【特集】
【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「キャプテン翼」
コマンド式サッカーシミュレーションがパワーアップしてメガCDに登場!
2022年10月22日 00:00
- 【キャプテン翼】
- 1994年9月30日 発売
- 発売時のメーカー:テクモ
世界的にメジャーなサッカー漫画の金字塔。それが「キャプテン翼」だ。1981年から週刊少年ジャンプで連載していた「キャプテン翼」は、1983年にはテレビアニメ化、そして1988年にはファミコン版ゲームも発売された。
キャプテン翼の最大の魅力は何といっても、必殺シュートが存在したことだろう。小学生編の頃から実在する「オーバーヘッドキック」や「オフサイドトラップ」をあたかも特殊な必殺技のように効果的に見せることで、見ている読者は細かい事は分からなくてもテンション高く盛り上がったものだ。
その後の中学生編になると、オリジナルの必殺シュートや、必殺技がさらに増える。ライバルたちが「隼シュート」や「イーグルショット」、現在のルールでは反則とも言われる「スカイラブハリケーン」、原理はよく分からないが、とにかくすごい「ツインシュート」、ゴールネットを破るようなシュートは人が喰らったら大怪我だろと言いたい「タイガーショット」などなど。次から次へと登場する必殺シュートに読者のテンションは爆上がりだった。さらには主人公の大空翼が放つ「ドライブシュート」は今になって思えば、単なるドライブ回転のシュートというだけなのだが、これがすごい威力とありえない回転でゴールネットに突き刺さるのだ。
こうした必殺シュートの類は古くは野球漫画における「魔球」の例が多くあるほか、1970年頃に連載されていた「赤き血のイレブン」というサッカー漫画でも既に必殺シュートは存在していたようだ。起源がどこかまではたどれていないが、単なる必殺シュートのすごさだけでなく、高橋陽一先生のストーリーの魅力などもあって人気作となったのだろう。
キャプテン翼が人気絶頂の頃、筆者は小学生の高学年。運動の苦手な筆者だったが、なぜかサッカー部に所属して、試合中は常時ベンチを温めていた。その理由はズバリ「キャプテン翼」があったからに他ならない。当時最高に大好きなキャラクターだった若林源三の真似をして、アディダスの帽子をかぶってみたり、池の苗字に勝手に林を付けて「池林」と呼んでみたり、朝から晩まで休み時間にはサッカーに明け暮れる日々を過ごしていたのも今となってはいい思い出だ。
そんなキャプテン翼のファミコン版ゲームは筆者もすぐに購入したが、これまたユニークなタイトルに仕上がっていた。何しろスポーツなのにスポーツの要素がほぼない、シミュレーションゲームになっていたからだ。「ガッツ」と呼ばれる行動ポイントを消費する事で、ドリブルやパスの技を使ったり、必殺シュートを放つことができる。ガッツには上限があるため、勝利のためには、的確なガッツ管理が必要になるという一風変わったスタイルはゲームとしてもヒットとなり、続編が多くリリースされた。
そして、今回メガドライブミニ2に収録される、メガCD版「キャプテン翼」はアニメ版キャプテン翼とファミコン版キャプテン翼の集大成とも言えるタイトルに仕上がっているのだ。
メガCD版「キャプテン翼」はゲームシステムこそファミコン版を踏襲しながらも、随所にメガCDの大容量を活かした軽めのアニメーションを使ったムービーシーンが多く収録されており、さらには音声も1983年アニメ版の声優さんたちが声を当ててくれており、ムービーなどで懐かしい音声がガンガンと飛び出してくるのが衝撃だ。
ストーリーとしては、原作に沿った形で小学生編から中学生編までが収録されているので、当時原作を読んでいた人や、アニメ版をずっと見ていた人、もちろんファミコン版でキャプテン翼を楽しんだ人など、当時のあらゆるキャプテン翼ファンたちが楽しめる作りになっている。
序盤のところを少しだけプレイしてみたが、丘の上から挑戦状の文字を書いたサッカーボールをライバルの若林源三に向かってボールをぶち込むシーンがきちんと再現されており、当時を思い出して感慨深い気持ちになってしまった。
試合は練習試合であっても、本シリーズではお馴染みの実況チャーリーが登場して、ゲーム内の様子をこちらに実況してくれる。本作の試合では、画面中央に現在ボールを持っている選手が表示されるほか、フィールド全体の情報が画面下部に表示され、点灯している数字アイコンのキャラクターはこちらで操作できる。ボールに最も近いキャラクターが有効になっているので、移動してボールに近付き、相手と接触するとタックルでボールを奪ったり、ブロックで行動を妨害したり、パスカットでパスを阻止できる。
この辺りはじゃんけん的な要素もあり、相手の選手がパスしようとしているところでパスカットを選ぶことで、より成功率が高くなるといった具合だ。ただし、選手ごとにステータスが設定されており、より強いキャラクターに対してはたとえ選択が的中しても、成功するとは限らない。この辺りの駆け引きが本作の妙とも言えるポイントだ。
シュートを打たれたキーパーが行なえるのはパンチングかキャッチかの2択。キャッチは成功すれば確実に自軍のボールとできるため、有利に展開できるが、成功率がシビアなため、ミスると失点に繋がる危険も高い。逆にパンチングはゴールを守る点では成功率が高いが、弾かれたボールが仲間の元にいくとは限らないため、ゴールは守れてもその後、ピンチが続く危険もある。筆者の個人的な感覚では、本作のキーパーは、原作で名前の知られているような名キーパーでもない限り、キャッチは不安すぎてあまり選択しない事が多い。
攻撃時はドリブルでそのまま攻めるのもよし、仲間にパスするもよし、思い切ってロングシュートを狙うのも1つの手だ。なお、小学生編ではドリブルからは通常のシュートとバナナシュートの2択、パスを貰った場合などは、ダイレクトにオーバーヘッドキックでシュートを狙える場合もあるし、ボールの軌道が低い場合は、ボレーシュートしか選べない場合もあるなど、状況に応じて攻撃のパターンが変化するのも面白い。
こうして設定された制限時間が過ぎると、ロスタイムに突入のアナウンスが流れる。ロスタイムが終わると前半が終了。ここでチームメンバーの交代などがあれば行ない、なければ後半戦に突入して、同様に試合を展開、制限時間が過ぎればロスタイム、そのまま試合終了という流れとなっている。
本作では試合終了後に、試合の中で何らかのアクションを行なったキャラクターについてはレベルが上がるシステムが用意されており、試合終了後に、画面上にレベルアップしたキャラクターの一覧が表示される。
今回、メガCD版「キャプテン翼」で久々にキャプテン翼のゲームをプレイしたが、メガCD版については、正直なところかなり動きがスムーズで、非常に遊びやすく感じられた。ボールを受け取ってからの動きがとてもスムーズで、すぐにドリブルに移行できるし、ドリブルの動きも滑らかで快適に試合が進められて気分爽快だった。ゲームが快適なだけでなく、ムービーでは初代アニメ版の声優さんたちの声が心行くまで堪能できるし、これぞ、「キャプテン翼」ゲームの決定版とも言えるすばらしい出来となっている。当時のファンは是非プレイして熱かった当時の気持ちを思い出してほしい。
©高橋陽一/集英社
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