【特集】
【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「シルフィード」
ビジュアルを大幅にパワーアップしたゲームアーツの疑似3Dシューティング
2022年10月24日 00:00
- 【シルフィード】
- 1993年7月30日 発売
- 発売時のメーカー:ゲームアーツ
「プリゼンティッド・バイ・ゲィムアァツ」、「わたしはうちゅうのていおう、ザカリテ。ルノアールあるかぎり、きさまらごときにたおされはせぬ」の2つの合成音声こそが、筆者が初めて「シルフィード」に触れた時の衝撃だった。ちなみに上記メッセージにある「ルノアール」は「グロアール」の間違いだが、筆者の脳裏には今でもルノアールとして残っている。
これらは1986年にPC-8801mkIISR(以降)というNECの8bitパソコン向けに発売された初代「シルフィード」の話だ。起動時に読まれるメーカー名、そしてゲームを開始すると、オープニングで出現する謎の巨大なポリゴンの顔が自らを宇宙の帝王ザカリテと名乗り、ルノアール(グロアール)がどうのこうのとこちらを挑発してくるのである。
そして始まるハードなシューティングゲームは見下ろし視点や横向き視点など、2D視点が主流の当時からすると、衝撃の3Dビジュアルだったのだ。もちろん当時の8bitパソコンにはそこまでの処理能力はないため、システムとしては2Dではあるのだが、一部キャラクター表示には粗めのポリゴンを使用した3D描写を使いつつ、手前ほど大きく表示し、奥に行くほど小さく表示するといった見せ方や、移動可能なエリアを工夫したり、背景を宇宙の星々にして、星の流れでスピード感を出す事で、見事な疑似3Dシューティングを実現していたのである。
そんなPC-88版「シルフィード」から7年後、メガCDに「シルフィード」が移植されるという新たな衝撃が筆者を襲う。そしてゲームアーツ自ら移植したメガCD版は、あの時見たシルフィード以上に「シルフィード」していたという衝撃だった。
メガCD版「シルフィード」はPC-88版をベースにリメイク移植した疑似3Dシューティングだ。PC-88版で特徴的だった、ゲーム内に登場する主要なキャラクターをポリゴンで表現している点や、ゲームのシステムとしては2Dシューティングである点はPC-88版と変わらない。
本作最大の魅力の1つは、フル3Dで表現されるポリゴンを多用したオープニングムービーだ。よりディティールが細かく表現されるようになった、シルフィードの自機マシン「SA-77」の基地からの発進シーンなど、各所にムービーが多用されており、プレーヤーのテンションをぶち上げてくれる。
また、ゲームプレイ時の背景にも、CDから読み込んだ3Dムービーをうまく組み合わせる事で、より3次元風のビジュアルを実現している点がポイントだ。
シューティングゲームとしては、疑似3次元シューティングで、ライフ制システムを採用。ダメージを受けるごとにバリアのゲージが減っていき、これがなくなった状態でさらにダメージを受けると、備えている武器が破壊されて攻撃できなくなったり、エンジンがやられて操作がまともにできなくなったりと、実際の操作に実害を被るようになる。その状態でさらに攻撃を受けると撃沈してゲームオーバーとなる。
武器のパワーアップはステージ中は行なえず、ゲームクリア時の出撃前に武器の選択が行なえる。デフォルトは「Forward Beam」を二門備えるが、それぞれを「Wide Beam」や「Phalanx Beam」などに交換する事ができる。ただし、それら武器を装備した状態で出撃してダメージを受けてしまうと武器が故障してしまい、次のステージ以降しばらく使えなくなる場合などがある。ステージ中に登場するアイテムをゲットする事でスコアアップやシールドの回復などが行なえる。
シューティングとしてはかなり難易度が高く、PC-88版の頃から筆者は全くクリアできず、うまい人たちのプレイを後ろから見させて貰う事しかできなかった。メガCD版も難易度はそれなりに高いため、実機でプレイしていた頃は、筆者の腕ではステージの半分までも到達できなかった苦い記憶が残っている。
今回メガドライブミニ2に収録されたことで、筆者でもクリアの可能性が見えてきたのは非常にありがたい。中断セーブをうまく使う事で、多少難易度の高いシューティングゲームであってもクリアできることは、これまでミニ系ハードで何本かのタイトルをクリアして実証済みだからだ。
試しに筆者もメガCD版「シルフィード」に再挑戦してみたが、中断セーブを活かして何度かトライすることで、どうにかステージ3の途中くらいまでは進める事ができた。全12ステージとのことでまだまだ先は長いが、この調子ならどうにかクリアできそうな気がしている。
メガCD版「シルフィード」は今となってはやや古い印象も受ける粗めのポリゴンが逆に魅力の疑似3Dシューティングだ。昔ながらの粗めのポリゴンが好きな人にはもちろんのこと、シューティングとしての難易度も高いので、昔のアーケードゲームとはまた一味異なるテイストの高難度シューティングを遊んでみたい人は是非プレイしてみてほしい。
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