【特集】

【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「忍者龍剣伝」

ゲームオーバーの連続! “途中で止めたら俺の負けだ”

1992年1月24日 発売

 昨今のゲームと比べてファミリーコンピューターなどのレトロゲームの難しさは、もはやクリアをさせる気がないような常軌を逸しているものが多かった。学校や社会に出る前に、世の中にある“理不尽”というものをゲームに叩き込まれたものだ。

 数多いレトロゲームの中で、筆者が幼少期に必死になってプレイしていた思い入れ深いタイトルが、ファミコンでテクモ(現コーエーテクモゲームス)から発売された「忍者龍剣伝」だ。

 同社の「DEAD OR ALIVE」シリーズ、「NINJA GAIDEN」シリーズでお馴染みのリュウ・ハヤブサが活躍する横スクロールアクションゲーム。本作の特徴を言うならば「超難しい」の一言に尽きる。

 そんな超難しい「忍者龍剣伝」にはPCエンジン版もある。その存在は知っていたものの、これまでプレイしたことが無かったのだが、「PCエンジン mini」に収録される事を知り、これは絶対プレイせねばと半ば使命感に近い気持ちで「忍者龍剣伝」のレビューを申し出た。

 本作は、主人公のリュウ・ハヤブサを操り、刀や忍術、壁張り付きなどの忍者アクションを駆使して進む、ステージクリア型のアクションゲームである。

 ステージ構成はファミコン版と変わらないが、PCエンジン版ではステージやムービーシーンのグラフィックスが一新されており映像が格段に綺麗になっている。さらに、BGMもほぼ全曲差し替えられており、まるで別のゲームのような印象を受けた。

 ゲームバランスも調整されており、敵から受けるダメージも若干マイルドになっていて全体的に遊びやすくなっている。

PCエンジンのマシンパワーで、ファミコン版から大きく進化
手裏剣や忍術など、忍者ならではの多彩なアクションが用意されている

 遊びやすく調整はされているものの、地獄のような難しさはPCエンジン版でも健在。本作の一体何がそこまで難易度を底上げしているのかというと、まず1つはダメージを受けた後の無敵時間の短さだ。普通のアクションゲームならば敵の攻撃にハメられないよう、ダメージを受けた直後には復帰するための無敵時間が設けられているのが一般的だが、本作の無敵時間はほぼ一瞬しかないため、付きまとってくる敵の攻撃を延々食らい続けてしまうのだ。

 そしてもう1つが、計算し尽くされた敵の配置の嫌らしさだ。足場から足場へジャンプで飛び移って進む場面では、小さな足場に嫌がらせのごとく敵が配置されている。敵に触れるとダメージを受けるだけではなくノックバックしてしまうという仕様上、小さい足場で敵に触れてしまうと、そのまま落下して1ミスとなってしまうのだ。これこそ本作が激ムズと言われる要因である。

無敵時間がほぼ無いので、複数の敵に囲まれたら身動きが一切取れないままライフが0なんてことも
足場を陣取る敵と、背後から迫る敵。一発でも攻撃をもらえば奈落に真っ逆さま。こんな場面がこれでもかと用意されている

 過去一番、プレイしていて文句が出たゲームではあるのだが、勘違いしてもらいたくないのは、本作は間違っても駄作ではない。むしろ筆者は、文句が止まらないほどプレーヤーを熱くさせるこのゲームを、極上のアクションゲームだと思っている。

 敵の配置や行動の1つ1つ、その全てがプレーヤーの嫌がるポイントを的確に突いてくる。開発側からプレーヤーへの挑戦とも取れるゲームバランスに、止め時を見失うほど没頭させられてしまうのだ。

 プレイ前は、ある程度触ったら原稿に取り掛かろうと思っていたのだが、ゲームオーバーになればなるほど熱が入ってしまいコンティニューが止まらない。“途中で止めたら俺の負けだ”という訳の分からないスイッチが入ってしまい、想像よりもかなりの時間を費やしてエンディングまでプレイしてしまった。

最後のボスの連戦だけで数時間費やし、なんとか撃破

 PCエンジン版の「忍者龍剣伝」は現在配信などもされておらず、プレイする機会がなかったのだが、今回「PCエンジン mini」に収録されてくれたおかげで初めて触れることができた。

 収録タイトルの中では1、2を争うほどの高難度と思われる本作。腕に覚えのあるゲーマーにはこの理不尽さを味わってもらいたい。