【特集】
【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「グラディウス」
誰もが知ってるあの隠しコマンドも健在! 横スクロールSTGの金字塔
2020年3月16日 00:00
- 1991年11月15日 発売
「上上下下左右左右BA」と言われてすぐに頭に「コナミコマンド! 」と浮かぶ人は意外と多いのではないだろうか? このコマンドの元になったのがファミコン版「グラディウス」にて仕込まれた隠しコマンドで、ゲーム中にポーズをかけてからこのコマンドを入力することで、本来であれば地道にパワーカプセルを取得して行なう自機のパワーアップが一気に行なわれるという裏ワザだったのだ。
アーケードタイトルとして「グラディウス」が登場したのが1985年。当時のアーケードの横スクロールシューティングとしては独特のパワーアップのシステム、レーザーやバリアなど斬新な強化要素などもあり、革新的なタイトルとして話題となった。そして、翌年の1986年には早速、前述のファミコン版が移植されたのだ。
筆者はこの時、実はファミコン版を買っておらず、代わりに購入したのが8bitパソコンのMSX版だ。奇しくもファミコンと同時期にMSX版も発売されていたのだ。
当時の移植作品は、オリジナルをそのまま再現する事がハードウェアのスペック的な事情から困難であり、ファミコン版であれば、レーザーがあまり伸びない、オプションが2個しか付かないなどの制限があった。しかし、ファミコン版のグラフィカルなビジュアルは十分に「グラディウス」らしさが出ていて感動した記憶がある。また、MSX版は16色しか使えないという色数の制限や単色スプライトの仕様などもあり、見た目は非常に地味になってしまっていた。ところがレーザーに関してはファミコン版以上に伸びのある長さが再現されていたほか、MSX版オリジナルの骸骨ステージや、特定ポイントに触れることでエクストラステージにワープする仕掛けなどが用意されており、独創性の高さが魅力だった。
他機種の話ばかりになってしまったが、ゲーム機やパソコンなど多くの機種に移植された「グラディウス」がPCエンジンに移植されたのはアーケード版が登場してから6年後の1991年。PCエンジンの性能を考えると、正直もっと早くに出ていても不思議はないと思っていたので、この事実を知った時は意外だった。発売当時は未プレイだったので、今回のプレイで移植の完成度がどれほどのものか、チェックしてみたい。
今更説明は不要かもしれないが、「グラディウス」は横スクロールのシューティングゲームだ。敵の一団、または特定の色違いの敵を倒すことで、赤い色の「パワーカプセル」を落とす事があるので、これを取得することで、画面下部のパワーアップゲージが上がっていく。ゲージにはそれぞれにパワーアップの内容が書かれており、自分が使いたいパワーアップまでゲージを上げて使用することでパワーアップが行なわれる。
本作が当時衝撃だったのは、自機のメインショットのパワーアップが2種類存在し、ステージに応じて明確に使い分けが考えられていたことだ。正面に長く伸びて敵を貫通するレーザーと、正面と斜め上に向けて2方向に弾を発射するダブルが存在するが、両方同時に装備することはできず、どちらかを取るともう片方は解除される。正面から多くの敵が押し寄せるタイプのステージではレーザーが有効だが、障害物が多く、自機の動きが制限される中で、上の方向からの敵を倒す場合にはダブルの方が有利になる場合もある。
こうしたパワーアップの仕組みそのものは「グラディウス」が初ではないが、今時のシューティングでは当たり前の、複数の攻撃方法から選択できるという発想がこの時代くらいから始まったのかと考えるとなかなか感慨深い。
各ステージはそれぞれ地形などをテーマに名前が付けられており、バリエーション豊かなステージが多い。有名なところでは、ステージ3のモアイステージだろう。エリア内の至る所に浮かぶ大地にモアイの像が建てられており、モアイ像の口から輪っかの形の弾を放って攻撃してくる。モアイ像も輪っかの弾も撃破可能だが、モアイ以外の通常の砲台なども設置されており、敵の攻撃はかなり熾烈だ。
通常、ステージの進行は強制スクロールだが、ステージのラストにはスクロールが停止し、ボス戦の前座のようなエリアがある。例えばステージ1の火山ではスクロール停止後に、並んでそびえる2つの山から火山弾が噴き出すので、それを撃破したりかわしたりしながら、ボスの出現を待つ。ほとんどのステージのボスはビッグコアと呼ばれる巨大な戦艦が出現して対峙し、この戦艦の中央の弱点を攻撃して撃破することでステージクリアとなる。中央の弱点部は最初のうちの一定時間は無敵で、攻撃可能な状態になると見た目が変わるので、それまではいくら弾を打ち込んでも倒せない。
さて、今回紹介するPCエンジン版だが、その完成度はかなり高く、特定ステージでの上下スクロールを実現したり、オプションが4つ装着できたり、レーザーの長さもほぼアーケード版に近いなど、ビジュアルとシステムの再現度の高さに驚かされた。細部を見ればアーケード版との違いは多く見つかるかもしれないが、筆者の感触としてはアーケード版の移植としては完璧な移植として絶賛したい。
さらにはPCエンジン版オリジナルの「砂漠と骨のステージ」が追加されているというから驚きだ。今回のプレイでは、この砂漠と骨のステージまで到達したところまで進めてみたが、アーケード版ともファミコン版ともMSX版とも異なるステージに出会うのは胸がときめく。まるで宇宙を旅していたら未知の惑星に到着してしまったかのようなワクワク感だ。これは是非とも既存の各機種の移植版やアーケード版をプレイした人にとっても新鮮な気持ちでプレイできると思うので、是非試してみてほしい。
ところで最後に1つ試してみたい事がある。PCエンジン版であの“コナミコマンド”を入力するとどうなるか、だ。
ということで実際に試してみたが、見事にパワーアップできた。ちなみにパワーアップ後に同じステージでやられてしまうと、その後はコマンドが通らなくなる。当初はゲームオーバーになるまでは再度使えないのかと思っていたが、実はステージをクリアすることで"コナミコマンド利用権"も回復するので、興味のある人は試してみてほしい。
「グラディウス」を未見の人は、是非1度シューティングゲームの金字塔を堪能してみてほしい。また、昔ファミコンやアーケード版、MSX版などを遊んだことがある人にとっても、PCエンジン版の完成度の高さと、アーケード版稼動から6年の⽉⽇を経て追加されたPCエンジンのみのステージは必見だ。
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