東京ゲームショウ2019のコナミブースでは、2020年3月19日発売予定の「PCエンジン mini」の実機がプレイアブル展示されている。今回の展示では発表済みの全58タイトルが全てプレイできるようになっており、ほぼ製品版に近い状態に仕上がっていると感じた。
会場では北米向けの「ターボグラフィックス-16 mini」や欧州向けの「PCエンジン コアグラフィックス mini」、そして国内版となる「PCエンジン mini」の実機及び、オリジナルのハードも並べて展示されており、サイズが比較できるようになっている。その他にもオプションとしてマルチタップや連射機能が搭載されたターボパッドも展示されていた。
改めてオリジナルのPCエンジンとPCエンジン miniを比較すると、元々小さいPCエンジンだが、Huカードのロック機構などが省略されている事もあり、さらに小型化されているのが分かる。
今回はこの試遊機を使って多くのPCエンジン mini収録タイトルをプレイしてみたので、その様子をレポートする。
北米で発売する「ターボグラフィックス-16 mini」 欧州向けの「PCエンジン コアグラフィックス mini」 オプションとして専用のマルチタップとACアダプタ、連射機能付きターボパッドを用意 実際のPCエンジンとPCエンジン miniとのサイズ比較が行なえる 全体的には再現性やプレイ感については実機と変わらないレスポンスを体感できた。そして今回、改めて色々なタイトルをプレイしてみて実感したのは、やはりCD-ROM2タイトルの音の良さだ。
試遊台では最初に「天外魔境II 卍MARU」を試したが、オープニングムービーやゲーム開始直後のムービー演出におけるナレーションなどの音声が非常にクリアで心地よい。他にも「ときめきメモリアル」、「超兄貴」、「イースI・II」などを確認したが、どれも久しぶりにプレイしたにも関わらず、当時の音質の良さを再認識させられた。ADPCMによるキャラクター音声のCD並みの音質の良さは、今聴いても色褪せない。
さらにもう1つ、PCエンジン miniならではの非常に重要なメリットがある。それはCDのデータを全てメモリ内に保存しているため、データの読み込み時間がほとんど発生しない事だ。これにより、ゲームとしてはサクサクと動作するようになっており、この点については実機以上のレスポンスが味わえる。CD-ROM2タイトルの収録は今回のPCエンジン miniの一番のポイントと言えるだろう。
CD-ROM2タイトルを選択すると起動時のシステム画面が表示される。本来であればここでRUNボタンを押す事でCDの読み込みが開始されるが、PCエンジン miniでは自動でローディングが行なわれる。しかも実際のCDを読みこむわけではないため、あっという間にローディングが終わるのは感動ものだ 「天外魔境II 卍MARU」のオープニングムービー。こんなアニメーションがゲーム機で流れるなんて、と初めて見た時はかなり衝撃を受けた ゲームとしてはオーソドックスな見下ろし視点のコマンド選択式RPGだ キャラクター音声を最大限に活用したと言える「ときめきメモリアル」。オープニングはBGMではなくちゃんと歌のついた主題歌が流れたのも衝撃的だった。個性的な女の子たちが多く、今でも当時プレイしていた人が集まると、「ときメモ」の誰が“推し”だったかで盛り上がるほどだ 「イースI・II」のオープニングムービー。出演する声優の紹介が入るのが斬新 色々な意味で問題作だった「超兄貴」もPCエンジンの代表作の1本だろう。試遊台ではプレイしている人も多く見られた また、HDMI出力の恩恵もあり、グラフィックスのディティールがかなり細かく表示されるので、クリアな映像でPCエンジンのゲームが楽しめる。
とはいえ、当時の環境では出力される解像度がかなり低い事もあり、逆にドットの粗さが目立つ場合もある。ドット絵メインのゲームであればあまり問題はないのだが、特にムービーなどの再生時にはドットの粗さが気になる場面も見られた。
これについては、ソフト自体が昔のテレビでの出力をを想定してグラフィックスを見せるように調整されているためで、この辺りが気になる場合は、設定項目のスクリーン設定にあるCRTフィルターを有効にすることで、当時の雰囲気が出せるようになる。ビジュアル面で「当時こんなだったかなぁ? 」と感じる人は是非試してみてほしい。
なお、スクリーン設定では、他にも携帯型PCエンジン、PCエンジンGTの画面設定も選択できる。実際に選択してみると、画面のサイズがかなり小さく、見た目もかなり粗くなるので、ゲームプレイには向かないが、当時の雰囲気を楽しむことができる遊び心のある設定だ。
CRTフィルターの有無で映像の見え方がかなり変わってくる。こちらは「天外魔境II 卍MARU」のオープニングムービーの1カットをCRTフィルターなしで表示したところ。絵のラインのドットが割とはっきり見えている こちらはCRTフィルターを有効にしたところ。絵のラインのドットがぼかされて、ラインがスムーズに見える PCエンジンGTのスクリーン設定で「イースI・II」をプレイしてみたところ。画面サイズがかなり小さくなる上に、当時の低解像度の液晶ディスプレイのドットの粗さまで再現されており、画面はかなり見えにくくなるが、こういうお遊びは歓迎したいところだ メインの設定画面では他にも壁紙の変更や、メインフレームの変更が行なえる。メインフレームとはソフト選択画面で上部に表示されるPCエンジンの本体を模したフレーム部分で、ここを通常のPCエンジンかPCエンジン コアグラフィックスか選択できる。
