【特集】

【メガドライブミニ2タイトルレビュー】「ソーサリアン」

日本ファルコムの名作アクションRPGが完全オリジナルシナリオで登場!

【ソーサリアン】

1990年2月24日 発売

発売時のメーカー:セガ

 8bit/16bitパソコン全盛の時代に最も遊んでみたかったRPGの筆頭として挙げられるのが「ソーサリアン」だ。横スクロールの画面をぴょんぴょん飛び跳ねながら、最大4人のキャラクターが一列になって剣をちまちまっと振りながら移動する様子は、筆者の目には非常に魅力的に見えたのだ。

 また、「ソーサリアン」と言えば「不老不死」というワードが常に目に入ったのも気になるポイントの1つだった。キャラクターたちを「不老不死」にできる方法やステージ攻略の情報などは当時のパソコン雑誌などでよく見かけており、この「不老不死」がRPGのキャラクターたちにどのような影響をもたらすのかが、当時は全くピンと来ていなかったからだ。

 BGMについても非常に魅力的だった。「ソーサリアン」のBGMは古代祐三氏が担当していたのだが、当時高校生だった我々は古代祐三氏のファンであり、サントラを購入して、そのサウンドを存分に堪能していた懐かしい想い出が残っている。

 8bit/16bitパソコンで発売した「ソーサリアン」がさらに魅力的だったのは追加シナリオの数々だ。パソコン版の「ソーサリアン」では購入時には15本のシナリオが付属しているが、シナリオのみの単体販売も行なわれており、これを追加購入することで、自身が作成して育てたキャラクターをこうした他のシナリオで遊ぶことができたのだ。

 ちなみに1988年に追加シナリオとして「戦国ソーサリアン」と呼ばれるシナリオが発売された際に、販促品の下敷きを貰ったことがあるのだが、この下敷きに書かれていたあらすじがどれも面白かったのだ。簡潔に書くと、織田信長や豊臣秀吉など当時の戦国武将たちが、実は魔物に乗っ取られており、ソーサリアンがそれを退治しに行くというストーリーなのだ。このあらすじが面白過ぎたのが、「ソーサリアン」をやってみたかった1番の理由かもしれない。

 しかし、これほど憧れた「ソーサリアン」だが、筆者所有の8bitパソコン、MSXでの発売は遅れに遅れて1991年に発売されたのだ。流石に「戦国ソーサリアン」に憧れたあの頃から3年もの月日が経過しており、あまりテンションは上がらず、時期的に見てもMSXはリリースされるタイトルも減ってきており、追加シナリオの発売は絶望的と考え、結局MSX版「ソーサリアン」を買う事はなく、現在に至っているのだった。

 ところがである。今回本稿を執筆するに当たって調べてみて驚愕した。MSX版「ソーサリアン」の発売(1991年8月)直後、1991年12月にはMSX版「戦国ソーサリアン」もしっかりリリースされていたのだ。こうなる事が分かっていたら無理にでも買って遊んでいたかもしれない。もしくはせめてもう1年早く発売されていたらプレイしていたかもしれない、と書いたところで、メガドライブ版「ソーサリアン」の発売日をチェックすると、なんとMSX版より1年以上前の1990年2月に発売されていたのだ。

 ということで、メガドライブ版「ソーサリアン」について、当時は全くの未チェックだったが、今改めて見てみると、パソコン版を遊んだ事がある人でも気になるポイントは多い。先ず全10本の完全オリジナルシナリオがプレイできる点だ。「ソーサリアン」のシナリオは完成度の高い物が多く、どんなシナリオなのか興味が掻き立てられる。

 なお、コントローラでのぴょんぴょん操作についてだが、控えめにいっても最高だ。本作のジャンプはカーソルの上入力で行なわれるが、ジャンプ力には限りがあるため、カーソルを斜めに入れて操作していると、ジャンプしながらぴょんぴょんと移動してくれる。この感覚が非常に心地よく、クセになる気持ちよさだ。パソコン版で見てきた人もこの動きを体感すればきっと気に入るはずだ。

タイトル画面でスタートを押すとテキストのみの簡素なキャラクター管理画面が表示される。ここでキャラクターを作ったり、職業を変えたり、冒険に出るパーティーを組んだり、解散したりなど様々な操作が行なえる
キャラクターメイキングでは名前を決めて、職業(CLASS)を決めたら後はデフォルトのステータスを操作したり、ボーナスを割り振ってステータスを決定する。年齢を上げる事で、レベル1時のステータス上限、10まで上げることも可能だ
「不老不死」作業時に時間を進めまくる際にはなるべく収入の高い職業につくことで、お金が稼げる。どろぼうが誰でもできる簡単なお仕事なのだが、レベルアップなどに影響するKRMがガンガン下がるのでご利用は計画的に
シナリオを選択して冒険に旅立つ。ステータス画面は左がHP、右がMP。今回は「不老不死」作業中の人間年齢60歳以上の「OLD」状態で冒険に出たため、老人っぽいビジュアルに変化している。戦士やドワーフは武器を使った攻撃、エルフや魔法使いは魔法主体で戦闘する

