インタビュー

「セガ 3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE」インタビュー

「エイリアンシンドローム」-おまけのぶんでもう1本……のつもりが60フレーム動作ギリギリの難関タイトルに

奥成氏:これでメインの収録タイトルが7本で「アーカイブス2」と同数となりました。ただ、これまでのアーカイブスにはメイン以外にも“おまけ”のタイトルを収録してきましたよね。

 今までだと「アーカイブス」にはセガ・マークIII版「スペースハリアー3D」と「アウトラン3D」が。「アーカイブス2」ではセガ・マークIII版「ファンタジーゾーンII」と「メイズウォーカー」があり、初代とのセーブデータ連動で解放されるタイトルとしてセガ・マークIII版「ファンタジーゾーン」も収録してきたのですが……。

 今回はそのおまけに思うところがあって。これはアンケート結果から思ったことのひとつでもあるのですが、それら“おまけ”の反響がすごく低かったんですよ。

――“おまけタイトルへの反響”……ですか。それはどういうものでしょう?

奥成氏:「アーカイブス2」購入者アンケートのなかに「面白かったゲームを選んでください」とか「購入の動機になったゲームを教えてください」っていうのがあったんですけど、そこには全く“おまけ”は入らなかったんですよね。

――あーなるほど、確かに真っ先にアンケートに書くタイトルにはならなそうですけど……。あくまで“おまけ”な存在ですから。

奥成氏:まぁしょうがないというか、当然の結果とも思うんですけどね。ただ、おまけタイトルは“おまけだから軽く作ればいい”っていうハードルを結構越えていて。3D立体視をつけたりも大変で、「これはおまけじゃないだろう!?」っていう労力をかけていたんですよ。

 そこで今回は「おまけへの力のぶんもメインを充実させないか?」という考えに至ったんです。

 というわけで、ここまでに紹介したメイン収録タイトル7本に……さらに加わったのが「エイリアンシンドローム」です!

【エイリアンシンドローム】

 1987年にアーケードタイトルとしてリリースされたホラーテイストのアクションシューティングゲーム。宇宙冒険家のリッキーと宇宙戦闘員マリーが迷路となった宇宙船や宇宙基地を舞台に、囚われた16人の仲間を救出しながらエイリアンに立ち向かっていく。見下ろし型画面での探索タイプなゲームとなっていて、2人協力プレイも可能。

――なるほど、そういう経緯からついに入ってきたのが「エイリアンシンドローム」なんですね。次があれば入れたいと以前のインタビューでもおっしゃられてましたよね

下村氏:前からやりたかったタイトルですね。麻生さんにお会いする度に「エイリアンシンドロームやってよー」ってお話もされていたので。

奥成氏:麻生さんは「エイリアンシンドローム」を企画し開発された生みの親と言える人ですね。今はセガから独立されて、取引相手としておつきあいさせて頂いているんです。

下村氏:そうなんです。その麻生さんからのお話もありましたし、いつかはやりたいなと思っていて。今回は先ほどの経緯から、ここぞとばかりにエムツーさんにお願いしました。

奥成氏:エムツーさんも以前からテストで1面だけ作ってみたりしていましたからね。

堀井氏:やってました。その手応えも良かったんですよ。

下村氏:それに、ああいうタイプのゲームってあまりないですしね。今回のラインナップにいい感じに加えられるんじゃないかなと思ったんです。

――ジャンルで考えても見下ろし型アクションが入ると広がりますね。

奥成氏:アクションシューティングという意味では「ガンスターヒーローズ」も近いんですけど、画面が見下ろし型で、プレイも自由移動の探索型なゲームですから。

 今回は人気のレースゲームがまずあり、横スクロールシューティングが入って。そこに見下ろし自由探索という「エイリアンシンドローム」が並ぶのはいい感じだなと。

 あと、「バーチャレーシング」が2位でしたし「バーチャファイター」も9位でしたが、さすがに「ターボアウトラン」と「バーチャレーシング」はレースジャンル被りなのがありますし、それらを収録できるほどの開発期間はなかったというのが正直なところです。

 そこで、「バーチャレーシング」ほどは大変ではなく、これまでのおまけの労力分で作れるぐらいのタイトルを……というところから着目したのが「エイリアンシンドローム」だったんですね。エムツーさんが事前に1面だけ作っていたので、残りのステージを作っていけばなんとかなるんじゃないか、となって。

堀井氏:でもそれは、PC上で作って3D立体視もつけてあったというものだったんです。そこから3DSで動くものにしていくのは……実は全然別の話になるんですよ(苦笑)。

2人での協力プレイが可能な「エイリアンシンドローム」。3DSのローカルプレイで協力プレイに対応することになるが、本作の移植難易度が跳ね上がってしまったそうだ

奥成氏:我々の想定外に、いつまで経っても「エイリアンシンドローム」は出来上がらなくて……。最終的にはかなり難産なタイトルになっちゃいましたね。これはもう「エイリアンシンドローム」というゲームを舐めていた……という話なんですけど、ローカルプレイがあるぶん処理の負荷がかかるんですよ。

