【特集】
【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「ワルキューレの伝説」
アーケードから異色の移植! 冨士宏氏デザインのワルキューレがかわいいアクション
2020年3月15日 00:00
- 1990年8月9日 発売
1986年にファミコン向けに発売された「ワルキューレの冒険 時の鍵伝説」はかなり難易度の高いアクションRPGだった。アクション要素がかなりシビアで、謎もかなり難解だった記憶が今でも残っている。一方で当時ナムコに所属していた冨士宏氏がデザインを手がけたワルキューレやサンドラといった個性的なキャラクターたちは大人気で、筆者が冨士宏氏を知り、作品のファンになったのはちょうどこの頃だ。
そしてファミコン版が発売されから3年後の1989年、続編としてアーケード版「ワルキューレの伝説」がリリースされた。ファミコン版タイトルの続編がアーケード版でリリースされるというのはあまり聞かない話だが、アーケード版「ワルキューレの伝説」は当時大人気のタイトルとなった。そして今回紹介するPCエンジン版「ワルキューレの伝説」は、アーケード版の登場から1年後の1990年にリリースされた移植タイトルとなる。
これまでのPCエンジンのアーケード移植タイトルがどれも比較的アーケード版の再現性において高評価の物が多かったのに対して、本作はアーケード版と異なる点が多くみられる。移植が困難だった理由の1つは、本作のアーケード基板が「SYSTEM II」だからだろう。このSYSTEM IIでは基板自体のハードウェア機能として、回転・拡大縮小機能を搭載しており、この機能を使う事で実現している演出が多く、それをPCエンジンで再現するのが困難だったからだと思われる。
同基板向けのタイトルでは他にも「オーダイン」や「ドラゴンセイバー」などもPCエンジンに移植されているが、いずれも基板が備えるこれら機能を省略するなどしてリリースされている。
グラフィックス周りもかなり簡素になり、システム面でも多くの変更点があるが、その一方で、単体のアクションゲームとして見た場合、本作の出来はかなりいい。ワルキューレが飛び跳ねたり、動き回るアクションは軽やかだし、ショットの連射性や魔法の効果などもストレスを感じさせない。とにかくゲーム全体のバランスがよく、アーケードの頃はクリアが難しかったステージなども難易度がほどよく調整され、楽にクリアできるように仕上がっているのだ。
見た目の印象は多少変わるが、アクションゲームとしては十分楽しめる作りになっており、正にゲームの骨子を忠実に移植したタイトルといえる。
多彩な魔法と数々の敵の仕掛けが面白い!
物語としては、昔、神が人間に与えた不思議な能力を持つ「黄金の種」が悪の化身「カムーズ」に奪われてしまい、世界がどんどん荒れ果てている。世界の平和を取り戻すために天上界の女神がワルキューレにカムーズ討伐を命令するというもの。
基本的にはカーソルでワルキューレを操作、Iボタンでジャンプし、IIボタンで攻撃。攻撃は剣を振ると先端からエネルギー弾が飛んでいくので、これで敵を攻撃していく。さらに、物語を進めると魔法を取得できるようになる。魔法はこのIIボタン長押しで発動することができる。画面全体を攻撃するサイクロンの術や、自身を巨大化させるBIGの術などアクションゲームらしく強力で見た目も派手な魔法が用意されているが、MPを消費するので、濫用は避けたいところだ。
アーケードのアクションゲームらしく、移動中は北欧神話をモチーフにしたユニークな敵がワルキューレの行く手を阻むので、これらを攻撃して蹴散らしたり、かわして先に進めていく。また、道中は空中をジャンプで飛んで足場を渡りながら進む場面もあり、落下してしまうとHPにダメージを受けてしまうので落下はなるべく避けたいところ。ステージラストはボスが待ち構えているので、これを撃破することで、デモ画像が表示され、ストーリーが進行していく。
ワルキューレの操作性自体は悪くないが、敵の攻撃や妨害はなかなかハードで無傷で乗り切るのはなかなかシビアだ。敵の出現ポイント等は同じなので、何度かトライして覚えながら進めるのがいいだろう。
なお、最後に本作にはPCエンジン版ならではのオリジナル要素として、最終ステージに到達すると、ライバルキャラクター「ブラックワルキューレ」が登場するらしいのだ。今回、筆者の腕ではそこまでたどり着けなかったため、画像は用意していないが、アーケード版にない要素を確かめるべく、是非挑戦してみてほしい。
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