 「ソーサリアン」のシステムは基本的に、戦士(FIGHTER)、魔法使い(WIZARD)、ドワーフ(DWARF)、エルフ(ELF)の4つの職業、それぞれ男女の性別が別れているので8種類の組み合わせからキャラクターを作成し、そのうち原則として最大4人まででパーティーを組んでシナリオに挑戦するというもの。

 ドワーフやエルフが種族ではなく職業という括りになっているのは、最初のPC-8801用「ソーサリアン」が1987年発売とかなり昔のリリースである事に起因するだろう。種族を職業の1つとしてカウントするシステムは、古くはテーブルトークRPGの元祖とも言える「Dungeons & Dragons」で採用していた仕組みだ。「ソーサリアン」におけるドワーフはより物理攻撃に長けた戦士寄りの種族として設定されており、エルフは魔法の能力に長けた魔法使い寄りの種族として設定されている。

 キャラクターには職業ごとに決められたステータスが予め割り当てられている。攻撃力のSTR、防御力のPRT、体力のVIT、会話やレベルアップの際に高い方が有利になるKRM、魔法を使うのに必要なINT、魔法に耐える能力としてMGR、罠などの回避能力のDEX、そして年齢があり、ここに初期メイキング時に貰えるボーナスポイントを割り振ったり、調整することで、キャラクターを作成する。ポイントとして、年齢も調整が可能で、不足するポイントを年齢で補うことができるのだ。例えば年齢を上げるほど、他に割り当てられるポイントが増やせる。そのため、いきなり全ステータスをレベル1のMAX状態まで上げる設定も可能だが、年齢は高齢になってしまうデメリットもある。

 本作では年齢がかなり重要な要素となっている。というのも、種族毎に年齢の区分が設定されており、例えば人間の場合は16~39歳が「YOUNG」、40~59歳が「ADULT」、60歳以上は「OLD」となる。OLDの年齢になると、年を重ねるごとにステータスは低下するし、寿命が来ると老衰で死んでしまうのだ。年齢面で言うと、エルフやドワーフは人間よりも寿命が長く、ドワーフは59歳までがYOUNGの扱いだし、エルフにいたっては99歳までがYOUNGだ。そのため、彼らを使ってパーティーを編成するという手もあるが、エルフやドワーフは寿命が長い反面、レベルアップに必要な経験値が人間よりも多く必要になるという弱点もある。

 年を取らないようなプレイを心掛けるという手もある。だが、本作における魔法は呪文を覚える、といったシンプルなものではなく、武器や防具に「火星、水星、木星、月、太陽、金星、土星」の7惑星の魔力を掛け合わせることで使える魔法が決まるという非常に複雑な物となっており、この魔法をかける作業だけでも1つの星の魔力を掛けるのに3年もの月日が必要になる。

 例えば「FLAME」の魔法を使える杖を作るには、杖を街にある魔法使いの家に持っていき、金を払って「太陽」の魔法をかけてもらう。そこから3年待って杖を回収し、再度「火星」の魔法をかけてもらう。ここで再度3年待って杖を取りに行けば、その杖を使う事で「FLAME」の魔法が使えるようになる。つまりこの杖1つで6年もの月日が奪われてしまうのだ。

 他にも1度作成したキャラクターの特定のステータスを向上したい場合には道場で修行することで、個々のステータスをアップできるが、これにも1~2年の月日が必要になる。このように本作では年齢が非常に重要な要素となっているのである。

 そこで出てくるのが「不老不死」を使ったテクニックだ。「不老不死」はその名の通り歳を取らなくなる効果で、老衰で死ぬことがなくなる。「不老不死」は復活時に発生する副作用の1つであり、仕様として決められた物だ。「不老不死」が発生する条件は非常にシンプルで、年齢区分がOLDの状態のキャラクターが死亡し、死後20年が経過した死体から復活を試みて成功した場合に副作用として「不老不死」が発生する。

 例えば人間の戦士や魔法使いを不老不死にしたい場合、60歳まで年齢を上げた状態で死亡する。死んだあとは20年死体を放置する。20年後に魔法使いの家や寺院に行って復活を依頼して成功すると、復活すると同時に副作用で「不老不死」になった旨のメッセージが表示される。なお、この時の復活確率は10%しかないため、メガドライブミニ2で試す時は中断セーブを事前にかけておき、失敗したらロードし直しを繰り返せばスムーズに復活させられる。

