【特集】
【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「ネクタリス」/「MILITARY MADNESS」
月面を舞台とした戦略シミュレーションの傑作。これでこのジャンルにはまった人も多いはず
2020年3月13日 00:00
- 1989年2月9日 発売
「ネクタリス」(海外タイトル「MILITARY MADNESS」)は、1989年にハドソンがリリースしたシミュレーションゲームだ。ヘックス(六角形マス)スタイルの本格派な戦略シミュレーションながら、初心者にも取っつきやすいルールを採用していて、操作面のレスポンスのよさや耳馴染みのいいサウンドなどが高く評価された、PCエンジンを代表するオリジナルタイトルである。
舞台は21世紀末、月面に進出した人類は、その豊富な資源を巡って対立。強国「ガイチ帝国」は月面を武力によって支配し、工場は占領され、地球攻撃用最終兵器「MOA」の開発が進みつつあった。ガイチ帝国の収容所から脱出した捕虜達は連合軍を組織し、最終兵器が開発される「ベース・ネクタリス」を目指すというハードなストーリーが展開していく。
ゲームはターン制の戦略シミュレーションで、通常プレーヤーは連合軍(青色)の部隊を指揮し、ガイチ軍(緑色)の部隊を退け、全ての敵ユニットを破壊するか、敵軍の「収容所」を占拠することで次のステージへと進めるようになっている。逆に敵に同条件を満たされてしまうとゲームオーバーとなってしまう。ステージは全16個存在し、先に進むほど広く複雑な地形となっている。ステージ名がそのままコンティニュー時のパスワードになっているのも面白いところだ。
部隊を編成するユニットは8カテゴリー23種類の個性的な兵器が登場する。各ステージには両軍規定数のユニット(1ユニット8機編成)が最初から配備されていて、自軍のターンでこれらを動かして戦っていくこととなる。戦力の要となる戦車や施設を占領できる歩兵、遠距離の敵ユニットを攻撃できる自走砲、攻撃後に移動可能なミサイルバギー、圧倒的な移動力と攻撃力を持つ航空機、敵の動きを封じるための地雷など、その性能は個性的で、その見た目も今に通じるデザインだと個人的には思う。
特筆すべきは、本作ではこれらユニットの生産ができないということ。敵や中立(黄色)の「工場」を占領することで、その中に存在するユニットを自軍に加えることができ、自軍の工場では機数の減ったユニットを補給することもできるが、ユニットは撃破されてしまうとそこで終わりなので、それらのルールに基づいた戦略を必要としている。またこれにより戦略シミュレーションにありがちな、長期戦でユニットがどんどん増えていくような泥沼の戦いに発展しないという利点もある。
本作をプレイしたことで筆者も覚えることができたのが、戦略シミュレーションにおける「地形効果」と「ZOC(Zone Of Control)」の概念だ。前者はマップ上の地形がユニットの移動や防御に影響するというもので、荒れ地や丘などの特殊な地形は移動力を多く消費するため動きづらくなるが、敵からの攻撃に対して防御効果をもたらしてくれる。地形を上手く利用すれば、ピンチを乗り切ることも不可能ではないのだ。
一方後者のZOCとは、ユニットの周囲6マスの支配範囲を表すもので、ここに入った敵のユニットは強制的に止まらなければならない。ZOCの範囲内は1ターンで1マスしか動けないため、敵をうまく包囲することで、その動きを止めることができるのだ。またZOCの範囲内にいる味方には「支援効果」が発動する。攻撃するときに味方と隣接するように移動してから行なえば攻撃力が増し、逆に味方と隣接したユニットが攻撃されたときは防御力を得られる。さらにZOCで敵のZOCを包囲したときは「包囲効果」も発動。このときは敵ユニットの防御力を半減させ、大きな戦力をもって攻撃を行なえる。
プレーヤーは地形やZOCを意識してユニットを動かすことで、より有利に戦えるという戦略が成立する。難しく考える必要はなく、ユニットはできるだけ複数で動かし、攻防時は隣接させたり包囲したりすることを心がけることが、ベース・ネクタリスまでの近道となるだろう。
本作にはいくつかの裏技的なものが用意されていて、中でも一番大きいのは「裏ステージ」の存在だ。各ステージはその名前が6文字のアルファベットで表記され、それがステージ単位のコンティニュー用パスワードとなっているわけだが、これを逆から入力(例えばステージ1「REVOLT」なら「TLOVER」)すると、全16ステージクリア後にプレイできる“2周目”としての扱いとなる、同じマップを使った高難易度のステージに挑戦できるのだ。最初からたくさんのユニットが登場したり、配置が特殊だったりとやり応えのある内容で、16ステージでゲームに慣れたプレーヤーが挑む上級者向けステージなので、ぜひ挑戦してみてほしい。
レスポンスのいい操作感覚に加え、コンピュータの思考速度もそこそこ速い(ただしユニット数に比例して、思考時間は長くなる)ゲームデザインで、PCエンジン miniに収録されたことで中断ややり直しも可能となり、さらに遊びやすくなった。普段この手のジャンルを遊ばない人も、この機会に楽しんでみてほしい。
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