【特集】

【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「ルナ エターナルブルー」

壮大で情感たっぷりなストーリーテリング、これぞ“メガCD最後の大作RPG”

【ルナ エターナルブルー】

1994年12月22日発売

発売時のメーカー:ゲームアーツ

 「ルナ エターナルブルー」は、「ルナ ザ・シルバースター」の続編として1994年12月22日に発売されたRPG。同年11月にセガサターンが発売されファンもメーカーも視点はそちらに移る中での時期でもあり「メガCD最後の大作RPG」とも呼ばれた。

 本作はRPGとして非常に力が入った作品だ。オープニングを始め随所に挿入されたムービーシーンはセルアニメのように1枚1枚のセルをドットグラフィックスを重ね合わせて表現されており、TVのアニメーションのように効果的に動く。当時のゲームのムービーシーンはアニメーションや実写を取り込んで表現する作品が多かったが、ハードの性能から取り込み画像はノイズが多くなってしまっていた。これに対し、本作は膨大なCGを切り替えることで、美しいアニメシーンを実現していた。かなり手間のかかる、スタッフの強い思い入れを感じる表現である。

 「ルナ エターナルブルー」のストーリーは壮大だ。ルナの世界は天空に巨大な青き星が浮かんでいる。伝説ではかつて人は青き星に住んでいたが、青き星は荒廃し、女神アルテナは人々をルナに連れてきたという。ヒロイン・ルーシアは強大な力を持つ青き星の守護者。彼女は不吉な予感と共に長き眠りから目覚めるが、青き星の再生はいまだなされていない。本来、ルーシアが目覚めるには早すぎるのだ。原因を調べるため、彼女はルナに赴く。

今作はかなり壮大な物語となっている。主人公のヒイロは世界の秘密をにぎる少女ルーシアと冒険することとなる
力の入ったムービーシーンはCGをアニメのセルのように切り替える形で描画しており、取り込み映像のようなノイズがない美しさを実現している
ヒイロとルーシアは女神アルテナに会うために冒険をはじめる

 しかしルナは彼女の想像とは全く違っていた。アルテナは既に伝説となり、実在しているのかどうかもわからない。人々が生き、生活を営んでいるルナの今の状況はルーシアにとって想像を超えた世界だった。その不安をついて破壊神ゾファーが彼女の力を奪い去ってしまう。ルーシアは彼女を助けてくれた冒険者ヒイロと共にアルテナを探す冒険をはじめるが、それは彼女の予想とは全く異なるものだった……。

 「ルナ エターナルブルー」では世界や神、魔族など改めてこの世界の根幹が描かれる。キャラクター描写なども力が入っており、現代の目で見てもとてもクオリティが高く、そして壮大な冒険が描かれる。前作があえて王道や地に足のついた冒険を描いてただけに、はっきりとしたコントラストが生まれている。本作は前作から長い年月がたった物語であり、前作をプレイしなくても楽しめるが、様々なつながりが用意されている。前作のプレーヤーは様々な関係を見いだし、一層楽しくなるだろう。

 特に「ルナ エターナルブルー」ではルーシアの描き方が見事だ。たった1人、重い使命を背負わされそれを実行するためだけに生まれた彼女は、温かな人のつながりや、命のすばらしさ、人が作り出す世界を知らない。そんな彼女がヒイロや仲間達とふれあうことで徐々に人間の素晴らしさに気づいていく、というのが1つの大きな柱となっている。

序盤のルーシアは逃げ出したり、自分のためだけに防御したり、かなり利己的に動く。冒険を経て、彼女は徐々に変わっていくのだ
人々との交流がルーシアを変えていく
本作は仲間のキャラクターも丁寧に描写されている

 面白いのが彼女の価値観がちゃんとゲームで表現されているところ。ルーシアは戦闘で操作できないNPCなのだが、初期は自分だけにプロテクトを貼る、何かと言えば仲間を見捨てて逃げる、それでいながら気まぐれの魔法攻撃は強力という、実に腹が立つキャラクターなのだ。もちろん役に立たず、「なんなんこの自分勝手な女は」と誰もが思う。だからこそ彼女が変わっていき、仲間を助け、頼れる存在になっていくことで、プレーヤーにとって特別な存在になるのである。

 そして「ルナ エターナルブルー」といえばエンディングである。人の心を、暖かさを知ったルーシアは何をなし、仲間達はどう応えるのか。そして……。当時本作のエンディングシステムは話題を集めた。ぜひこの仕掛けを見て欲しい。本作は多くの人に特別な思い入れを持たせる優れたRPGである。