 「不老不死」その物の手順はこれで完了だが、このまま年数を経過させてしまうと、ステータスがどんどんと下がっていってしまう。そのため、「不老不死」をやる場合は、並行して年齢を若返らせる「REJUVENATE」の魔法を取得し、この魔法を使って、少なくともADULTの区分、人間なら59歳未満まで若返らせる必要がある。

 「不老不死」その物の手順はシンプルながら、むしろ「REJUVENATE」を使えるようにするところまでが一苦労だ。というのもこの魔法、かなり高位魔法のため、消費MPが200というとんでもない魔力を消耗するからだ。消費MPが200ということは当たり前だが、最大MPが200未満のキャラクターは魔法が使えない事を意味する。

 これをどう稼ぐか、については「ソーサリアン」シリーズのもう1つのユニークな特徴の1つ、職業を利用する。本作ではゲームに直接的にはあまり影響しない職業に就くことができる。メニューにある「職業をかえる」を選択すると、60種類くらいの職業から1つ選択できるのだ。誰でもどの職業につけるというわけではなく、職業には種族と年齢、性別、能力値が条件となっている。

 職業の中には金が稼げるがKRMが低下するものや、ステータスが向上するもの、経験値がより多く稼げるものなど色々あるので、この中から経験値が稼げる職業について何年もの時を経過させれば、これだけでレベルを上げられる。レベルが上がれば、HPやMPも増えるため、若返りの魔法も使えるようになる、という寸法だ。

 実際の冒険に出るには「不老不死」のキャラクター作成だけでは不十分だ。作成したキャラクターのステータスのうち、必要な物は全て上げられるだけ上げておかないと冒険で苦戦する。そのため、ここでも何年かかけてじっくり修行する事で申し分のないキャラクターが作成でき、冒険の道中もあまり苦労せずにシナリオに専念できるようになる。

OLDの状態にしたキャラクターを殺して死体にして20年経過、復活確率10%の狭き門を潜り抜けると副作用で「不老不死」になる。手順自体は簡単だが、若返らないと時間経過でステータスが減ってしまうため、実践投入できない
「不老不死」にして若返りまでは完了したが、ステータスを調整せずに無理矢理冒険に連れ出してみたところ、見事に死んでしまった。「不老不死」の“不死”はあくまでも老衰での死がなくなるだけで、HPがなくなれば普通に死んでしまう
死体を20年放置したり、適当な職業で時を過ごしてしまうと、ステータスがボロボロの状態になってしまう
ステータスを上げる最も有効な方法は道場で鍛え直す事だ。1~2年の修行でステータスを大幅に上げられる

 今回は何度かリセットして色んなパターンでプレイしてみた。先ずは冒頭でも触れた「不老不死」キャラクターで挑戦してみた。前述の通り準備にかなりの時間を要するが、作成したキャラクターで最初のシナリオ「はいいろのダンジョン」に挑んでみたところ、かなり楽勝ペースでスムーズに進められて、ボスも余裕で撃破してクリアすることができた。

 キャラクターメイキングに時間をかけたくない人には、「サンプル・キャラクター」も用意されている。男の戦士「DUEL」と男のドワーフ「GOLCUS」、女性の魔法使い「CRYSTY」、女性のエルフ「IRENA」の4人組だ。これらキャラクターたちはレベルこそ低いものの、予め魔法のかけられた装備を持っていたり、魔法のくすりを所持しているなど、いきなり冒険に出られる状態で用意されている。

 一方でレベルが低いこともあり、このサンプルメンバーで「はいいろのダンジョン」に挑戦してみたが、道中などでダメージを受けるとかなり厳しく、敵をうまくかわしながら、途中で回復の魔法を使って回復しながら少しずつ進めていくことで、なんとかボスを倒さずにクリアすることで突破できた。

 なお、「はいいろのダンジョン」では特定のアイテムを集めてダンジョンを封印することが目的のため、最後にボスが登場するが、このボスは無視したままでもクリアできる内容になっている。

 サンプルメンバーでもクリアできたので、「不老不死」を行なわずにあえてノーマルのキャラクターを用意してじっくり慎重にプレイして進めるといった遊び方でも「ソーサリアン」は十分に楽しめそうだ。ただし、最初の段階で魔法などについてはじっくり検討、吟味しておかないとあっさり老衰で死んでしまう恐れがある。

 今回初めて「ソーサリアン」をガッツリプレイしてみたが、魔法のシステムや職業のシステムなど、非常にユニークかつ、懐かしさも感じるキャラメイクだった。こうしたベタなキャラクターメイキングは近年では「Wizardry」シリーズでくらいしかお目にかからないが、「ソーサリアン」も十分に魅力的なキャラクターメイキングだと感じられた。当時やってたらハマりすぎて色々人生変わったかもしれないな。

