【特集】

【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「沙羅曼蛇」

縦横スクロールがステージごとに変わるシューティング。PCE版はラスボスも攻撃してくるぞ!

1991年12月6日 発売

 PCエンジンには当時、アーケードゲームからさまざまなタイトルが移植されていたが、今回の「PCエンジン mini」シリーズのうち、北米で発売される「TurboGrafx-16 mini」と欧州でリリースの「PC Engine Core Grafx mini」だけで遊べるのが「沙羅曼蛇」だ。今回は、「TurboGrafx-16 mini」を借りることができたので、そちらでのプレイレビューをお届けしよう。

「グラディウス」から、よりシンプルなシステムになった「沙羅曼蛇」とは

 「沙羅曼蛇」は1986年にゲームセンターに登場し、専用筐体から奏でられる重厚なステレオサウンドと、ステージごとに縦横に変わるスクロール、回収したパーツがそのままパワーアップになるというシステムなどで、大ヒットとなったシューティングゲームだ。PCエンジンに移植されたのは1991年ということで、当時の雑誌などに掲載された写真はアーケード版と比べても遜色ないものだった。

 筆者は「沙羅曼蛇」をアーケード版とX68000版でプレイしており、どちらも1周目はクリアできる程度。学生時代にPCエンジン版を知り、それも遊びたいと思ったのだが、残念ながら周りにPCエンジンを持っている人がいなかったため、その願い叶わずに現在まで来てしまった。そのような経緯もあり、実は今回のプレイを楽しみにしていた。

 「沙羅曼蛇」は奇数ステージは横、偶数ステージは縦にスクロールするシューティングゲーム。赤い敵を倒すとパワーアップアイテムが出現し、それを取ることで自機が即パワーアップする。「グラディウス」では、パワーアップカプセルを回収するとパワーアップゲージが点灯し、それがほしい場所に来た時にパワーアップボタンを押すというシステムだったことに比べると、かなりシンプルでわかりやすいといえるだろう。

「沙羅曼蛇」は奇数ステージが横スクロールで、偶数ステージが縦スクロールになっているシューティングゲーム。デモシーンでは、敵を倒してパワーアップアイテムを取るとパワーアップします、という説明が行なわれる

 ステージ1を始め、最初のザコ編隊を倒して細胞部分に進むと、何やら壁からの細胞の生え方に違和感を感じる。“あれ?”と思いながらも先へと進んでいくと、敵の出すパワーアップパーツが記憶と違う……思わず動揺してミスすると、なんと特定地点まで戻されての再スタートに! ここに至り、鈍い脳がようやく回転し始める。つまり、見た目はAC版ライクになっているものの、敵のアルゴリズムやパワーアップパーツの出現パターンなどには、いろいろとアレンジが加わっていたのだ。

AC版といわれても、遠目からでは気づかないほど良く出来ている。敵のパターンは違うが、それがかえって新鮮に感じられた

 しかし、そうとわかれば早いもの。基本システムは「沙羅曼蛇」なのだから、クリア出来ないわけがない。ミス後の再スタートも、それなりの装備になるように敵が出現するため、思った以上にリカバリもしやすいのだ。これなら、他機種版で挫折した人でも上手にプレイ出来るかもしれない。パワーアップパーツの登場パターンに関しても、8割程度はアーケード版と同じなので、ここで筆者は昔懐かしい“プレイしながら学習していく”手法で感覚を掴んでいくことに。その甲斐あって、何とか1面ボスのゴーレムに到達。動きがAC版より速いものの、先を見越して動くことで撃破に成功し、ようやく次のステージへ。

ステージ1のボス・ゴーレム。周囲をグルグルと周りながら腕を誘導し、開いた目にショットを撃ち込もう

 続いて縦スクロールとなるステージ2。隕石が漂う中、周囲から出現する敵を倒して進むのだが、破壊すると7方向に撃ち返し弾をまき散らす敵・ファイアーガイストの出現数が、AC版よりも少し多い。撃ち返し弾は敵の真下には飛んでこないので、そこで攻撃するのが基本だ。

 最後に待つボスは、巡洋艦テトラン。金属の質感などが、HDMIで接続したディスプレイにくっきり映っている様には、思わず感動してしまった。当時のぼやけた感じの画質も悪くないが、現代の技術でドットがくっきりハッキリと見える素晴らしさというのも、また良いものだ。

ファイアーガイストは、真下でショットのみで倒す。ミサイルまで撃ってしまうと他の場所のファイアーガイストに当たり、撃ち返し弾が発生して逃げ場がなくなってしまう。AC版では隕石にマルチプルを重ねてミサイルを撃つと当たり判定が消えたが、それはなくなっているようだ
金属の質感が美しい、2面ボスの巡洋艦テトラン。腕の周りを早めに回り込みながらコア部分を狙えば、サクッと撃破出来るだろう

