【特集】
【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「シャイニング&ザ・ダクネス」
セガにやらせたらこうなる!圧倒的ビジュアルで楽しむファンタジー3DダンジョンRPG
2022年10月19日 00:00
- 【シャイニング&ザ・ダクネス】
- 1991年3月29日発売
- 発売時のメーカー:セガ
任天堂とセガが、1983年に発売したファミコンと1985年に発売したセガ・マークIIIでコンシューマ市場を競い合っている頃、1987年に登場した「ドラゴンクエスト2」でRPGがブームとなる。そこでセガはオリジナルRPGとして、SFテイストの3DダンジョンRPG「ファンタシースター」をリリース。ハードウェアの制約を感じさせない、滑らかに動く3Dダンジョンは、当時ファミコンで「ウィザードリィ」シリーズをプレイしていた筆者に大きな衝撃を与えた。
当時ファミコンで発売していた3DダンジョンRPGではダンジョンのアニメーションは1マス毎にパタパタと切り替わるシンプルな描写だったし、敵や宝箱なども静止画のみの描写だった。オリジナルの8/16bitパソコン版がさらにシンプルな線画で描写されていたこともあり、まさか動きを入れる事でビジュアルをリッチにするというのは想定外の驚きだったのだ。
そんな「ファンタシースター」シリーズはその後もメガドライブで続編がリリースされるなど人気シリーズになっていくのだが、メガドライブで出たII以降ではファンタジー要素が少なくなっていた。そんなファンタジー要素を拡充するべく登場したのが、独自の世界観を構築して発売したファンタジー3DダンジョンRPG、今回収録された「シャイニング&ザ・ダクネス」なのである。
「ファンタシースター」シリーズでお馴染みの滑らかに移動できる3Dダンジョンだけでなく、街や城までも疑似3D描写するなど、これまで見た事のない斬新なビジュアルはさらなる衝撃を与えてくれた。ダンジョン内で遭遇する敵もかなりもにゅもにゅと小気味よくアニメーションするなど、とにかくビジュアルに関しては言う事のない完成度の高さだった。
ただ、3DダンジョンRPGとして見た場合、難易度が若干高めにも感じられ、仲間が加入するまではかなりシビアな展開が続く。本作はメガドライブとしては大ヒット作となるが続編はジャンルが変わった「シャイニング・フォース」へと引き継がれていき、3DダンジョンRPGとしての続編はメガドライブではリリースされることは無かった。
「シャイニング&ザ・ダクネス」はゲームとしてはオーソドックスな3DダンジョンRPGだ。ストーリーもシンプルで、行方不明になったクレア王女とそれを護衛していた騎士であり、主人公の父親でもあるモトレードを探すため、いにしえの神殿に侵入して2人を探し出すというもの。オープニングで説明を受け、旅の準備を整えて再度城に戻ると、そこには謎の魔法使いメフィストが突如現れ、城を奪うためにクレア王女をさらったと告げて消えていくのである。とりあえずのターゲットが冒頭で明確になる点も分かりやすくてありがたい。
本作は主に街といにしえの神殿を行き来しつつ、物語に進展があれば城を訪れるといった流れで話が進んでいく。宿屋で休んだり、買い物をしたり、データセーブや死んだ仲間を生き返らせるのに必要な街は、入ると主人公を中心に円形の形状になっており、カーソル操作でどんどん回転しながら店が切り替わる疑似3Dのビジュアルとなっている。
このビジュアルだけでもかなりの衝撃だったのだが、個人的に街でさらに衝撃を受けたのは酒場だ。街の中に流れるBGMは最初のうちはボリュームがやや小さめで、どこか遠くから聞こえているようなか細い音量なのだが、酒場に入るとその理由がはっきりする。酒場に入った途端にBGMのボリュームが上がり、通常時の音量に戻るため、街の中で聞こえていたBGMが実は酒場で鳴っていたという演出が仕込まれているのだ。
本作ではとにかくテキストでの選択という要素が最小限になっており、前述の街や城、いにしえの神殿への移動はマップ表示で場所を指定して移動する。他にも店での買い物や戦闘時などに選択するコマンドが全てアイコンとなっており、見ただけでもある程度何をするコマンドかが分かるようになっているのが非常に特徴的だ。