 シナリオは今回「はいいろのダンジョン」しかプレイしていないが、実際のところ、攻略情報抜きではかなりハードな内容だ。横スクロールのアクションに様々な仕掛けを施しているため、難解な仕掛けが多く、ヒントなしでクリアするには、かなりの時間が必要になりそうな内容だった。逆に言うと、作りがシンプルな分、覚えてしまうとスムーズに抜ける事もできてしまうため、ネットなどの攻略情報を安易にみてしまうと、楽しみがなくなってしまうという悩ましさもある。

 何はともあれ、メガドライブ版「ソーサリアン」を通じて「ソーサリアン」自体の魅力も知ってしまったので、今度は8bit/16bitパソコン版の「ソーサリアン」に挑戦してみても面白いかもしれないと考えている。その前に先ずは、メガドライブミニ2収録の「ソーサリアン」をガッツリクリアしたり、「不老不死禁止」縛りでプレイするなどして、本作を存分に堪能していきたい。

本作の魔法は武器や防具、アクセサリを触媒として、そこに7星の神の魔法の掛け合わせることで使えるようになる。D.Slayerは最強の攻撃魔法だ
城の謁見室にいくと、経験値が貯まっていればレベルアップできる。レベルアップでステータスの最大値があがったり、最大HP/MPも増加するのでこまめにレベルアップ確認しておくのが大事。特に「不老不死」作業や、「魔法」関連作業などやっている間は、時間を経過させるため、経験値が少しずつ稼げる
こうして育成した「不老不死」キャラクターたちでパーティを組んで、最初のシナリオ「はいいろのダンジョン」に挑戦してみたが、ボスも難なく撃破できた
「はいいろのダンジョン」では、ボス戦をスキップしてもクリアできる。そのため、デフォルトで用意されている「サンプル・キャラクター」4人で挑んでみたが、ボス戦スキップでクリアできた。ボスを倒した分の経験値が少なくなってしまうが、安全策でいくなら何度もクリアして経験値を稼ぐ手段も有効だ
シナリオクリア、未クリアに関わらず、拠点に戻ってきた際に入手したアイテムや金は全て均等に分配する
冒険に出ると使えるメニューの中にある「スピード」はメッセージスピードなどではなく、シンプルにゲームの速度がコントロールできるメニューだ。デフォルトでは「おそい」だが、これを「はやい」にすると、人間では制御できないすごい速度になる。一見すると使えない機能だが、移動速度が上がるというより、時間の流れが全て早くなるため、MP自動回復の速度も超速になるので、若返り魔法「REJUVENATE」を何度もかけたいような場合はここをコントロールするといいだろう
メニューの「そうび」からは、装備の武器を振って直接戦うか、魔法がかけられた装備を使うかが選択できるので、新たに魔法が使えるようになった場合は、奥に行く前に魔法を使う装備を選択しておこう
本作では老衰で死んだ場合、キャラクターの作り直しが発生する。ここで作り直しを選択すると、年齢とレベルは初期状態に戻ってしまうが、アイテムやステータスを引き継いだキャラクターが作成できる。ステータスはレベルで上限が決まるため、どんなに上げても最大10までしか引き継げないのは残念なところだが、初期ステータスと比べるとかなり有利な状態が継続できるので魔法を掛ける場合などはかなり役に立つだろう。公式の情報でも、強力な魔法が宿ったアイテムを次世代のキャラに引き継ぐことができる、世代交代システムを搭載と書かれているので、こちらが本来意図したプレイスタイルだ
サンプル・キャラクターで最初のシナリオ「はいいろのダンジョン」に再度挑んでみた結果、見事にボスも撃破してクリアできた。1度クリアしてみると、ゲームの実際のプレイ感が分かるので試してみるのもいいだろう。シナリオはいきなり難度が高めなので、事前に攻略情報など調べておくのをおススメしたい。1度キャラクターを作ってからサンプル・キャラクターを呼び出すと事前に作っていたキャラクターはリセットされて消えてしまうので試してみるなら事前に呼び出しておくのがいいだろう
本作はキャラクターメイキングにじっくり時間をかけたり、難解な2Dダンジョンのシナリオを試行錯誤を繰り返してじっくり謎解きして楽しむというタイプのアクションRPGだ。そのため、最初のうちはどうしていいか分からない点も多く、とっつきにくさを感じる部分も多い。ただ、仕組みが分かってくると、どっぷりと沼にハマれるほどの中毒性を備えているので、根気よく遊んでみてほしい