【特集】
【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「天外魔境II 卍MARU」
舞台は"ジパング"!アニメ演出が光るボリューム満点のRPG
2020年3月19日 00:00
- 1992年3月26日 発売
1992年発売の「天外魔境II 卍MARU」は、天外魔境シリーズの2作目となるコマンド式RPGだ。「天外魔境」シリーズと言えば、前作「天外魔境 ZIRIA」を皮切りに、本作に登場するカブキ団十郎を主人公にした外伝「天外魔境 風雲カブキ伝」、アーケードカード専用の対戦格闘ゲーム「カブキ一刀涼談」などがPCエンジンでリリースされており、PCエンジンを代表するシリーズという印象が強いが、その後もプラットフォームを変えて「天外魔境ZERO」、「天外魔境 第四の黙示録」、「天外魔境III NAMIDA」などがリリースされている。
筆者は今回始めて本作をプレイして、時間の都合上クリアまではたどり着けなかったもののサクサク進むバトルやドラマティックな物語、派手なアニメーションなどにより、本作の世界観にあっという間に引き込まれてしまった。
派手なアニメや会話の駆け引きが面白い!ドラマティックな物語の連続も胸を打つ
1,000年前にジパングを支配しようと企む地底の国「根の国」の王ヨミがいた。ヨミはジパングを守護する「火の一族」に封印されたが、ヨミ復活を企む者の手により再び封印が解かれようとしていた。ジパングではヨミ復活のエネルギー源となる禍々しい巨大な花「暗黒ラン」が復活し、各所で魔物が暴れ出して大ピンチ。ヨミ復活を阻止するために、「暗黒ラン」を再度封じようと、「火の一族」の末裔が1人である「戦国卍丸」はその使命を果たすために旅に出た、というのが本作のストーリー。これら暗黒ランを斬るには聖剣が必要になるため、この聖剣を集めながら各地の暗黒ランを斬ってジパングを守るために戦う、というのが卍丸の目的となる。
本作には卍丸以外にも同じ火の一族の末裔たちが仲間になる。お調子者のカブキ団十郎、1,000年前からの生き残り、怪力が自慢の極楽太郎、そして酒呑童子と火の一族の巫女との間に生まれた娘、絹の4人で、彼らと出会い、親交を深め、敵に立ち向かっていく。
本作はオーソドックスなコマンド式RPGだ。ランダムエンカウントで敵と遭遇し、武器を装備して戦ったり、各地の天狗からもらえる術を駆使して敵を倒していく。
戦闘は簡素なアニメ演出で敵のキャラクターが動いたり、重要なキャラクターの場合は戦闘前にしゃべったりする演出が多く使われているのも面白い。特に敵の骨だらけの3体のボスキャラ「死神兄弟」はそれぞれ単体で卍丸に敗れたあと、秘術で合体し、死神将軍に変身するのだが、この合体シーンのムービーがかなりカッコいい。このように通常の戦闘シーン以外にもちょっとした演出のムービーが多く盛り込まれているのも本作の特徴の1つだ。
また、敵の残り体力が敵のキャラクターの上に数値で表示されているので、戦闘時に色々計算しながら戦いやすくて助かる。かなり便利な機能なのに、他では全然見かけないのは不思議なことだ。
フィールドやダンジョンなどにも凝った仕掛けがある場所も多く、また通常の徒歩以外の移動手段が序盤のうちから色々と出てくるのが面白い。例えば船が使えなくなってしまった地域で、船が必要になってしまった。そこで仙人から船が描かれた「ヘタな絵」を貰う。このヘタな絵をお地蔵さまの前で使うと船が実体化し、本物の船として使えるようになるのだ。
他にもSFっぽい要素やギミックも多く出てくるため、ジパングという国の不思議な感じが伝わってくる。
システム的な本作のユニークなこだわりとして、持てる道具の数の制限があげられる。本作の主要キャラはそれぞれ体格が異なる。そのため、体格に応じて持てる道具の数が異なるのだ。例えば卍丸とカブキはどちらも同じ量しか道具が持てないのだが、より体格が大きい極楽太郎は彼らより3つ多く道具が持てる。この辺りの管理がかなりシビアなため、洞窟などで宝箱を見つけても全て回収しきれずに捨てておく必要も出てくるのがつらいところだが、開発者たちのこだわりが感じられるポイントだ。同様に本作では、術の書かれた巻物も仲間によって持てる数に制限がある。術の得意な絹なら他の仲間たちより多くの巻物を持ち、使う事ができる。
また、舞台となるジパングが昔の日本がモデルとなっているため、地域の名前が出てきた時の親近感がハンパではない。フィールド上でレベリングしている時も、今はこの辺で戦っているのかな、など想像しながら楽しく戦闘を行なえる。
さて、本作の感触だが筆者はとりあえずカブキが仲間になり、カブキのライバルキャラ、菊五郎が登場し、壮絶な舌戦を繰り広げるところまでは進めることができたが、とにかく本作はボリュームが凄まじい。なるべく本筋のみを進めるように最短ルートで走ってきたが、まだ先は長い。7本もある暗黒ランのうちまだ1本しか切れていないし、まだ極楽太郎も絹も仲間にできていない。
でもそんな状況下であっても、サクサクとテンポよく進められる戦闘シーン、魅せる演出はじっくりと声やムービーが付いており、ジパングの世界にどっぷりと入り込める。昨今のゲームではカットシーンも珍しくないが、この時代のゲームのムービーシーンのように大量のCGを惜しげもなく使い、時にはプログラミングの技術で演出するという手間のかかる作りの作品は出ないだろうと思われる。
豪華声優陣の夢のような共演を堪能
そしてSUPER CD-ROM2ならではの本作の最大の魅力はとにかくキャラクターの音声付きのセリフがたくさんあることだ。しかもそこには非常に豪華な声優陣が起用されており、オリジナル作品でここまでゴージャスな声優の使い方をするタイトルは出ないのではないかと思うほどだ。
具体的には冒頭で触れたカブキ団十郎に山口勝平氏、また、そのライバルキャラの菊五郎には千葉繁氏が起用されており、どこかで聴いた事があるような2人の掛け合いが存分に楽しめるのである。また、道中に登場する敵方の悪の三博士という定番キャラクターたちがいるのだが、彼らの声がそれぞれ、永井一郎氏、宮内幸平氏、内海賢二氏ともう声優マニア的には垂涎モノの超ベテラン揃いのキャスティング。また、絹の声を演じるのは歌手の井上あずみ氏で、本作は彼女が声優に挑戦した初めてのゲーム作品でもあるのも驚きだ。
「CERO:D相当」の成果を見よ! ほぼオリジナル版のままのPCエンジン mini!
PCエンジン miniの追加タイトル発表時にコナミデジタルエンタテインメントの吉室ディレクターは、「CERO:D相当」の表現までは修正せずに収録するとしており話題にもなった。
実際にこれらの修正についてプレイして自分の目で確認してみようとも思ったが、残念ながらプレイ状況があまり進んでいないため、実際に確認できたのは弁天のビジュアルカット1点のみだった。ビジュアルを見せてしまうのはネタバレにもなるので控えるとして、結論を言ってしまおう。原作再現度は高いぞ! やったぜ!
ということで、本作については見どころが盛りだくさんすぎて、正直なところまだまだ語り尽くせていないが、そのくらいすごいボリュームの大作が58本のうちの1本として収録されているというのは、なんとも非常に贅沢な話だ。他のシリーズもオリジナルに近い状態でプレイできる環境になることを願いたい。
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