開発/発売元 自転車創業
X68000向けとしては最後の市販ゲームソフトとなったサウンドノベル「あの、素晴らしい をもう一度」のWindows向け体験版。リファインバージョンということでX68版をベースに、シナリオスクリプトの再調整、BGMのMP3化、ビジュアルのブラッシュアップなどが施されている。製品版ではさらにオープニングおよびエンディングのムービーも追加されるということだが、体験版には収録されてない。発売日は3月22日で、価格は2,800円を予定している。
「あの、素晴らしい をもう一度」は、モニタ上に表示されるテキストをひたすら読んで物語を進めていくサウンドノベルと呼ばれるゲーム。テキストを主体に、イメージをふくらませるための静止画とサウンドエフェクトを効果的に用いた、小説とアドベンチャーゲームを融合させたようなエンターテインメントである。
ゲームは、異世界のファンタジーワールドを舞台にしており、記憶に障害を抱えた2人の男女が物語の中心となっている。物語は、堕天使との最終決戦に敗れて遙か彼方に吹き飛ばされ、やがて昏睡から目覚め「ここはどこだ?」というシチュエーションからスタートする。最終目的は離ればなれになったパーティーと再会し、再度堕天使を倒すことだ。
物語を進めていくとやがて明らかになるが、男は堕天使に吹き飛ばされる以前の記憶をすべて忘れた記憶喪失にかかっており、女は吹き飛ばされたあとの記憶をストックできない前向性健忘症にかかっている。もとよりプレーヤー(男)は情報量ゼロなので、彼女の話を信じるしかないが、彼女も彼女で次の朝目が覚めると、記憶が吹き飛ばされた直後にリセットされ、肝心の吹き飛ばされる以前の話がぜんぜんつかめない。
この記憶障害によるコミュニケーションの齟齬と、主人公の過去を知る人たちの意味深なセリフ回しがなかなかうまくて、ぐいぐい読ませてくれる。主人公は武勇に優れた勇者、パートナーは高位魔法を操る魔法使い、そして舞台は見果てぬ大地が広がるファンタジー世界であるはずだが、プレーヤーが体験するのは純粋なサスペンスミステリーだ。このギャップが凄く新鮮でおもしろい。X68kユーザーでありながら、リアルタイムでプレイしていなかったことを申し訳なく思うほどだ。
キャラクタは静止画処理ながら、パターンが豊富に用意され、実に良く動く。背景画は絵コンテをスキャニングしたような、ちょっと異質な雰囲気が特徴的でこれも好印象。MP3で鳴るサウンドも丁寧な音選びで名曲揃いだ。
(C) 自転車創業
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