こうしたこだわりのビジュアルについても「シャイニング・フォース」シリーズに引き継がれる要素となっている。
3DダンジョンRPGとしてみた場合、正直なところ本作は序盤がいきなりハードモードだ。物語をある程度進めるまで、主人公は1人で冒険する必要があるのだが、ダンジョン内の敵はいきなり複数で登場するからだ。
ここで筆者は当初いきなり1ランク上の武器、ショートソードを無理に購入したこともあり、防御が弱くて何度も死にかけた。ひどい時はいにしえの神殿に潜って最初の戦闘でいきなり瀕死になり、そのまま街に戻るなんて事もしばしばあった。
本作はオーソドックスな作りのため、最弱であっても防具自体の効果がかなり高い。そのため、防具や武器は最初に貰えるお金でなるべくしっかり防御を固めるのがベストだろう。主人公はデフォルトで、けおりのふくと、ブロンズナイフを装備しているため、最初にもらえるお金で追加の防具として、ぬののフードや、かわのこてなどを買ってじっくり防具を固めるのが長生きできるコツと言える。
もし筆者のように武器のみ強力にしてガンガン攻めたい場合は、逆に思い切って金を全部やくそうなどに変えてしまい、金を持たない状態にした上で、ダンジョンで死ぬまでガンガン戦うのがおススメだ。
本作は死ぬと教会に戻されるが、その際に手持ちの金が半分になるシステムとなっている。そのため、最初のうちは金を貯めるのではなく、経験値を貯めるためにひたすら戦い、金にゆとりがあったらやくそうを買って手持ちを減らしてダンジョンに潜る。これでレベルを上げまくり、数回の戦闘で敵からダメージを受けなくなるくらいまで強くなってから、金を貯めて装備を拡充していくのがいいだろう。
もちろんメガドライブミニ2ならではの中断セーブ機能を使って、ヤバい状況になったら1歩歩くごとに中断セーブを繰り返して無傷で帰還という戦略もアリだろう。こういう無茶ができるのも中断セーブ機能の魅力の1つといえる。
主人公1人旅の最終目標は最初の中ボス「サーベルクラブ」だ。攻撃力がかなり高い難敵だが、レベルを上げた上で防御をしっかり固めた状態で挑めば死中に活ありだ。サーベルクラブの初登場シーンもかなり衝撃だった。通常のモンスターとのエンカウントと異なり、ダンジョンの脇道からいきなり、ガサガサという音とともに、サーベルクラブが姿を現し、そのまま戦闘に突入するのだが、ダンジョンの作りを活かしてこういった演出を入れるセンスは見事だと感じた。
サーベルクラブさえ倒せれば、以降はストーリーが進展し、さらに仲間が加入して3人でプレイが可能になる。主人公は魔法を使えない生粋の戦士だが、追加の仲間は回復魔法も使えて戦闘もこなせるホビット族の僧侶見習いのビルボと、攻撃魔法が強力なエルフ族の魔法使いのマーリンだ。ん?どっかで見た事のある3人の組み合わせだって?サマルトリアとムーンブルクだって?まぁこの3人で冒険するようになれば、以降はかなりスムーズに進められるようになるので、焦ることなくじっくり敵を倒してレベルを上げて金を稼いでと進めていけば問題ないだろう。
特にマーリンが使える「プロジェクト」の魔法はセミオートマッピングの機能で、使うと周辺の地図やマップ内の現在位置を示してくれるようになるので、手動マッピングしているならかなり重宝するだろう。これまでは消耗品のアイテム「ちかくのみ」を使う必要があったので、これで勝ったも同然だ。
「シャイニング&ザ・ダクネス」は、メンバーが固定だったりと、かなりシンプルなシステムの3DダンジョンRPGながら、ダンジョン内のユニークな仕掛けなど、3DダンジョンRPGを色々遊んだことのあるプレーヤーでも驚かされる仕掛けがてんこ盛りのRPGに仕上がっている。
後の「シャイニング・フォース」に繋がっていく「シャイニングシリーズ」の第1作目として、玉木美孝氏がデザインするビジュアルによる独特の世界観の構築やアイコンシステムなど、シリーズの系譜を感じさせる要素も多いので、「シャイニング・フォース」シリーズが好きな人で未プレイの人がいたら是非プレイしてみてほしい1本だ。
©SEGA