 「沙羅曼蛇」の代名詞とも言える、プロミネンスが飛び交うステージ3。今見ても、その美しさは格別だ。ここはAC版なら、画面左下から少し前方に移動したところに自機を配置すれば、3/4までは安全に進める。しかし、アレンジ移植されている本作では当然うまくいかず、最初のプロミネンスにやられる始末。

 プロミネンスの出現と落下地点、さらには出現パターンもAC版と違うので、ここで再び何度もプレイして学習することに。基本は画面後ろ中央部分に陣取り、プロミネンスが吹き出すたびにその反対側に避難すれば問題ない。ボスのイントルーダは、ステージ1のゴーレムと同じく動きが速いが、輪の中に入り位置調整をうまく行なえば楽勝だ。

プロミネンスが美しいステージ3は、AC版とはパターンが違うので要注意。途中、炎の爆風がまとめて自機目がけて飛んでくるシーンでは、画面後ろ中央部分から徐々に前方へと移動していけばクリアできる
ステージ3のボスはイントルーダ。AC版と同じく誘導して中に入れば簡単だが、動きが速いので焦らないように。AC版と違い、目にミサイルを当てても胴体の当たり判定はなくならない

 以降、ステージ4とステージ5を順調にクリアし、ついに最終面のステージ6に突入! 前半は地上からの対空砲火が厄介だが、AC版と比べると攻撃が大人しめなので、比較的簡単に抜けられる。ここを越えると、中ボスのビックコアが出現。このとき自機を画面上部に移動させ、マルチプルを縦長に配置すれば簡単に倒すことができるのだ。

 ここをクリアすると、場面はついに最後の要塞内部へ。狭いので、壁に注意しながら敵を倒しつつ進むと、「グラディウス」シリーズお馴染みとなるモアイが登場。巨大なだけでなく、見た目とは裏腹に身軽に画面内を飛び回りながらイオンリングを吐き出してくるので、迫力満点だ。

 そこを抜ければ、ラスボスのゼロスフォースが画面下から現われて、画面上部にストップ。ゼロスフォースを支える4つの台を破壊すれば終わりなので、これまでの道のりを思い出し感慨にふけっていた瞬間、コアから放たれた電撃に当たり、まさかのゲームオーバーに。このときは、思わず「え゛っ」という変な声が出て、しばらく体の動きが止まるほどの衝撃を受けた。AC版では、ほぼお飾りのようなゼロスフォースだったので、まさか攻撃してくるとは思わず……。ラスボスにもアレンジが加えられることがあるということを思い知らされた。

ステージ4は、ミサイルが画面奥に飛ばないためハッチを壊すことができない。そこから出現する敵には要注意。上から隕石が降ってくるシーンでは、早めに画面左から1/4地点に移動しておけば避けやすい。ボスの要塞ヴァリスは、AC版のようにコアからブルーボールを撃ってくるものの、画面外へ行けば消えてくれるので簡単だ
ステージ5の小惑星地帯は、途中に出現するザブIIがAC版ではテンポ良く6回出現なのに対して、3回+2回+1回のタイミングで登場する。その後、ザコが前方から大量に現われて弾を撃ってくる場面は、AC版のように右上にいるのはNG。中央上部で待ち構えて倒しつつ、アドリブで避けていくのがベスト
中ボスのビックコアは、自機を画面上部に配置すれば敵の攻撃が当たらない。ステージ後半には、巨大なモアイが出現。身軽にジャンプしながらイオンリングを吐いてくるが、弾数は少ないので簡単に倒せる
ラスボスのゼロスフォースは、目から電撃を放ち攻撃してくる。AC版のつもりでのんびり対処していると、筆者のように痛い目を見ることに

 プレイして感じたのは、さまざまな部分がAC版からアレンジされているものの、「沙羅曼蛇」としての面白さはまったく変わらないというところ。当時であれば、移植度に関して目くじらを立てたかもしれないが、今は完全移植版が手軽に遊べる時代。難易度的にも程よくアレンジしてあるバージョンのほうが「これもまた『沙羅曼蛇』だね」と呟きながら攻略方法を見出していけるため、むしろ楽しく思われた。

 「沙羅曼蛇」が持つ根本的な面白さを、「沙羅曼蛇2」や「ライフフォース」とはまた違った形で堪能出来る本作。当時「沙羅曼蛇」に夢中になった人も、AC版で挫折した人も、ファミコン版しか遊んだことが無い人でも楽しめるだろう。