メインフレームを変えても見た目が変わるだけだが、ソフトを選択するとゲーム開始前にHuカードが差し込まれるという演出があるため、フレームの存在意義はある。こういう細かいこだわりは歓迎したいところ。
ゲームプレイ中のメニュー画面はSELECTボタンとRUNボタンの同時押しを使用することで開く。実機ではソフトウェアリセットを行なう操作をうまく割り当てている。
発売まではまだ半年近くあるにも関わらず、これ以上の調整は不要では? と思えるほど完成された状態を見る事ができた。来年の発売が待ち遠しい。その他に試したソフトについては以下画像を参照してほしい。
メインフレームを変更する事で、ソフト選択画面の外側に表示されるハードウェアの見た目が変わる ソフトを選択すると、Huカードを差し込むアニメーションが表示される演出を用意する 画面下部のアイコンを押す事でPCエンジンからターボグラフィックス-16に切り替えることができる PCエンジンではナムコのアーケードタイトルも多く発売された。最初に登場したのは古典的名作「ギャラガ」の続編、「ギャラガ'88」。グラフィックスが大幅にアレンジされたほか、ゲーム内でのギミックも色々増えており、古き良き名作と言える1本だ PCエンジンのナムコタイトルはいずれも移植の再現性が高く、評価は高めのタイトルが多かった。「スプラッターハウス」もビジュアル的にはアーケード版と遜色のない出来 個人的にBGMが大好きだったナムコの「ドラゴンスピリッツ」。アーケード版のスタート直後のデモが省略されているのは残念だったが、ゲーム自体の出来は内容、音ともにすばらしかった ナムコのアーケード移植タイトルとしては後発の「ワルキューレの伝説」。この辺りになると元のアーケード版のスペックが高かった事もあり、移植の出来はあまりよくない印象を受ける。とは言え、他のハードではそもそも移植もされなかった事を考えると大奮闘の出来栄えだ コナミの世界的ヒットシリーズ「悪魔城ドラキュラ」シリーズのPCエンジン向けタイトル「悪魔城ドラキュラX 血の輪廻」。アニメーションによるデモシーンやCD音源によるBGMが導入されており、他機種でリリースされたドラキュラシリーズとは違った趣がある コナミの名作シューティング「グラディウス」。レーザーやオプションが簡略化されたファミコン版と比べるとかなりアーケード版に肉薄した作り PCエンジンにはセガのアーケード版タイトルが移植され、NECアベニューがリリースしていた。「ファンタジーゾーン」もアーケード版と比べて移植の出来がとてもよい スーパーCD-ROM2でリリースされたコンパイル開発のシューティング「スプリガン mark2」。前作「精霊戦士スプリガン」が縦スクロールのシューティングだったのに対して、こちらは横スクロールのシューティング。スーパーCD-ROM2の特性を活かした音声によるナレーションや登場人物たちの会話が面白い ハドソンの代表作とも言える桃太郎電鉄シリーズ「スーパー桃太郎電鉄II」。シンプルなルールなので覚えやすいし、運の要素も強いので初心者でもとっつきやすい ターボグラフィックス-16用のタイトルが遊べるのもPCエンジン miniの魅力の1つ。こちらはターボグラフィックス-16用CD-ROM2の起動画面だ。筆者はターボグラフィックス-16は所有していなかったため、初めてこの画面を見る事ができた ということでCD-ROM2の「イースI・II」の海外版「Ys Book I & II」もプレイした。海外版のオープニングムービーでは、声優の紹介ではなく、キャラクターの名前が紹介されるのが面白い。なお、セリフは全て英語収録だ。 PCエンジンのオリジナルシューティング「Blazing Lazers」。日本では「ガンヘッド」としてリリースされた。ゲーム性やアイテム取得時の音声などが全てそのままなので、海外版でも気にせず楽しめる。一部にコアなファンもいるタイトルなので、「ガンヘッド」が収録されてない! と嘆かないでほしい。ここにありますよ! 高橋名人こと、高橋利幸氏がモデルの名作アクション「高橋名人の冒険島」シリーズのPCエンジン版「新高橋名人の冒険島」は「NEW ADVENTURE ISLAND」として収録されている。難易度の高さは相変わらずだ PCエンジンの移植タイトルとして人気の高かった「R-TYPE」は海外版が収録されている。日本版では前半と後半で別タイトルとしてリリースされていたが、海外版は全て1本に収録されており、安心して遊ぶことができる セガの名作擬似3Dシューティング「スペースハリアー」は海外版「SPACE HARRIER」が収録されている。動きもスムーズで完成度は高い PCエンジン初期タイトルでインパクトの強かった「カトちゃんケンちゃん」は残念ながら収録されなかった。肖像権の問題かお下品な内容が原因かは不明だが、代わりにゲームとしては同じ内容の海外版「J.J. & JEFF」が収録された ©KONAMI Digital Entertainment