【特集】
【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「源平討魔伝」
HuCARD1枚に収まった、平家の復讐絵巻。圧巻のグラフィックスや音声に注目
2020年3月17日 00:00
- 1990年3月16日 発売
「源平討魔伝」は、ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が1986年にリリースしたアーケード向けのアクションゲームだ。源氏と平氏の合戦をモチーフに、魔王となった源頼朝が平氏を滅ぼし、三途の川の安駄婆(あんだばあ)によって地獄より蘇った平景清(たいらのかげきよ)が、頼朝を討伐するために鎌倉を目指すというストーリーが展開していく。
アーケードではあまり見られなかった純和風の画面構成や耳に残るサウンドと音声、そして画面の半分近くもある巨大なキャラクターが動くステージなどが目を惹き、当時アーケードゲームプレーヤーの心に強い印象を残したタイトルの一つである。学生時代の筆者もこの頃の放課後はゲームセンターで魔王頼朝の討伐に心を燃やし、ゴールとなる鎌倉までのルート開拓に勤しんだものだ。
このPCエンジン版「源平討魔伝」が発売されたのは、その4年後の1990年のこと。アーケード版の稼働時期から約4年、PCエンジンの発売からも約3年が経過していたが、当初から定評のあったナムコのPCエンジンアーケード移植タイトルの1本に恥じない完成度を誇り、ファンを大いに喜ばせた。
地獄から蘇った景清は、平氏が滅びた壇ノ浦のある「長門」(山口県下関市)から、複数のルートに存在する46(+1)ものステージを通り、頼朝が待ち構える「鎌倉」(神奈川県鎌倉市)までを旅していく。
ゲームのステージには、並み居る敵を攻撃とジャンプで退けながら進む「横モード」、大きく表示された景清が「弁慶」や「義経」などの強敵とのチャンバラを繰り広げる「BIGモード」、迷路のようなトップビューのステージを探索して出口の鳥居を探す「平面モード」の3つがあり、プレーヤーを退屈させない仕様だ。それぞれにはゴール地点となる鳥居があり、そこに入ることで次のステージへと行けるようになっている。横モードと平面モードには複数の鳥居が存在するところもあり、先のステージ構成によって難易度が大きく変わっていくので、何度もプレイして自分なりの攻略ルート開拓をすることも楽しみの一つであった。
ステージのモードによってルールが大きく異なり、攻略法を知らないとあっという間にやられてしまう“初見殺し”なポイントもあるため、難易度が高いゲームという印象を持っている人も少なくないようだが、モードごとの基本ルールの把握と、攻略ルートの開拓ができれば、比較的簡単に頼朝のもとまでたどり着くことができるバランスとなっている。慣れてしまえば比較的長時間遊べるので、アーケードゲームとしては少々都合の悪い内容とも言えるが、プレーヤーにとっては嬉しいものだった。
家庭用ゲームとして初めて発売されたファミコン版「源平討魔伝」はなんと、デジタルボードゲームというまったく別の内容となってしまったため、アーケード版の移植を期待していた筆者を落胆させたが、このPCエンジン版は画面構成が若干異なるものの、移植はほぼ完璧だったことに歓喜すると同時に、大容量のCD-ROM2ではなく、HuCARD(4Mビットを採用)1枚で完結していたことに大いに驚かされた。携帯型の「PCエンジンGT」を使えば、いつでもどこでも「源平討魔伝」がプレイできたという事実は、ちょっとしたカルチャーショックでもあった。
容量の都合でカットされたのは一部の音声のみであり、47ステージは全てアーケード版とほとんど変わらずに収録されている。横モードのジャンプ時はボタンを連打することで高く遠くへジャンプできるといった攻略法もそのまま通用するが、BIGモードに登場する「義経」や「弁慶」を簡単に倒す攻略法が通じなくなっているなど、いくつかの変更点も存在する。
また「源平討魔伝」といえば、クオリティの高いサウンドやゲームセンターに響き渡る合成音声が大きな魅力だったわけだが、このPCエンジン版も本体の音源のみで再生しているにも関わらず、かなりがんばっていた。何より迫力なのは音声で、前述の通り容量の関係でいくつか削除されているものの、「殺してしんぜよう」(義経)、「これで勝ったと思うなよ」(弁慶)、「ひゃっひゃっひゃ」(安駄婆)などといったキャラクターを象徴するセリフは健在で、“よくしゃべるゲーム(当時比)”の肩書きはこのPCエンジン版でも十分通用すると言えるだろう。
その後、プレイステーションの「ナムコミュージアムVOL.4」やWiiの「バーチャルコンソール」などでアーケード版が完全移植された本作であるが、このPCエンジン miniでは、「カンタンセーブ機能」を使えば、攻略ルートの開拓や練習もしやすくなるはず。ぜひ鎌倉までたどり着いて、景清の最期を見届けてほしい。
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