【特集】
【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「ファンタジーゾーン」
8ビットゲーム機におけるほぼ完璧な移植を実現
2020年3月12日 00:00
- 1988年10月14日発売
ゲームセンターにあるアーケードの機器が家庭用ゲーム機よりも大幅にハイスペックだった時代に、ゲームファンから強く求められたのが、“アーケードゲームから家庭用ゲーム機への移植”である。アーケードの醍醐味を自宅で味わえるというのは、当時のゲームファンの夢であり、見た目やプレイフィールにおける“移植度”が高いものほど心に残り、強い印象を残したものだ。
NECアベニューから1988年に発売された「ファンタジーゾーン」は、1986年より稼働がスタートしたセガの同名アーケードゲームのPCエンジンへの移植版で、サウンドこそ完全な移植とは言えないものの、主にグラフィックスや手触りに関する再現度の高さは、当時の8ビットゲーム機への同作の移植タイトルとしては最高ともいえる完成度を誇っていた。
「ファンタジーゾーン」はカラフルな色使いが目を惹くシューティングゲームで、主人公の「オパオパ」を操作して、左右にスクロールするステージ上に点在する10個の前線基地を全て壊し、最後に登場する個性的なボスを倒せばステージクリアというもの。前線基地や一部の敵、ボスなどを倒すと落とす「コイン」を取って、ショップで“パワーアップを購入する”という斬新なゲームシステムが導入され、グラフィックスやサウンドのクオリティの高さなどもあって、リリースから30年以上が経過した現在も大きな人気を誇っている。筆者も本作に魅せられた一人であり、インターネット黎明期に非公式の攻略サイトなどを作った思い出なんかもあったりする。
1986年にアーケード版をリリースしたセガは、前年に発売した家庭用ゲーム機「セガ マークIII」のキラータイトルとして、アーケード版から数ヶ月後にマークIII版「ファンタジーゾーン」を発売した。当時の技術やハードウェア性能により、グラフィックスの簡略化や一部のボスの差し替えなど、完全移植と呼ぶには至らない完成度ではあったものの、アーケード版稼働から間もない頃に同作が自宅でもプレイできたということに大きな価値があった。また翌1987年にサンソフトより発売されたファミコン版は、当時の開発技術を駆使した傑作で高く評価されたが、ハード性能による限界もあり、特にボス周りの簡易化された演出にそれが感じられた。
そして本題となるPCエンジン版は、1988年に発売となった。アーケード版の稼働から既に2年が経過していたこともあって、あまり注目されていない存在だったが、グラフィックスはアーケード版に最も近く、それまでの移植版ではボス登場時に単色のものに切り替わっていた背景が、このPCエンジン版ではアーケード版と同様に背景が切り替わらずにそのままボスが登場するところまで再現していたのだ。
アーケード版とほぼ同じ画面構成や前線基地が動くアニメーション、ボスの出現シーンなどの演出面に加えて、そのプレイフィールも忠実だったことで、アーケード版の多くの攻略法が通用したのも大きかった。画面と比較すると主人公のオパオパやボスのサイズ比率が違っていたり、背景が二重スクロールしていなかったり、オープニングのメッセージが表示されなかったりと、細かな違いはいくつかあったものの、少なくとも当時の筆者には自宅のテレビに映ったその画面は、アーケード版とほとんど変わりないように見えた。
PCエンジン miniでは当時のままのPCエンジン版「ファンタジーゾーン」を遊ぶことができる。アーケード版の完全移植を実現した「SEGA AGES」版がNintendo Switchで配信されているので、オリジナルと比較して遊んでみるのも面白いかもしれない。
©SEGA