【特集】
【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「ルナ ザ・シルバースター」
垢抜けないからこそ愛おしい、暖かさを感じる王道RPG
2022年10月27日 00:00
- 【ルナ ザ・シルバースター】
- 1992年6月26日発売
- 発売時のメーカー:ゲームアーツ
「ルナ ザ・シルバースター」は、メガCDの期待のRPGとしてメディアでも厚く取り上げられた。筆者も待ちに待ったタイトルだった。ファミコンやスーパーファミコンには「FF」や「ドラクエ」をはじめきら星のようなRPGタイトルがあり、PCエンジンには何といっても「天外魔境」があった。メガCDにも看板となるRPGを! という想いはメガCDユーザーの悲願だったといっていい。
本作は実はROMカセット用に開発が進んでいたようで、声優の起用や当時のCD-ROMRPGでおなじみのデモシーンなどは少なかったが、それでも「本格RPG」として非常に力が入っており、筆者は夢中になってプレイした。
「ルナ ザ・シルバースター」は「王道」ともいえるお約束のストーリーと冒険が展開する。いささか地味だが、その落ち着いた雰囲気がまるで自分自身が冒険に旅立つかのような親近感を与えてくれた。筆者が本作に特別な想いを持っているのはこの親しみやすい雰囲気によるところも大きい。
主人公・アレスは冒険を夢見る少年。彼が住む北の辺境の村ブルグは世界を救った四英雄の1人ダインが生まれた村であり、アレスはいつか彼のように冒険に出たいと思っていた。ブルグ村の村長の息子ラムスはかつてダインが最初の冒険に出たという「白竜の洞窟」へとアレスを誘う。
アレスは不思議な生き物ナルと、女の子ルーナと一緒に育った。ナルは羽の生えた人語を話す猫のような不思議な生き物だし、ルーナは両親を知らない子供だったが、3人は生まれたときから兄弟のようにアレスの両親から分け隔てなく育てられた。ナルは冒険に乗り気だが、ルーナは心配だからついていくという。アレスはかつて父がダインと共に冒険したときに身につけていた頑丈な服と小剣を手に最初の冒険に向かう。
アレスは冒険をやり遂げ、白竜からかつてのダインと同じように「竜の指輪」をもらう。ラムスは白竜から大きなダイヤをもらい、海を越えた向こうにある大都市メリビアで売るという。本当の旅立ちの時がやってきたのだ。一方ルーナは村に残ることを決める。アレスとナルが旅立つならば、自分は残って両親といたいというのだ。アレスはルーナと再会を約束し、憧れのダインと同じように広大な“世界”へとに旅立つのだ……。
「ルナ ザ・シルバースター」のストーリーはオーソドックスで、ちょっと地味だ。思い入れのない人には「普通のRPG」と感じるかもしれない。また、フィールドにある石碑での体力回復が独特だったり、一部わかりにくいマップがあったりと、RPGとしての完成度が現代の目で見るともう少しと感じる部分もあるだろう。しかしNPCとの会話が凝っていたり、2Dドットグラフィックスの書き込みが緻密だったりと、作り手の意気込みを感じられる作品だ。
いつかは広い世界に出ていきたいという強い思い。新しい出会い。驚くべき様々な事象、別れと、時々思い出す故郷……。「ルナ ザ・シルバースター」はそんな冒険者の気持ちを丁寧に描いた作品だ。共感できる冒険譚が本作で体験できる。この機会にぜひプレイして欲しい。
©1992 GAME ARTS
キャラクターデザイン/窪岡 俊之
©SEGA
※画面は16:9フルサイズ設定で撮影しているため、本来の画面設定よりも横に引き伸ばされています。