 「ベアナックルII」のときに「60フレームで『ベアナックルII』のローカルプレイを動かすのは最初無理だったんだけど、がんばって実現させました!」という話をこのインタビューでしているのを横で聞いていたはずなのに。今回はなぜかそのローカルプレイのところが全然頭になくて(笑)。

堀井氏:奥成さん気にしてなかったですね(笑)。

奥成氏:そんなわけで、いつまで経っても3DSでやると処理落ちしちゃう。

堀井氏:New3DSだと大丈夫なんですよ! New3DSなら全然大丈夫。

奥成氏:New3DSはノーマル3DSの何倍もの性能がありますからね。でも、ノーマル3DSで動いてこそなので。かなりの苦労がありましたが、ギリギリでなんとかノーマル3DSでも60フレームで動くものになんとかたどり着きました。

――具体的にはローカルプレイのあるゲームだとどのようなところが厳しくなるのでしょう?

堀井氏:そうですね、解りやすく言うと、3DSには2個のCPUコアがあるうちの1部をある程度好きな用途に使っていいよという仕組みがあって。普段はそこを高速化のために使っているんですけど、そこがローカルプレイのためにごっそりと持っていかれてしまうんですよ。

――高速化のあてにしている余力の部分がなくなっちゃうんですね

堀井氏:そうです。

奥成氏:なので動くには動くんだけど処理落ちするという時期がかなり長くあって。マスターアップの3日ぐらい前についに全ての処理落ちが取れました。

堀井氏:本当にギリギリまでやりました。今回ばかりは発売日やばいかも……とうちのディレクターの松岡も言っていて。「そりゃあ、間に合わすつもりでやってますけどね!」って泣きそうな顔で話してましたよ(苦笑)。

下村氏:松岡さんはずっと、「これは本当にしんどいですよ……!」っておっしゃっていたんですけど。今までもなんだかんだとありつつも、スケジュールは守って頂いてましたし、難しいだろうけどやってくれるのではと確信していました。

――「それでも、松岡さんなら……!松岡さんならきっと……!」みたいな感じになってますね(笑)。

一同:(笑)。

堀井氏:奥成さんはよくご存じだと思うんですけど、松岡が参加するまでうちの会社はスケジュールを守れなかった。その代わりに天井まで仕様を突き抜けて作っていましたけども。でも、松岡が来てくれてからは、松岡がギリギリまで考えて仕様は突き抜けつつも時間内に納まるようになりました。時間と仕様のバランスを取ってくれています。

――まさにディレクターの力、優秀な現場監督という感じですね。

奥成氏:そうそう。それでいて何でもできる人です。

――「エイリアンシンドローム」にもオリジナルな追加要素はあるのでしょうか?

奥成氏:Xボタンを押せばマップをいつでも呼び出すことができるようになっています。そのほかアーケード基板にもない、残機を10機にできるようにしました。それに加えてオリジナル版以上に難易度を下げたり、制限時間を延ばすことができるということと、日本版と海外版が選べるようになっているので、これを選んでもらえば難易度は下げられますね。

 海外版は1面と2面のボスが入れ替わっていることのほか、マップにいる16人の仲間のうち、10人を助ければボス戦に行けるんですよ。その分タイム設定も若干短くなっているんですが。もちろん面セレクトもつけていますので、ゲームオーバーになったステージからいきなり再開することができます。

 このゲームも当時ゲームセンターで難しくて、2面とかで終わっちゃった、という思い出のある人も多いと思いますので、これで最後までプレイしていただけるのではないかと。このゲームも家庭用ハードはセガ・マークIIIのほか、ファミコンとゲームギアにも移植されたんですが、あとはリメイク版を除くと国内ではX68000が最後の移植だったので、久しぶりにプレイしてもらえるのかなと。

こちらでも難易度や時間制限など、より手軽に遊べるようにする設定が揃っている。また、海外版は仕様が緩くなっているので、さらに手軽になる

【ディレクター松岡毅氏よりコメント頂きました】

エムツー ディレクター松岡毅氏

本作で主に担当された箇所:ディレクション

松岡氏:おかげさまで3作目となりました。応援ありがとうございます。このシリーズは、コンセプトがふたつあります。ひとつはもちろん「立体」です。そしてもうひとつが「多くの人にクリアして欲しい」というコンセプトです。

 難易度や時間制限、プレーヤー数もかなり多くできますし、タイトルによっては「ヘルパーモード」や「KIDSモード」を搭載しています。これらはすべて「みんながクリアできればいいな」と思って入れたものですので、ひとりでも多くの人が最後までプレイして、エンディングのカタルシスを味わってくだされば、我々はもう言うことはありません。