも、特にオリジナルを触ったことのあるメガドライバーには、別の世界線を体験できるオーパーツ的な価値のあるタイトルで、プレイ感覚も大きく変わっているので、ぜひメガドライブミニのオリジナル版と比較するなどして、楽しんでいただきたいものだ。
(C)SEGA